4歳~5歳くらいになると、子どもの想像力や感受性はより一層豊かになり、友達に対する仲間意識も強まってきます。
幼稚園や保育園といった集団生活の中で、友達とけんかをしてしまったり、自分の気持ちがうまく伝えられなかったりと、幼い子が「悩み」や「葛藤」のようなものを経験するのも、これくらいの年齢からかもしれません。
そこでこの時期の読み聞かせにおすすめしたいのが、「気持ち」や「感情」、「心」といったものをテーマにした絵本です。
自分自身の「気持ち」をみつめること。そして、人の「気持ち」を想像すること。
いろんな「気持ち」と向き合うことの大切さを、絵本を通して、親子で一緒に考えてみてはいかがでしょうか。
『ないた』 中川 ひろたか(作)、長 新太(絵)
ぼくは なく。いちにち いっかいは ないている……。
ころんで ないた。
ぶつけて ないた。
けんかして ないた。
くやしいとき、こわいとき、うれしいとき、さびしいとき、かなしいとき。
どうして ぼくは なくんだろう。
どうぶつが なくのは?
おとなは なんで、なかないんだろう……?
心に直接問いかけてくるような、シンプルで鋭い言葉。
そしてなんといっても、長新太さんの絵がすばらしい。
ユーモアを感じさせつつも、憂いを帯びた独特の色使いが印象的で、その世界観にぐんぐん引き込まれていきます。
いろんな種類の「泣く」がある。考えてみれば、実に不思議です。
そもそも、人はなぜ涙を流すのか?
動物も本当は、泣いているのかもしれない……。
大人になるにつれ、泣くのを我慢したり、隠したりするのはなぜなのか?
感情のままに、素直に泣けるということは、とても素敵なことのはず。
自問自答の旅が始まりそうな、奥深いテーマです。
『おこる』 中川 ひろたか(作)、長谷川 義史(絵)
ぼくは毎日、怒られてばかり。
なんでぼくは怒られるんだろう?
怒られるのは嫌だけど、ぼくも怒ることがある。怒るときは、怒る!
でも、怒っても、気持ちはちっともスッキリしない……。
「怒る」ことは、非常にパワーがいります。
怒られるのも、怒るのも、どちらも嫌な気分です。
それがわかっているのに、どうして人は、「怒る」のでしょうか。
その漠然とした問いかけが、絵本の中に描かれています。
「怒る」という感情は、決して、全否定すべきものではありません。
怒らなければいけないときだってあるし、
怒ってくれる人がいることは、実は幸せなことでもあります。
人はなぜ「怒る」のか。怒りの感情がわいたとき、どうしたらいいのか。
この絵本をきっかけに、「怒る」ということについて、親子で話し合っておくといいかもしれません。
『けんかのきもち』 柴田 愛子(作)、伊藤 秀男(絵)
ぼくは、仲良しの「こうた」と けんかをした。
けり入れて、パンチして、とびかかった。けど、「こうた」はびくともしない。
ぼくは、けり入れられた。パンチされた。たおされた。
ぼくは泣いた。くやしかった。
「こうた」はあやまってくれたけど、ぼくの「けんかのきもち」は、終わらない……!
一番仲の良い友達なのに、どうして、けんかになったのか。
けんかの原因については、ここでは一切触れられていません。
けんかの「気持ち」だけに焦点をあてた、臨場感たっぷりのダイナミックな絵本です。
けんかに負けて悔しい気持ち、情けない気持ち。
「なんでだよ!なんでだよ!なんでだよ!」
頭の中で炎のごとくかけめぐる、「けんかのきもち」。
それなのに、あんなに悔しくてたまらなかったのに、
ぼくは餃子を食べ終えると、「けんかのきもち」がス~ッと消えていくのです。
お腹が満たされたとたん、不思議と気持ちが静まっていく感じ。
この心の変化が、「ぼく」の顔のドアップで、見事に伝わってきます。
今のご時世、この絵本のような取っ組み合いのけんかが実際にできるかどうかと問われたなら、それは難しいところかもしれません。
ですが、友達とぶつかり合いながら、「けんか」しながら子どもは育つのだということを、この絵本は理屈ではなく、子どもの心に寄り添って教えてくれているのではないでしょうか。
『心ってどこにあるのでしょう?』 こんの ひとみ(作)、いもと ようこ(絵)
心って いったい どこに あるのでしょう?
むねでしょうか? あたまでしょうか?
「ぜったい しっぽだよ!」 犬が言います。
「わたしは耳にあると思うわ」 うさぎが言います……。
心は、どこにあるのか?
普通に考えれば、きっと多くの人が、胸とか、頭とか、そんなところをイメージするのではないでしょうか。
心そのものには、形がありません。目にも見えない。
ですが、「気持ち」が表れる場所は、たくさんあります。
それはしっぽだったり、耳だったり、お腹だったり、声だったり……。
ページをめくるたび、なるほど!と何度も頷いてしまうはず。
人間だけでなく、動物たちが描かれていることで、とてもわかりやすくメッセージが伝わってくるのです。
心は、からだのいろんなところにある!
そのことに気づかせてくれる、本当に素敵な絵本です。
人の気持ちや心のあり方について、より深く、繊細に感じ取るためのヒントがいっぱいつまっています。
『あたし、うそついちゃった』 ローラ・ランキン(作)、せな あいこ(訳)
ルースは、ちっちゃなものが、だいすき。
ある日校庭で、とっても小さなカメラをひろいます。
「こんな すてきなもの、はじめて!」 ルースは大喜び。
ところが、そのカメラは友達の落し物だったのです。
「それ、ボクのじゃないか!」
びっくりしたルースは、とっさに嘘をついてしまいます。
「ちがう。あたしのだもん! おたんじょうびに もらったんだもん」
みんなのいる前で、ひっこみがつかなくなったルース。
自分のついた嘘に、どう立ち向かっていくのでしょうか……?
嘘をついてしまったことへの罪悪感。
心が重苦しくて、何も手につかない感じ。
そういった気持ちが、可愛らしい絵で、丁寧に描き出されています。
説教臭くなく、それでいて、非常にわかりやすい絵本です。
嘘をついてしまったら、どうすればいいのか。
まずは、一人で苦しみを抱え込まないで、パパやママに相談する。
これは「嘘」に限らず、どんな悩み事にもあてはまることでしょう。
ルースは、勇気を出して本当のことを打ち明けます。
そのときの心理描写が、これまた見事です。
心が一気に軽くなるような、まさに跳びあがりたくなるような感覚。
自分のついた嘘から解放されたルースの姿に、きっと共感せずにはいられないでしょう。
4歳~5歳におすすめな気持ちについて考える絵本【まとめ】
「気持ち」というものは、いろんな感情が複雑にからみあってできています。
幼い頃から、「気持ち」について自分なりに考えておくことは、様々な人々と実際に関わっていく上で、きっと役立つのではないでしょうか。
人の気持ちを想像することができなければ、「思いやり」の心は芽生えません。
ぜひ今回紹介した絵本をきっかけに、いろんな「気持ち」について、親子で一緒に話し合ってみてくださいね。
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