肘が痛くて曲げ伸ばしができない、雑巾が絞れない、フライパンが痛くて持てない……
スポーツや作業、ケガや病気、加齢などが痛みの原因になります。
また近年は、パソコンのキーボードやマウス、スマホなどの長時間使用も、肘への負担となっていますね。
今回は、身近な疾患の肘痛の原因と症状、ストレッチやツボ療法などの対処法をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
肘の使い過ぎやケガなどが原因で、痛くなります
変形性肘関節症
加齢や肘のケガ、肘の使い過ぎ(長期間の重労働やスポーツ)などが原因で発症します。
軟骨が摩耗して、関節のすきまが狭くなり、骨の出っ張り(骨棘)ができてきます。
肘を動かしての痛みが強く、やがて曲げ伸ばしが、しづらくなります。
また、屈伸時急に固まってしまい(ロッキング)、動かそうとすると激く痛むことも。
関節の変形が進むと、尺骨神経を圧迫して麻痺する場合もあります。(肘部管症候群)
X腺やCTで診断、日常生活に支障がなければ、保存療法が優先されます。
装具などによる固定や薬物療法(消炎鎮痛薬や関節内注射など)、理学療法(温熱、電気、筋トレ、ストレッチなど)で改善するでしょう。
肘の屈伸がつらく、痛みが激しいときは、骨棘の切除や関節形成、人工関節置換などの手術(直視下、関節鏡視下)が検討されます。
肘部管症候群(ちゅうぶかんしょうこうぐん)
肘の内側にある尺骨神経が、圧迫や牽引されて、肘の痛みや小指側のしびれが生じる、中高年の男性に多い疾患です。
肘の内側を軽くたたいたり、曲げたままにすると、しびれが強くなるでしょう。
やがて、指を開閉する筋肉がやせて、小指と薬指が変形し、物がつまみにくくなってしまいます。
靭帯やガングリオン(良性のコブ)による圧迫、加齢や小児期の骨折に伴う変形や、スポーツなどが原因です。
固定による安静や薬物療法、副腎皮質ステロイド注射が無効の場合は、手術が施されるでしょう。
神経を圧迫している靭帯を切り離したり、ガングリオンを切除します。
肘の内側の骨を削ったり、神経を前方に移す方法、変形をなおす方法が検討されることもあります。
肘関節遊離体
関節内で骨や軟骨が欠けて、動き回る状態を、関節内遊離体(関節ねずみ)といいます。
原因は、離断性骨軟骨炎(外側型の野球肘)やケガによる骨や軟骨の剥離、変形性肘関節症や関節リウマチなど。
関節のすきまに遊離体がはさまると、痛くて動かせません。(ロッキング)
少しずつ動かすと、屈伸できるようになる場合がありますが、繰り返すときは、整形外科を受診しましょう。
X線やエコー、MRIなどで検査し、関節鏡を使って遊離体を取り除く手術が行われます。
関節リウマチ性肘関節炎
リウマチの症状として、肘関節が変形や破壊された状態で、痛みや脱力、熱感や腫れが生じます。
肘の曲げ伸ばしが、しづらくなったり、関節の破壊が進んで、グラグラになることも多いようです。
抗リウマチ薬などによる、リウマチの全身的な治療が優先されます。
軽症の場合は装具療法、進行例は人工肘関節が検討されますが、成果はあまり芳しくないそうです。
テニス肘(上腕骨外側上顆炎)
加齢や繰り返しの手作業、テニスなどのスポーツで、手首を反らす筋肉が付く、肘の外側に炎症がおきる疾患です。
重い物を持って手首を反らしたり、タオルをしぼる時などに、肘の外側や腕が強く痛みます。
30~50歳代に多く、手作業の従事者や主婦におこりやすく、スポーツではテニスのバックハンドでおきるでしょう。
肘に負担のかかる作業やスポーツの制限、サポーターやバンドによる固定、湿布や塗り薬、温熱療法やストレッチなどが指示されます。
痛みが強い場合は、消炎鎮痛薬の内服や注射(局所麻酔薬と副腎皮質ステロイド薬)が処方されます。
半年以上の保存療法で改善しないケースでは、肘関節鏡視下手術などが検討されるでしょう。
野球肘
成長期における繰り返しの投球動作で、肘の内側が引き伸ばされたり、外側が圧迫されて、肘の痛みや運動制限、ロッキングが生じます。
肘の内側では、靭帯や軟骨、手指を曲げる筋肉の腱に炎症がおきて、痛みや腫れ、不安定性がみられます。
X線やMRIで診断、投球の制限指導や投球後のアイシング、消炎鎮痛薬の使用が指示されますが、手術になるケースもあるでしょう。
肘の外側では、骨同士がぶつかり、骨や軟骨が欠けたり剥がれて、遊離体(関節ねずみ)になります。
運動痛や可動制限、ときにロッキングをおこします。
X線やCTで確認、安静の指示で経過観察しますが、関節鏡手術が検討される場合も。
肘内障(ちゅうないしょう)
2~5歳の子供が、手を強く引っ張られた時に、肘の外側の骨が、靭帯からはずれそうになり発症します。
急に泣き出し、肘を軽く曲げたまま腕を下げて、動かさなくなります。
X線で確認し、肘を慎重に曲げて整復します。
整復後の安静は不要ですが、繰り返しやすいので、子供の手を引く時は、注意しましょう。
