3歳くらいになると、言葉の使い方がだいぶ上手になり、理解力や想像力が高まってくるといわれています。
絵本の登場人物に自分を重ねて感情移入したり、描かれているシチュエーションを現実のことのように想像したりと、絵本をより豊かに楽しめるようになってくるのもこの時期から。
そこで今回は、3歳児の読み聞かせにおすすめしたい、ファンタジックな楽しい絵本を5冊厳選しました。
いずれも絵の描写がとても魅力的なので、一枚一枚の絵を見るだけでも十分楽しめます。ぜひ参考にしてみてください。
『そらとぶパン』 深見 春夫(作・絵)
トンネルの中から、なんだかとてもいいにおいがしてきます。
しばらくして出てきたのは、大きな大きな、焼きたてのパン!
ポコポコと穴があいていて、ちゃんと人が座れるようになっているのです。
大きなパンは線路を走り、駅へ到着。
ホームで待っていた人たちは大喜びで、パンの列車に乗り込みます。
野を越え橋を渡り、次の駅へ…と思いきや、フワリと浮かび上がり、空へとのぼっていきます。
美味しくて楽しい、空の旅。そしてたどりついたのは、パンの国!
さあ、「そらとぶパン」に乗った人たちは、この先どうなるのか……?!
子どもたちの大好きなものがいっぱいつまった、夢のある楽しい絵本です。
描き込みすぎない優しいタッチの絵が、「焼きたてパン」のふんわりとしたイメージにぴったり。
美味しそうなパンの匂い。ふっくらとした温かな感触まで伝わってきます。
大きな雲の中へと「そらとぶパン」が入っていく光景は、なんともファンタジックです。
空の青の清々しさ、白い雲の壮大さ。ユニークな形のパンが次々に登場し、ワクワクが止まりません! きっと想像力が、どんどんふくらんでいくことでしょう。
子どもも大人も、パン好きさんにはたまらない、楽しい絵本!
焼きたてパンのように、心もほんわか、あったかい気持ちになれますよ。
『つばめこうくう』 もとやす けいじ(著)
カエルの親子が、「くものすくうこう」に到着しました。
まずはチェックインして、大きな荷物を預けます。
手荷物検査をして出国スタンプを押してもらったら、ロビーのお店でお買い物。
初めての空の旅に、ワクワクドキドキ!
さあ、いよいよ時間です。「つばめこうくう」が、たくさんのお客さんを乗せて、
南の島へと出発します……。
一風変わった、ロゴマークのような表紙絵が印象的です。
つばめが飛行機をリュックのように背負って空を飛ぶ、「つばめこうくう」
しかも飛び立つ空港の名は、「くものすくうこう(クモの巣空港)」
なんというユニークな設定!
そしてそのウィットに富んだ細かな描写に驚かされます。
搭乗カウンターがジュースの空き缶だったり、搭乗口がストローだったり、
高層ビルが牛乳パックだったり……。
空港のスタッフはクモやアリたち。乗客はカエルの親子を筆頭に、コオロギ、バッタ、テントウムシなど、さまざまな虫がユーモラスに描かれています。
個々かしこに散りばめられた看板の表記やお店の名前も見逃せません。
思わず笑ってしまうような、シャレの効いたモチーフや言葉が、とにかくいっぱいです!
飛行機に乗ったことがある人も、ない人も、
「つばめこうくう」なら、きっとみんな、楽しい空の旅ができるはず。
何度読んでも飽きない、素敵な絵本です。
『ポチポチのとしょかん』 井川 ゆり子(著)
いつもの時間。いつもの図書館に来た「ぼく」。
だけど、あれも読んだし、これも読んだし、なんだかちょっと、つまらない。
頬杖ついたまま、窓をちらっと見たらば、なんと!子犬が座っています。
名前は、ポチポチくん。
「ぼくの としょかんへ いってみないかい?」
そう誘われて、一緒に森の中へと入っていくと、奥の方に、大きくて古い建物が見えてきました。「ポチポチとしょかん」です。
ドアを開けてびっくり! その図書館は動物でいっぱい!
