急に耳がズキズキ痛む!?急性中耳炎?耳が痛くなる病気とその対処法







耳がズキズキと激しく痛みだして治まらない、熱や耳だれがでてきた……

思い当たる原因がない突然の耳の痛みに、このまま聞こえなくなるのではと、不安にかられることもあるでしょう。

また、昼間元気に遊んでいた子供が、夜間急に泣き出して耳を痛がることは、珍しくありませんね。

耳が痛くなる原因は、もしかしたら鼻の菌が耳に感染する「急性中耳炎」かもしれません。

小学校入学までに60~70%の子供が患い、子供が風邪をひいたら、疑うべき合併症の一つです。

そこで今回は、急性中耳炎を中心に、耳が痛くなる病気とその対処法などをみていきます。

 

外耳と中耳に多い「耳の痛み」

 

耳は、耳たぶから脳に向かって、外耳中耳内耳で構成され、役割は音を聞き、体の平衡を保つことです。

 

外耳(がいじ)

外耳は、耳の外側について音を集める、いわゆる「耳」と呼ばれる「耳介(じかい)」と、「耳の穴」の「外耳道(がいじどう)」からなります。

中耳(ちゅうじ)

中耳は、「鼓膜」と3つの「耳小骨(じしょうこつ)」、「耳管(じかん)」からなり、音の振動の増幅と気圧のコントロールを行います。

内耳(ないじ)

内耳は、振動を電気信号に変える「蝸牛(かぎゅう)」と、平衡感覚を司る「三半規管(さんはんきかん)」「前庭ぜんてい)」からなります。

 

耳に痛みを感じる病気は、外耳と中耳に多く、内耳では少ないでしょう。

また、耳には異常がなく、耳の周りの炎症などが原因の耳の痛みも少なくありません。

 

耳が痛む主な病気と対処法

耳が痛む病気には、耳介や外耳道が炎症をおこす「耳介炎」「外耳炎」、鼓膜や中耳が炎症をおこす「鼓膜炎」「急性中耳炎」などがあります。

「顎関節症」「咽頭炎」などでは、耳の周辺の炎症を耳の痛みとして感じる関連痛や、放散痛が生じるでしょう。

 

昼間元気に遊んでいた子供が、夜間に耳を痛がり泣くときは、急性中耳炎の場合が多いです。

また、耳掃除のやり過ぎに心当たりがあれば、急性外耳炎が疑われます。

すぐに耳鼻科を受診できない場合、耳の痛みが軽ければ、自宅にある解熱鎮痛剤の内服や耳の周りのアイシングで様子をみてもよいでしょう。

耳だれがあるときは、外耳道に触れたり耳栓をすると悪化しやすいので、耳介の周囲を軽く拭き取るだけにしてください。

 

解熱鎮痛剤で耳の痛みが治まる場合もありますが、痛みが強くて食事や睡眠がとれないときなどは、早急に耳鼻科の受診をおすすめします。

また、乳幼児の急性中耳炎で、耳の後が腫れて耳が立ち上がってみえるときは、「急性乳様突起炎」が疑われ、手術が必要な場合もあるので、病院に急ぎましょう。

耳の痛みが激しく、頭痛や吐き気、めまいや顔の麻痺などがあるときは、髄膜炎内耳炎などが疑われるので、救急外来を受診してください。

 

突然の耳の痛みは「急性中耳炎」

急に痛みだし、ゆっくり治る「急性中耳炎」は、乳幼児に特に多い疾患です。

 

中耳炎は、鼻の奥からの菌が原因

急性中耳炎は、中耳が鼻のインフルエンザ菌や肺炎球菌などに感染し、化膿する急性の疾患です。

乳幼児では、耳管(中耳と鼻の奥をつなぐ管)が太く短く、管の傾きがなだらかなので、鼻から耳に細菌感染しやすいため、中耳炎がよく発生します。

10歳までは、風邪をひくたびに中耳炎になる子が多いでしょう。

 

大人は構造上、急性中耳炎になりにくいのですが、発症すると耳の痛みが激しく、治りにくい場合があります。

 

耳が痛む急性中耳炎の症状

急に、耳がズキズキと激しく痛みだします。

元気だった子供が、夜間に突然泣いて痛がることが多いでしょう。

悪化すると発熱や耳だれ、耳の閉塞感などが生じ、吐き気やめまいがみられることもあります。

 

急性中耳炎の検査

耳鼻科では、耳鏡(漏斗型の観察器具)や鼓膜内視鏡、手術用顕微鏡などで、耳のなかを検査します。

鼓膜が赤くふくらんでいたり、黄色い水がたまり、耳だれが観察されることもあります。

また、原因菌を調べるために、細菌培養検査も行われるでしょう。

 