上腕骨顆上骨折(じょうわんこつかじょうこっせつ)
転んで手をついた時に受傷しやすく、激しい痛みと腫れや変形がみられ、腕が動かせなくなる、肘の上部の骨折です。
神経や血管を損傷すると、まひや循環障害が生じます。
変形が少なく、正常な骨の位置が保てる場合は、キャスト材による固定が施されます。
変形が大きいときは、牽引や手術が検討されるでしょう。
後遺症として、骨が正しくつかないケースで、肘の変形が残ることがあります。
子供が鉄棒などから転落して、肘を痛がる場合は、骨折も疑われるので、整形外科を受診してください。
ツボ治療で肘痛を軽減しましょう
手術の対象にならない、軽症の肘痛は、セルフケアが効果的な場合があります。
- 曲池(きょくち)……肘の内側にあるシワの、親指側先端
- 手三里(てさんり)……肘の内側にあるシワの親指側先端から、手首の親指側に向かい、指幅3本下がったところ
- 上廉(じょうれん)……肘の内側にあるシワの親指側先端から、手首の親指側に向かい、指幅4本下がったところ
- 少海(しょうかい)……肘の内側にあるシワの、小指側先端
痛気持ちいい強さで、ゆっくり3~5秒押して離すを、3~5分続けます。
せんねん灸のような温灸や、刺さない置きハリのパイオネックスゼロも有効なので、試してみてください。
前腕(肘と手首の間)の筋肉や二の腕の後面、胸の筋肉の腕寄りなどで、押して肘に響くところ(トリガーポイント)があります。
肘への響きが消えるまで、痛気持ちいい程度の強さで押さえると、肘の痛みが軽減するでしょう。
手や腕の使い過ぎなどによる肘痛には、ストレッチが有効
緊張した筋肉を緩めて、腱の負担を減らし、炎症を和らげます。
自動運動による軽いストレッチです。
- 肘を伸ばして、体から少し離しましょう。
- 手首を下に曲げて、10~20秒間保ちます。
- 手首を内側に回してひねり、手首を曲げて、10~20秒間保ちます。
- 手首を上に反らして、10~20秒間保ちます。
- 手首を外側に回してひねり、手首を反らして、10~20秒間保ちます。
やや強めのストレッチです。
- 肘を伸ばして腕を前に挙げ、手のひらを手前に、指先を下に向けましょう。
- 反対の手で、ストレッチする手の甲をつかみ、手首を曲げるように手前へ引き、10~20秒間保ちます。
腕を少し下げた位置から始め、慣れてきたら腕を少し上げてストレッチしましょう。
指先を外側に向けたり、上に向ける位置でのストレッチも試してみてください。
- 肘を伸ばして腕を前に挙げ、手のひらを向こう側に、指先を上に向けましょう。
- 反対の手で、ストレッチする手のひらと指をつかみ、手首を反らすように手前へ引き、10~20秒間保ちます。
腕を少し下げた位置から始め、慣れてきたら腕を少し上げてストレッチしましょう。
※指先を内側に向けたり、指全体を反らすストレッチも試してみてください。
一日に3~5セット、無理せず痛くならない程度に行いましょう。
呼吸を止めないで、筋肉が気持ちよく伸びていることを意識して、ストレッチしてください。
ストレッチの後や、入浴時に前腕(手首から肘)を軽くマッサージすると、より効果が期待できます。
スポーツの前後には、必ずストレッチしてください。
肘が痛いけれど、作業やスポーツが休めないときは、テーピング
痛みを和らげ、肘関節や前腕の筋肉を保護します。
伸縮性のキネシオテープを使用し、痛む腱の筋肉に貼っていきましょう。
5cm幅、長さ20cmのテープを1枚用意します。(軽症用のシンプルな貼り方です)
肘の内外の痛いところを中心に、肘を屈伸する筋肉を伸ばした状態で、テープを引っ張らずに、腕に沿って貼ります。
痒くなければ、2日間くらい貼っておいてください。
入浴で濡れたら、乾いたタオルでたたくか、ドライヤーで乾かしましょう。
※痛む部位により、貼り方はさまざまなので、下記のホームページを参考にしてみてください。
PIP SPORTS 簡単テーピング http://www.pip-taping.com/movie/parts/hiji/
最後に
若年者のスポーツが原因の肘痛は、手術が必要なケースも多いでしょう。
スポーツの継続も含め、綿密な治療計画などを、スポーツドクターと相談することをおすすめします。
中高年で腕の使い過ぎによる肘痛は、運動制限と予防が大切です。
スポーツは頑張りすぎず、必ずストレッチなどのウォーミングアップとクールダウンを励行し、疲労をためないようにしましょう。
日常生活では、なるべく肘に負担をかけないように工夫し、痛みを感じる動作を避けることが重要です。
仕事が原因の場合は、負担の軽減が困難なので、ストレッチやマッサージ、テーピングなどのセルフケアで、予防してみてください。
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