山登りの必需品の中には必ずキャップライトが含まれています。
テント泊ならそれが必要なのは分かりますが、日帰り山行では午後3時には下山するのが原則です。
それなのに、どうしてキャップライトが必需品なのかと思っている人も少なくないでしょう。
この記事では、その理由を説明しましょう。
なお、ヘッドランプ、キャップランプとも呼ばれますが、ここではキャップライトで統一しています。
目次
山では100%の保証はありません

繰り返しますが、日帰りの山登りでは午後3時までに下山するというのが基本です。
夏なら夕方7時頃までは明るいのですが、冬は5時になるともう日没を迎えます。
特に谷筋は暗くなるのが早く、それを考えると早朝に出発し、昼過ぎにはもう下山にかかるというのが理想です。
ところが、山では想定外の出来事がしばしば発生します。
ルートを間違えた、同行者がネンザした、または体調を崩したなどの理由で予定通りに下山できないことがあるのです。
ビバークはしないまでも、太陽が沈んでも移動する必要に駆られた場合、必要となるのがライト類です。
町中と違って山の中は日が沈むと真っ暗闇となります。
その中で移動するとかえって危険をともないます。
ルートを間違えるのはまだしも、転倒や転落する可能性もあります。
このように、テント泊を前提としている山登りは別として、山登りでは常時ライトを使うわけではありません。
しかし、ライトは不測の事態に対処するために必要不可欠なものなのです。
予測外の出来事に遭遇したとき、自分の身を守るためのものと思ってください。
ライトは小さくて軽く、動きやすいことが原則

山で用いるライトは常時使うものではないことは説明した通りです。
そのため、リュックの中でかさばらず、軽く、それでいて行動しやすいものを選ばなくてはなりません。
行動しやすいとは、簡単にいえば両手を空けることができものと思えばいいでしょう。
つまり、手で持つタイプはNGです。
ライトは身につけて、手はストックや立ち木、岩などをつかむためにフリーにしておくのです。
というわけで、山で一番人気があるのがキャップライトです。
ゴムベルトで頭にセットしますから両手はフリーになります。
LEDが普及して球切れの心配がなくなり、バッテリーも長持ちするようになりました。
種類も豊富です。
ただし、安価な粗悪品も少なくありません。電池カバーがすぐ外れたり、スイッチが作動しなくなったりします。
重たくてすぐ疲れたりするものもあります。
キャップライトに限ると高価なものほど性能はいいといえますが、オーバースペックもあります。
次はライトのスペックについて説明しましょう。
明るければ明るいほどいい……わけではありません

明るさを示す単位はカンデラ、ルクス、ルーメンという3種類があります。
現在キャップライトの明るさはルーメンが中心なので、ここでもその単位を用いることにします。
この分野でも技術の革新は素晴らしく、小さなボディながら強力な照度を持つものも登場しています。
とんでなく明るい6000ルーメンという商品もあります。
当然、その明るさを維持するには強力なバッテリーが欠かせません。
すると、大きさや重量、または点灯時間が犠牲になります。
はっきりいって、夜の山中で行動するのにそれほどの照度は必要ありません。
100〜150ルーメンもあれば十分なのです。
手元だけを照らすのであれば50ルーメンもあれば用はすみますが、さすがに行動するには不十分です。
そこで、ひとつの目安を提示しておきましょう。
標準は100〜150ルーメンだと思ってもらえばOKです。
2〜3時間で登頂して下山できるライトトレッキングなら60〜80ルーメンもあればいいでしょう。
400ルーメン以上の高輝度モデルは特殊な用途に使います。
行方不明者を捜索したり、昔から行われているカモシカ山行(夜を徹して歩き続ける山行のことです)に用いたりするものと思ってください。
使いやすいキャップライトとは
キャップライトを選ぶときはどんなところに注意すればいいのでしょうか。
明るさ以外に注意したいのが使い勝手とバッテリーです。
使い勝手を左右するのはスイッチとベルトです。
グローブをしたままでON・OFFが簡単にできるかというのは大きな問題です。
ダイヤルを回転させるタイプではまず無理です。
といって、プッシュ式ではリュックの中で勝手に点灯される可能性があります。
必要なときにバッテリー残量がゼロでは役に立ちません。
もう一方のベルトはどうでしょうか。
軽く頭を締め付けるだけでしっかり固定できるものが理想です。
しかし、ゴムの伸縮性はいつまでも持続しません。
やがて伸びきってしまい、少々きつく締めても固定できなくなります。
そうなれば交換の時期というわけですが、本体は無事なのにベルトだけのために新品と交換するのはもったいない話です。
特に、本体の重量が重たいと固定するのは難しくなります。
そこで、ライト部とバッテリー部を前後に分割したタイプが登場しました。
トータルの重量は変わりませんが、前後に分散されるため軽く感じます。
一体となったタイプは前部に重量が集中するため、ゴムが緩むとすぐその部分が垂れ下がります。
そのため、前後分散タイプの方がトラブルはないと思われがちです。
確かに、その点に関してはそうかもしれません。
しかし、バッテリーとライトの間はコードで接続されています。
リュックの中にはさまざまなものが無造作に突っ込まれますから、このコードにトラブルが発生する可能性があるのです。
断線や接触不良を起こすと点灯しなくなります。
がっちりと頭部に固定するため3本ベルトを採用したものもあります。
これならソフトに固定できるのですが、セットするのに少々手間がかかります。
通常の1本のベルトのようにワンタッチでセットはできません。グローブをしたままではなおさらです。
フィッシング用としては首からぶら下げるタイプがあります。
これならベルトが劣化する心配はありません。試してみるのもいいでしょう。
バッテリーには2種類あります

キャップライトに用いるバッテリーは2種類あります。
乾電池(単三、または単四)と充電式のリチウムイオン電池です。
どちらにも一長一短があり、選択は非常に難しいところです。
乾電池の場合、LEDがいくら省エネだとはいえ常に新品を使用するか、または予備を持参しなければなりません。
また、山小屋を利用した長期山行の場合、乾電池なら山小屋でも比較的簡単に手に入ります。
対して、リチウムイオン電池は山行の直前にフル充電しておけば安心して使うことができます。
充電器を持参すれば山小屋でも充電できます。
この電池のデメリットはまず高価なことです。
次に、フル充電した状態で長期間放置すると劣化してしまいます。
充電はしたものの結局使わなかったというケースが続くと性能はどんどん落ちてしまいます。
リチウムイオン電池を用いている例としてはケータイ電話がありますが、新品を購入する際、少ししか充電していないことに気づいた人は多いでしょう。
あれは、いつ売れるか分からないケータイ電話に充電するのが面倒なのではなく、バッテリーの性能を維持するためなのです。
まとめ
高価なキャップライトにはさまざまな機能が付いています。
点滅を繰り返したり、照度が可変式だったり、ライトのカラーを変更したり……。
しかし、山でそのような機能を用いることはほとんどありません。
スイッチを入れやすく、適度に明るければ通常の山登りでは十分効果を発揮してくれることでしょう。
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