ボヘミアンクラブ、ボヘミアンたちのつどう場所。
ボヘミアンと聞くと、世間のきまりに縛られない放浪者、音楽や踊りを生業とし、旅から旅への自由で気ままな生活を楽しむ人々、そんな物語に出てきそうなイメージがあります。
ところが同じボヘミアンと言っても、そんな牧歌的なイメージとは程遠い人々も居るのです。
セコイアの森の奥深くで、彼らは何をしているのでしょう?
ボヘミアンクラブ・オブ・サンフランシスコ
ボヘミアンクラブ・オブ・サンフランシスコの話に入る前に、ボヘミアンクラブ(Bohemian Club)自体の説明をしておきましょう。
ボヘミアンクラブとは、世界にいくつか有る紳士社交倶楽部(Gentlemen’s club)の名前です。
「紳士」と名乗っているとおり、会員資格は男性のみです。
芸術、学術、政財界で名を成した著名人を会員としますが(つまり、お金と権力を持つ有名人)、世界に点在するクラブ間の横のつながりはなく、それぞれ全く独立した組織です。
そのなかでもとくに有名で活動も活発なのが、“ボヘミアンクラブ・オブ・サンフランシスコ”で、本部はカリフォルニア州サンフランシスコ市のテイラー街に在ります。
その歴史は1872年、文化的な紳士社交クラブの拠点として、「サンフランシスコクロニクル」の記者たちによって設立されました。
ただ会員になるための敷居はなかなかに高くて、現在入会には15年待ちが普通だとか。
また、入会費2万5千ドルのほかに、年会費5千ドルも必要です。
しかし本当に必要なのは「この者、会員資格有り」と他の会員から認められることで、社会における実績、アイビーリーグ卒業の学歴、そして何より現会員との強力なコネです。
敷居が高いだけあって、これまでの会員の顔ぶれはまことにきらびやかです。
アイゼンハワー、ニクソン、フォード、レーガン、ブッシュ父子の歴代大統領。
「トム・ソーヤーの冒険」や「ハックルベリー・フィン」の著作で有名なマーク・トウェイン、「野性の呼び声」「白い牙」のジャック・ロンドン。
新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハースト(誘拐されて洗脳され、銀行強盗事件を起こしたパトリシア・ハーストの祖父)。
俳優クリント・イーストウッド、ロックフェラー家の人々。
ウォールター・クロンカイト、コリン・パウエル、ヘンリー・キッシンジャーなどの名前がずらりと並びます。
ボヘミアングローブ
ボヘミアンクラブ・オブ・サンフランシスコのメンバーたちが、毎年サマーキャンプを開くのがボヘミアングローブ(Bohemian Grove)と呼ばれる地です。
ボヘミアングローブ(Bohemian Grove)とは?辞書を紐解くと、こんな解説が書いてあります。
Bohemian:ボヘミアの、ボヘミア人の、放浪的な、伝統にとらわれない、自由奔放な
Grove:(散策などに適した下生えのない)小さい森、木立、(特に柑橘(かんきつ)類の)果樹園
何処に在るかと言うと、カリフォルニア州サンフランシスコの北方120km。
ロシア川のほとりソノマ郡モンテリオ町 (Monte Rio, California)で、高さ100m以上にもなるセコイア杉の巨木が立ち並ぶ美しい森の一角、11平方kmほどの広さの場所です。
3,000人を収容できる宿泊施設の多くは、キャンバステントだけの簡潔なものですが、簡素な木造のキャビンも用意されています。
7月下旬から2週間にわたっておこなわれるキャンプの間、モンテリオの町の人口は、普段の4倍に膨れ上がります。
この2週間のあいだ彼らは、講演会や交流イベントを催し、親睦を深めます。
と、ここまでなら単なる社交クラブの珍しくも無い話です。
ボヘミアンクラブ・オブ・サンフランシスコ、その裏の顔
ところがところが、このキャンプの初日、「クリメーション・オブ・ケア」と名付けられた“生贄(いけにえ)の儀式”が開かれると言うのです。ちなみに「クリメーション・オブ・ケア」とは「苦痛のタネを火葬する」の意味です。
湖畔に「ボヘミアの偉大なフクロウ」と名付けられた苔むした巨大なフクロウ像が聳え立つ小さな湖、そこではこんな儀式が繰り広げられます。
会員たちが見守る中、赤いフード付きケープをまとった選ばれたメンバーが、1体の人形を乗せたボートを水の上へ押し出します。(一説には生贄とされる本物の人間が乗せられているとも言います。)
そしてその人形には火が放たれるのです。湖面を炎を上げながらただよう1隻の小舟。
これはキャンプの期間中、ささいな世間の悩みから解放されることを象徴する儀式だと言うのですが。
この時メンバーたちは長いローブを着用し、フクロウ像の前で盛大に火を焚き呪文を詠唱し、度を過ごした飲酒と共に、古代ドルイド教の儀式を思わせる行為を行います。
また皆さんはスタンリー・キューブリックと言う映画監督はご存知でしょう。
「2001年宇宙の旅」や「時計じかけのオレンジ」などの作品で知られていますからね。
彼はまた「アイズ・ワイド・シャット」と言う作品も作っていますが、この作品の中には世間の良識から考えるとかなり問題となる場面が描かれています。
その場面は、このボヘミアンクラブのサマーキャンプでの出来事を基にしているとも言われています。
そしてスタンリー・キューブリックは、映画試写会の5日後に心臓発作を起こして、この世を去りました。
ボヘミアンクラブ・オブ・サンフランシスコ、その裏の裏の顔
ボートに乗せられたのが人形か人間かの真偽はともかく、この儀式そのものは芝居じみた雰囲気を味わっているだけかもしれません。
スタンリー・キューブリックの死もたんなる心臓発作かもしれません。
しかし見落としてはいけないことは、このキャンプには欧米で影響力のある政治家、実業家、軍関係者、学者等が集まっている事です。
彼らは日ごろの堅苦しさから逃れて、羽目を外して夏の解放感を味わっているだけでしょうか?
世間、マスコミの目の届かぬところで、直接顔を合わせてこれからの世界の運命を左右する「何か」を語り合ってはいないでしょうか?
キャンプの開催地ボヘミアングローブへの道は、夏場は無論の事、年間を通して、ヘリコプター、民間治安部隊、武装警備員厳重などによって監視されています。
用の無いものはシャットアウトってことです。
全ては噂に過ぎません。鬱蒼と生い茂るセコイアの森の奥深く、緑に包まれた闇の中での出来事です。
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