ネズミやウサギ、ヤギにパンダ。ブタ、キリン、ゾウだっています。
「ポチポチとしょかん」にある本は、全部、動物たちが書いたものなのだそう。
その本には、いったい何が書いてあるのでしょうか……。
「図書館」がテーマの、ユーモアある可愛らしいファンタジー。
独特の雰囲気をもった絵がとても魅力的で、たくさんの動物たちが個性豊かに、臨場感あふれる構図で描かれています。
動物たちの書いた本は、見た目の形もその内容も、とにかくユニークです!
それぞれが自分の本を読んでいる光景がなんとも微笑ましくて、絵を見ているだけでも、にんまり、ワクワクしてしまいます。
3歳という年齢は、絵本がどんどん楽しくなってくる時期。
この絵本を通して、「図書館」がより身近に、楽しい場所になってくれたら最高です。
『ふとんやまトンネル』 那須 正幹(作)、長野 ヒデ子(絵)
ケンちゃんは、ふとんにもぐるのが大好き。
もぐって もぐって、もぐっていくと、「ふとんやまトンネル」のできあがり!
トンネルを抜けると、そこは野原。ともだちのユミちゃんもいます。
たくさんの子どもたちが、「ふとんやま」のふもとに大集合です。
みんなで楽しく大暴れ! 木登りしたり、電車ごっこしたり、かくれんぼしたり。
思う存分遊んだケンちゃんたちは、それぞれのトンネルへと帰っていったのですが……。
幼児でも想像しやすい、身近なファンタジー。
この絵本を読んでもらった子は、きっと真似しないではいられないでしょう。
ふとんをゴソゴソ、もぐって、もぐって……。
そんな「ふとんやまトンネル」ごっこが、当分の間、自宅で続くかもしれません。
ふとんやまのふもとに行けるかも…と想像したら、ふとんに入って眠るのがちょっぴり楽しくなりそうです。
『100かいだてのいえ』 いわい としお(著)
トチくんという男の子のもとに、ある日、こんな手紙が届きました。
「ぼくは 100かいだてのいえの てっぺんにすんでいます。
あそびにきてください。」
手紙の送り主は、誰だかわかりません。トチくんは不思議に思いましたが、
「100かいだてのいえって、おもしろそうだなあ!」
手紙に書いてある地図を頼りに、早速、行ってみることにしました。
さあ! 「1かい」から「100かい」まで、お家拝見です。
そこにはいったい、誰が住んでいるのでしょうか……?
縦にページを開いて楽しむ、縦長の絵本です。
「100かいだてのいえ」には、10階ごとに、違う種類の動物が住んでいます。
ページをめくるたびに、1階~10階、11階~20階、21階~30階……といった具合に、
いろんな動物が登場するのですが、そのお部屋の様子が、なんともユーモアたっぷり!!
住んでいる動物の特徴や習性が、インテリアにしっかり反映されているのです。さまざまに過ごしている姿が、可愛らしく丁寧に描かれていて、見るたび新しい発見があります。
読んで聞かせるというよりも、絵を見て感じたことを、自分たちで自由に話しながら楽しむ絵本です。
「絵探し」のようにして楽しむのはもちろん、「1」から「100」までの数字を覚えたり、
絵本に登場する動物の特徴や習性を学ぶ「きっかけ」にもなるでしょう。
子どもの成長に寄り添って長く楽しめる、お気に入りの1冊となってくれるかもしれません。
【まとめ】
「三つ子の魂百まで」ともいわれているくらい、幼児期は心の土台を育む大事なときです。
読み聞かせをする際は、ただ一方的に読むのではなく、お子さんの反応を見ながら、会話を交えたり、時には歌ってみたりと、子ども自身が感じている絵本の世界観を、親も一緒になって「共感」してあげましょう。
絵本は親子の大切なコミュニケーションツールです。教育的な視点からではなく、親子で楽しい時間を共有するのだということを重視していくと、絵本選びもそんなに迷わずに済むのではないでしょうか?
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