他の疾患との鑑別のために、画像診断が必要な場合もあります。

X線では、耳や鼻、顎関節や頚椎、舌骨などを検査します。

CT検査は骨や軟骨、MRI検査では腫瘍やリンパ節などの軟部組織の腫れを観察するでしょう。

 

急性中耳炎の治療

急性中耳炎は痛みだしても、自宅にある解熱鎮痛剤を内服し、氷嚢などで冷やせば、痛みが和らぐことが多いです。

耳だれは、耳介をそっと拭き、耳の穴は触らないでください。

夜間や休日などに急に耳が痛みだしたときは、応急処置でしのぎ、翌日耳鼻科を受診してもよいでしょう。

ただし、薬を飲んでも耳の痛みが激しいときは、急ぎ耳鼻科か救急外来を受診してください。

 

軽症の治療

耳の痛みを和らげる鎮痛剤の処方と、中耳炎の原因になっている鼻とのどの治療を行います。

 

中等症の治療

中耳炎をおこしている原因菌に対し、抗生物質を投与します。

鼻水が取れない患者さんは、吸引器で吸入し、鼻の奥の状態を良好に保つようにします。

 

重症の治療

発熱や鼓膜の腫れがひかないときは、鼓膜を切開して鼓膜の奥にたまった膿を出す治療が検討される場合もあるでしょう。

治療により耳の痛みは数日でなくなりますが、完全に原因菌を退治する前に治療を中断すると、「滲出性中耳炎」や「慢性中耳炎」になることがあるので、ご注意ください。

 

鼓膜の切開は必要?

中耳炎の耳の痛みは、鼓膜の充血と、中にたまった膿が鼓膜を圧迫することで生じます。

鼓膜を細いメスで切開する治療は、鼓膜の充血には無効とされています。

また、耳の痛みをおこしている膿は、中耳の内圧上昇により、耳管から鼻に排出されることが多いようです。

中耳炎の治療において、鼓膜切開を受ける際は、十分な検討が必要かもしれませんね。

 

オランダでは、抗生剤が必要な中耳炎は約10%、鼓膜切開は1%以下とされています。

日本においても、過剰な治療を行わない研究が進められています。

抗生剤を飲み続けても、中耳炎が早く治ることはないそうです。

また、鼻水の薬も中耳炎の治療には、ほぼ無効と言われています。

(参考:「小児上気道炎および関連疾患に対する抗菌薬使用ガイドライン」)

 

中耳炎の完治には時間がかかります

急性中耳炎は急に発症し、症状は1週間ほど続きますが、強い痛みや発熱は2~3日で治まるでしょう。

ただし、痛みが消えても、鼓膜の奥にたまった膿は残っており、音が聞こえづらかったりします。

 

耳の膿は、なんと1~3ヶ月間かけて、耳管からゆっくりと抜けていくのです。

ちなみにこの時期を「滲出(しんしゅつ)性中耳炎」と呼びます。

 

3ヶ月経過しても治癒せず、聞こえにくいときは、鼓膜にチューブを入れる処置が検討されるでしょう。

急性中耳炎は、完治まで時間がかかるので、根気よく治療することが大切ですね。

 

急性中耳炎の治療中でも、痛みや熱がなければ、お風呂やプール、予防接種などは可能です。

日常生活では、鼻の通りが悪くならないように常にチェックすることが、中耳炎の予防になりますよ。

 

飛行機の離発着で、耳が痛む「航空性中耳炎」

飛行機の離発着、とくに下降時に耳が痛むことがあります。

中耳と外気の急な気圧差により、鼓膜にストレスがかかり痛みますが、耳管が開けば、耳の痛みや詰まりは解消されます。

 

痛みが軽い場合は、水やつばを飲みこむ、あくびをする、飴をなめる、ガムをかむなどの方法で改善します。

これでも耳の痛みや詰まった感じが治らないときは、「耳抜き」を試してみましょう。

息を吸ってから、鼻をつまみ口を閉じて、軽くいきんで息を耳の奥に送ります。

強くやりすぎると、鼓膜を傷めることがあるのでご注意ください。

 

風邪やアレルギー性鼻炎などを患っている人は、鼻粘膜が腫れて耳管が開かないため、激しい耳の痛みや耳鳴りがおこりやすいです。

放置すると中耳に炎症が生じ、症状が長びいて痛みが強くなることもあるので、耳鼻科を受診しましょう。

 

風邪気味のときは、機内での飲酒や睡眠は控えた方が発症しづらいです。

また、飛行機用の耳栓の使用も有効なのでおすすめです。

搭乗中にどうしても耳が辛いときは、乗務員に相談してください。

 

耳に虫が入って痛い!

