絵に力がある【ダイナミックな絵本】の大きな魅力は、その圧倒的な世界観ではないでしょうか。
最初の1ページ目、もしくは表紙絵を見た瞬間から、心ひきつけられてしまうことも少なくありません。
生き生きとした躍動感あふれるタッチで描かれた絵には、読む人の想像力をかきたたせるような強いエネルギーがあるのです。
そこで今回は、ページをめくるたびに、どんどんひきこまれてしまうような、圧倒的世界観をもった【ダイナミックな絵本】を5冊厳選しました。
元気を出したいとき、自分を奮い立たせたいときに読めば、そのパワフルさに自分自身も、ちょっぴり力が湧いてくるかもしれません。
『オオカミがとぶひ』 ミロコマチコ (著)
少年は思います。
「きょうは かぜがつよい。だって オオカミが かけまわっているから……」
「とおくで カミナリが なっている。そうか、ゴリラが むねを たたいて いるんだ……」
風や雷、雨、歌声、そして時間の経ち方までもが、さまざまな動物たちの仕業としてダイナミックに描かれていきます。
途切れ途切れのイメージのようでありながら、すべてが必然的につながっているような奇妙な感じ。
夢と現実の狭間のような、なぜか逃れられない、独特の空気感。
理屈ではなく、心で感じ取るべき絵本かもしれません。
著者のイマジネーションをそのままぶつけたような、圧倒的な世界観です。
『どんどろめがね』 はやしますみ (著)
「ほりだす ほりだす ガリ ゴリ ボリ
ほりだす ほりだす ガリ ゴリ ボリ」
まるで地底から響く呪文のような言葉で始まります。
茶色い土からほりだされたのは、めがねです。
力強くも、どこか不気味さの漂う、どんどろめがね……。
どんどろめがねをかけると、山や花、麦畑、洞穴の暗闇、さまざまなものが、躍動する別の生命体の姿に見えてくるのです。
ダイナミックなその絵に、まずは圧倒されるでしょう。
この絵の前には、多くの言葉など必要ありません。
自然の叫び声を比喩するかのような力強い擬音に、壮大な想像の世界へとひきこまれます。
自然を畏怖する気持ち、畏敬の念を抱くことの大切さを思い起こさせてくれる絵本です。
『おはなしトンネル』 中野真典 (著)
雨の日のことです。
ガード下のトンネルの中で、黄色いかっぱを着た男の子がしゃがんでいます。
目をぎゅーっとつぶって、ガタンゴトン、ガタンゴトン……
電車が通り過ぎていく音に、じっと耳をかたむけています。
男の子が目を開けました。
見渡せていたはずのトンネルの向こうは、なぜか真っ暗。
そして、パッパカパーッ! ラッパの音が鳴り響き、目の前でサーカスが始まるのです。
踊り子たちが賑やかに登場したかと思うと、お皿をくるくる。蝶々がひらひら。
次から次に、予想不可能な方向へと、ファンタジックに展開していきます。
断片的な夢がひとつにつながっていくような、異次元的空間。
自由奔放に描き出される圧倒的な世界観に、心ときめかずにはいられないでしょう。
絵本を読み終えた後は、不思議な夢を見たときのような、ちょっとドキドキした感覚が残るかもしれません。
『こうまくん』 きくち ちき (著)
林の中を、こうまくんが元気よく走り出します。
てんとうむしやうさぎさんに 「どこいくの?」と聞かれても、
「ぼく はしってるの」とだけ答え、そのまま立ち止まることなく走り続けるのです。
走る!走る!とにかく走る!こうまくんはどこまでも……!
色彩は優しいパステル調ですが、その筆致は力強く、躍動感にあふれています。
走り抜ける足音や、風の音まで聞こえてきそうなくらいです。
こうまくんは、走ることが楽しくて楽しくて、仕方がありません。
うれしくてうれしくて、たまらないのです。
止まってなどいられません。走ることは、生きること。
こうまくんは、生きる喜びに満ちあふれているのです。
読後感は清々しく、微笑ましくもあります。
自分もなんだか、「わー!」と叫びながら、どこかに走り出したくなるかもしれません。
『そよそよとかぜがふいている』 長 新太 (著)
どぎついピンクの表紙絵には全くそぐわない、さわやかなタイトル。
この絵本がどんな内容なのか。到底想像ができないでしょう。
そもそも表紙の絵はなんだと思いますか? 答えはテングザルです。
そして主役はネコ。ぺったん、ぺったん、出てきます。
手がとっても大きいのです。
なんでかなあ、なんでかなあ。ぺったん、ぺったん。
そこでタヌキに出会います。
何が起きるのかと思いきや、ページをめくったとたん、ギューッ、ギューッ!
そして響く、叫び声……。
もうこれは吹き出さずにいられません。
なんともダイナミックな、究極のナンセンス絵本です。
長新太さんの圧倒的世界観にどっぷり浸れます。
疲れて凝り固まった頭を、きっと素敵に、もみほぐしてくれることでしょう。
【まとめ】
ダイナミックな絵本のもつ世界観は、圧倒的であると同時に、非常に独創的であるともいえます。
また、絵に見合った個性的な擬音が添えられていることが多いのも特徴的です。
独創的で個性が強いぶん、好き嫌いの好みは分かれるかもしれませんが、とりあえず一度は手にとって読んでみることをおすすめします。
苦手な画風だと思っていても、そのパワフルさに意外と夢中になってしまうかもしれませんよ。
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