人間の体は60〜70%が水分でできていて、そのうちの2%を失えばノドが渇き、3%に達すれば体調に支障が生じます。それほど人間にとって水分補給は大事なことなのです。
そうでありながら、かつて山では水を飲んではいけないという俗説がありました。
スポーツの現場も同様で、練習中は一切水禁止という常識がまかり通っていました。
女性の場合はトイレの問題もあって、水分補給に対して誤った考え方がまだまだ残っています。
ここで正しい水分補給を学んでおきましょう。
登山中は特に気を付けたい!ノドの渇きは健康障害を警告するサイン
冒頭で述べたように、体の水分を3%失うと体調に支障が生じます。
それを防ぐために、2%を失った時点で喉が渇きます。
のどが渇いたな、と思った時に補給すれば大事には至らないのですが、無視していると脱水症状を起こします。すると疲れやすくなり、頭痛がして食欲がなくなり、吐き気を起こしたり足が痙攣したりします。
症状が激しいと動けなくなり、ひとりでは下山もままならなくなります。
ノドが渇くという自覚症状が出れば水分を補給することで体調を維持できます。
ところが、ノドが渇いたと感じないままで脱水症状を起こすこともあります。ノドが渇いたと感じないから水分を補給せず、その結果、脱水症状になるのです。
ノドの渇きに関係なく定期的に水分を補給する。それが山では定説です。
特に登山初心者の方は定期的な水分補給を怠ることが無いように気を付けましょう。
登山中は想像以上に水分が失われます
夏のたっぷりと汗を出す時期はみんな相応の水分を準備し、こまめに補給します。
しかし、そうでない時期は無頓着な人が多く、特に初心者にはその傾向が多く見られます。
真冬でも山に登ると汗が出ます。すぐに体温が下がると汗をかいたという意識はなくなり、水分補給を怠ってしまいます。
まだあります。呼気からも水分は出ていくのです。
山登りではしばしば呼吸は荒くなります。それだけ呼気から水分が出ていく可能性が高くなるのです。
このように、山では予想以上に水分は失われます。
ノドの渇きをともなわない水分不足ですからこれは厄介です。これを補うには定期的に水分を補給するしかありません。
ノドが渇いているかどうかに関係なく、30分〜1時間おきに飲むようにします。これは非常に大切なことです。
当日水分を補給しても遅い、登山前日からたっぷりと水分補給
山登りをすると冬でも水分が失われることは説明しました。
だから、山にはたっぷりと水分を持参するのは当然ですが、それだけでは場当たり的といわれても仕方がありません。
なぜなら、山での水分補給は前日から準備するべきものだからです。準備といっても容器に入れておくという意味ではありません。体を慣らしておくのです。
意識してこまめに、それでいて大量に摂取しておきます。
前日の場合はどんなものでも構いません。お茶やコーヒー、ジュース、さらにはスープやみそ汁を飲み、体内にたっぷりと蓄えておきます。
こうすることで登山時のダメージを極力減らすことができます。
皆さんは「水ダイエット」をご存じでしょうか?
女優やモデルは1日に2ℓ以上の水を飲んでスリムな体型を維持しているといいます。真水を飲むことで代謝機能を上げ、血液の流れをよくして脂肪の分解を促すのです。
同時に、便秘解消、肌荒れを防ぐという効果も見込めるそうです。
水ダイエットの飲み方はこまめに少量ずつが基本で、これは登山における水分補給とまったく同じです。
水分補給の標準は1日に1ℓ
最近、山登りでは500ml入りのペットボトルを利用する人が圧倒的に増えています。
市販品をそのまま持参するか、それとも自分好みの中身に入れ替えるかはともかく、潰れても惜しくないし、1本ずつ中身を変えることもできるし、ともかく使いやすいのです。
そして、「今日は何本持ってきた?」という会話が成り立ちます。持参した水の量を本数で表すのが当たり前になっています。
持参する水の標準は4本としておきましょう。
気温や年齢、性別、身長、体重、体調、あとは個人差によって実際にどれだけ必要かは分かりません。実際に4本持っていって、半分以上残れば次は1本減らしてもいいでしょう。
ただし、水の用途は飲用とは限りません。ケガをしたときは洗い流す必要があるかもしれません。
傷の処置をするために手をきれいに洗わなければならない場合もあります。さらに、予測できないトラブルが生じてビバークせざるを得ないケースもあるでしょう。常に余裕は必要です。
登山における水分補給は水、またはスポーツドリンクがお勧め
ここまでは水分、または水と表記していましたが、実際になにを持って行けばいいかというお話をしましょう。
基本的には水でいいでしょう。ジュースのような甘みが強いものは飲めば飲むほどノドが渇くからNGです。
では、お茶(日本茶)はどうでしょう? 昼食にお弁当、おにぎりを食べるのならお茶がほしいところです。
しかし、お茶はコーヒー、紅茶と同様、利尿作用があります。ペットボトル1本なら問題にならないかもしれませんが、メインにするのはやめた方がいいでしょう。
また、夏は大量に汗を出すため、水分を補給するだけでは失われたミネラルを補うことはできません。ビタミンやカルシウム、ナトリウム、マグネシウムなどが含まれたスポーツドリンクを活用するべきです。
ノドが渇いたときだけのドカ飲み水分補給は禁物
初心者によく見られる水分の摂り方は、ノドが渇いたときにガブガブと一気飲みすることです。
ノドが渇けば飲みたくなるのは当然ですが、そのような飲み方をしていては体内に補給されることはありません。
よくカン違いしている人が多いのですが、水分は飲めば補給されるわけではありません。
一気に飲むと血液の浸透圧が急に変わり、そうなると血液は水分を吸収して運ぶことはできません。胃から腸に通り抜けるだけ、つまり排泄されるだけです。ノドの渇きはいやされるでしょうが体内には取り入れられず、脱水症の予防にはなりません。
こまめに少しずつというのが水分補給の基本です。
そのためにはペットボトルを手軽に取り出せるところに入れておくのが得策です。歩きながら・走りながら給水できるハイドレーションシステムも便利です。
本体をリュックに入れてそこから吸引チューブを出し、口の近くに固定しておけばいつでも好きなだけ飲むことができます。
まとめ
単に水を飲むというだけのことですが、山登りでは大きな意味を持っています。
それが体調の維持に大きく関わっているからです。
それでいて、意外なほどいい加減な飲み方をしている人が少なくありません。真夏を除くとそれでも大事に至るケースは少ないからでしょう。
体力に余裕があれば少々飲み方を間違えても楽々と下山できるのです。
しかし、初心者やお年寄りの場合、大きな問題に発展する可能性があります。くれぐれも注意してください。
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