耳に虫が入り込むと、鼓膜を刺激して、耳が強く痛むことがあります。(外耳道異物)

まずは、虫の入った側の耳を上に向けてみましょう。

さらに、懐中電灯などで耳の中を照らすと、小さな虫なら出てくることがあります。

無理に虫を取り除こうとすると、外耳道や鼓膜を傷つけやすいので、ご注意ください。

 

それでも虫が出ないときは、食用油や化粧油、消毒用アルコールやウイスキーなどをスポイトで数滴、耳の中に垂らしてみてもよいでしょう。

虫は死んで動かなくなり、油に浮いて出てくる場合があります。

ただし、中耳炎や鼓膜穿孔(穴が開いている)がある人は、行わないでください。

 

虫は、アリ・ハチ・ハエ・ガ・コガネムシ・ゴキブリなどが多いようです。

耳鼻科では、麻酔剤のスプレーなどで虫を弱らせて取り出します。

また、吸引器で虫を一気に吸い出す方法もあるので、無理に自分で取ろうとせず、耳鼻科で診てもらうことをおすすめします。

 

その他、耳が痛くなる原因疾患

耳の痛みは、耳介と周辺が赤く腫れているか、鼓膜に異常はないか観察し、鑑別診断されます。

 

耳介と周囲が赤く腫れて、耳が痛む

乳様突起炎

「乳様突起炎」は、中耳炎が原因で耳の後が赤く腫れ、激しく痛む病気です。

耳介が立って鼓膜が腫れたり、顔面神経麻痺や髄膜炎を併発することがあるので、注意が必要です。

抗菌薬で治療しますが、症状によっては手術も検討されるでしょう。

 

耳ろう孔感染

「耳ろう孔感染」は、先天的に耳のつけ根にある小さな穴が、感染症をおこし腫れて痛みます。

抗菌薬で治療しますが、治りにくいときは、針を刺して膿を出したり、耳ろう管を摘出する治療も検討されます。

 

帯状疱疹(Hunt 症候群)

水痘(すいとう)・帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルスが、三叉神経で活性化し、耳介周辺や外耳道に強い痛みと水ぶくれを生じさせます。

抗ウイルス薬で治療しますが、顔面神経麻痺があればステロイド薬が併用されます。

目の周囲にも症状があれば、眼科の治療が必要になるでしょう。

 

耳介血腫

耳をぶつけたり、強くこすることで出血し、耳介のなかに血液がたまった状態が「耳介血腫」です。

柔道やラグビーなどのスポーツや事故で発症し、耳が腫れて痛み、放置すると耳が変形(カリフラワー耳)することもあるでしょう。

大きな血腫は、自然には治らないので、針を刺して内容液を取り除きます。

再発防止のため患部を圧迫固定し、スポーツが原因の場合は、イヤーガードなどをすすめます。

 

耳介炎

細菌感染やケガで、「耳介炎」や「耳介軟骨膜炎」が生じ、耳介が腫れて痛み、変形することもあります。

治療は、抗生剤と消炎鎮痛剤が処方され、炎症が強いときはステロイド剤の投与や患部の切開排膿などが検討されるでしょう。

 

外耳道や鼓膜が赤く腫れて、耳が痛い

外耳道炎

外耳道炎は、耳かきなどによる皮膚のケガで、外耳道の入口や外耳道が赤く腫れて痛みます。

鎮痛剤で様子をみますが、腫れがひどいときは、抗菌薬点耳が処方されるでしょう。

 

鼓膜炎

急性の「鼓膜炎」は、風邪に伴いウイルスや細菌に感染して発症し、耳が激しく痛みます。

慢性の「鼓膜炎」の原因は不明で、主な症状は耳だれです。

鼓膜の観察と培養検査で診断され、消炎鎮痛剤や抗生剤などが処方されます。

 

耳介周囲や外耳道、鼓膜などに異常がない耳の痛み

耳以外の炎症が、耳の痛みを感じさせる場合があります。

 

咽頭炎(いんとうえん)

「のど」と呼ばれる咽頭(鼻の奥と食道の間)が、細菌やウイルスに感染して炎症をおこした状態が「咽頭炎」です。

気温の変化や過労などで免疫力が低下すると感染しやすく、のどの腫れや痛み、倦怠感や発熱が生じます。

安静をとり、うがいや抗菌薬などで治療します。

 

顎関節症

「顎関節症」では、あごが痛い、口が開かない、口の開閉で音がするなどの症状がみられます。

マウスピースや開口訓練、マッサージや行動療法などで治療します。

※顎関節症の詳細は、こちらの記事をご覧ください。
「顎(あご)が痛む!顎の痛みの原因と疑われる疾患は?対処法は?」

 

頚部リンパ節炎

首のリンパ節が、ウイルスや細菌の感染により、腫れて痛みます。

急性のリンパ節炎は、抗菌薬や消炎鎮痛薬により、1~2週間で治癒します。

押したときの痛みが強く、腫れが急に大きくなるときは、結核性リンパ節炎や悪性リンパ腫、がんのリンパ節転移などが疑われるので、専門医を受診しましょう。

 

咽喉頭(いんこうとう)逆流症

「咽喉頭逆流症」では、のどの詰まりや飲みこみにくい、胸やけなどの症状がみられます。

胃酸が増えすぎたり、食道と胃の境目の筋肉が弱くなると発症します。

制酸剤や消化管運動改善薬などの薬物療法と、生活習慣の改善により治療します。

 

三叉神経痛

「三叉神経痛」は、顔の感覚を脳に伝える三叉神経に、突然激しい痛みがおこる病気です。

おでこ・ほほ・下あごに分布する三叉神経を、血管が圧迫することが原因と考えられています。

また、歯科疾患や耳鼻科疾患、脳腫瘍なども三叉神経痛の原因になります。

治療は、薬物治療や神経ブロックなどが行われ、効果がなければ手術が検討されるでしょう。

 

耳下腺腫瘍

「耳下腺腫瘍」は、耳の下の唾液腺が腫れる、良性および悪性の腫瘍です。

耳下腺は、おたふく風邪のときに腫れる、つばを作る臓器のことです。

悪性の場合、患部の痛みや顔面神経(顔面の筋肉を動かす神経)の麻痺が生じることもあります。

治療は基本的に手術、悪性の場合はさらに抗がん剤や放射線などが検討されるでしょう。

 

耳の痛みのセルフケアは、ツボ押しとトリガーポイント

耳が痛むときは、自分でできるツボ療法やトリガーポイント療法で、痛みを和らげましょう。

 

耳の痛みを和らげるツボ

耳鼻科での治療とあわせて、耳の周辺のツボ治療をお試しください。

押して気持ち良くひびく箇所を、3秒ほどゆっくり押しては離すを、数回繰り返してみましょう。

なお、耳の痛みが激しいときは、ツボ押しは控えてください。

  • 耳門(じもん):耳の穴の前で、口を大きく開けるとへこむところ
  • 下関(げかん):耳介のつけ根から指幅4本ほど前、ほほ骨下縁の中央にあるくぼみ
  • 頭の竅陰(きょういん):耳の後にある後頭骨の突起の上方にあるくぼみ
  • 翳風(えいふう):耳たぶの後下部にあるくぼみ
  • 合谷(ごうこく):手の甲側、親指と人差し指の骨が合わさるところで、やや人差し指寄り

耳の痛みには、このトリガーポイント

耳に明らかな炎症や耳鳴りなどがないのに耳が痛むときは、筋肉のしこりが要因かもしれません。

耳の周りの筋肉を探り、しこりがあれば、痛気持ち良い程度の強さで押してみましょう。

耳にひびく感じがあれば、そこがトリガーポイントですので、30秒間ほど押し続けてください。

押している途中でひびきが弱くなったら、押す圧を少し強めると、より効果が期待できます。

  • 胸鎖乳突筋:耳の後の骨の突起から、胸骨(胸の前の骨)と鎖骨にのびる筋肉の、上・中・下部の3点
  • 外側翼突筋:耳介のつけ根から指幅4本ほど前のくぼみで、口を大きく開けると顎関節が盛り上がるところの周囲
  • 咬筋:下顎の耳寄りで、強く噛むとふくらむ筋肉

 

※セルフケアの途中で、耳の痛みが強くなるときは、中止してください。

 

急に耳が痛くなっても、慌てないでください

 

耳に痛みをおこす疾患と対処法などをご紹介しましたが、いかがでしたか。

夜間や休日に子供が耳を痛がり泣きだしたら、救急病院で診てもらおうか迷うところですね。

救急外来の医師によると、急な耳の痛みは自宅の解熱鎮痛剤とアイシングで対応し、翌日耳鼻科を受診してもよい場合が多いようです。

ただし、耳の痛みが激しく、頭痛や吐き気、麻痺などがあるときは、迷わず病院へ急いでください。










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