スマホやマウスの使い過ぎで指・手首・肘などが痛い!考えられる疾患とその対処法は?







「スマホ腱鞘炎」「マウス腱鞘炎」「パソコン腱鞘炎」「スマホ肘」「マウス肘」……

さまざまな通称で呼ばれる、これらの症状でお悩みの人が急増しています。

 

かつては手を酷使する職業病やスポーツ障害でしたが、近年はスマホやマウスの使い過ぎで指や手首、肘に痛みを訴える人が少なくありません。

 

これらの腱(けん)腱鞘(けんしょう)の疾患は、同じ位置で繰り返しの動作を長時間続けることで、患部にに負担がかかり炎症をおこした状態といえます。

仕事や日常生活で、パソコンやスマホは必需品ですが、痛みを我慢して操作を続ければ、悪化して手術にいたるケースもあります。

 

そこで今回は、スマホやマウスの使い過ぎによる指と手首の腱鞘炎および肘の腱炎の詳細と、痛みを和らげる対処法をお届けします。

 

腱鞘炎(けんしょうえん)は、若年者や妊婦さんも要注意!

筋肉は腱となって骨に付き、筋肉が伸縮することで、手指や腕の関節が動きます。

同じ姿勢や繰り返しの動作で、筋肉が縮み続けたり、頻繁に伸び縮みさせられると、腱が骨に付く部分に負担がかかり炎症をおこします。

 

また、腱鞘は腱を刀のさやのように覆い、腱の動きをスムーズにしたり、関節運動時に腱が骨から離れるのを防いでいます。

指の使い過ぎなどで、過度に腱が腱鞘の中を往復すると、腱鞘の内側や腱に炎症がおきて腱鞘炎(けんしょうえん)になりかねません。

 

腱鞘炎は、中高年に多くみられる疾患ですが、スマホやパソコンの普及で若年者の患者さんも増えています。

加齢と酷使が主な原因ですが、出産前後や更年期の女性に多発することから、女性ホルモンの関与も考えられています。

 

さらに、腱鞘炎が女性に多いのは、筋力が弱いために腱や腱鞘に負担がかかることが一因とされています。

出産後の育児や、中高年者による親の介護なども、腱鞘炎を発症する引き金となるでしょう。

 

スマホやパソコン作業のやり過ぎで指が痛い

スマホやパソコンで指を使い過ぎると、指の腱と腱鞘に炎症がおき、日常生活にも影響がでます。

 

腱鞘炎が悪化するとばね指になることもある

スマホやパソコンのマウス・キーボードの使い過ぎにより、指に腱鞘炎(けんしょうえん)が生じます。

スマホの操作では、片手で持ち親指でフリックやスワイプを過度に多用すると、親指が腱鞘炎になります。

また、マウスのクリックやスクロールでは人さし指や中指に、キーボード操作では全指に痛みがでることがあるでしょう。

 

腱鞘炎は、指の倦怠感や違和感、こわばりや動かしづらさ、すぐに治まる軽い痛みから始まります。

やがて作業中の痛みが強くなってきて、熱っぽく腫れた感じがするようになるでしょう。

さらに悪化すると、じっとしていても痛み、軽い物を持ち上げたり、つまむ動作などがつらくなります。

 

腱鞘炎を放置したり酷使を続けると、指の曲げ伸ばし時にひっかかるバネ現象がおき、やがて自力で指の屈伸が困難になる「ばね指」になることもあるので要注意です。

※ばね指の詳細は、こちらの記事を参考にしてください。

スマホやマウスの使い過ぎで手が痛い?ばね指などの症状と治療、セルフケア

 

腱鞘炎の治療とセルフケアの方法

腱鞘炎の治療は、サポーターやテーピングで固定をして、まず手指を休ませます。

安静で軽快しないときは、消炎鎮痛剤の内服や外用(湿布や塗り薬など)、局所麻酔剤とステロイドの注射などが有効です。

 

患部が熱っぽいときは、ビニール袋に氷を入れ、1時間おきに10分間ほどアイシングしましょう。

凍傷に気をつけ、冷たすぎたら間にタオルを入れ、痛みが増すときは中止してください。

慢性期は、お風呂などでよく温め、ゆっくりと指の曲げ伸ばし運動をします。

 

指や手のひらの腱は、やさしくマッサージしてください。

さらに、指を屈伸するときに緊張する前腕の筋肉を、しっかりとマッサージします。

患部にひびく筋肉のしこりがあれば、30秒ほどの持続圧迫も有効です。

パソコン作業時は、マウスを強く握り過ぎたり、キーボドを強く叩かないように気をつけましょう。

 

スマホで手首を傷める「ドケルバン病」

女性に多いドケルバン病は、親指の酷使で発症します。

 

フタを開けるときに、親指の付け根がズキンと痛む

ドケルバン病は、親指を反らす腱と親指を広げる腱を使い過ぎたときに、手首の親指側におこる腱鞘炎です。

片手スマホで親指を酷使すると、腱と腱鞘に炎症が生じて、親指の付け根が痛むようになります。

また、キーボードのスペースキーを多用したり、マウスをつかんで細かく動かす操作などでも発症することがあるでしょう。

 

手首の親指側が腫れて痛み、字を書いたりフタを開けるなどの動作がつらくなります。

ばね指と同様に、女性ホルモンのバランスがくずれたときに起こりやすため、男女比は1:7とされています。

 

ドケルバン病のセルフチェック

  • 親指を内側に握り手首を小指側に曲げたときに、手首の親指側の痛みが強くなる
  • 親指を反対の手で握り、親指を曲げてから小指の方に引っ張ると、痛みが強くなる
  • 手首を手のひら側に直角に曲げ、親指を開いてから反らしたときに、痛みが強くなる

 

これらの症状に当てはまっていればドケルバン病が疑われます。

 

ドケルバン病の治療方法

ドケルバン病では、患部の安静を保つために、副木やサポーター、テーピングなどで固定します。

痛みが強ければ、消炎鎮痛剤や局所麻酔とステロイド(トリアムシノロン)の注射が有効とされています。

保存療法で改善せず、日常生活に支障があれば、腱鞘を切開する手術が検討されることもあるでしょう。

 

※ドケルバン病の治療は、こちらの記事も参考にしてください。

手首、指の腱鞘炎治療に有効なテーピング、サポーターについてご紹介!

 

ドケルバン病はツボを使ってセルフケア

陽谿(ようけい)は、親指の付け根にある、ドケルバン病の特効ツボです。

手首の甲側にある横じわの上で、親指を反らしたときにできる、くぼみの中にあります。

 

押しもみながら、手首をゆっくりと反らしたり曲げたりします。

気持ち良さが感じられるまで、続けてください。

 

つぎに、陽谿を軽く押しながら、親指の屈伸運動をゆっくりと3回繰り返します。

親指を反らしたり、広げたときに緊張する前腕の筋肉に圧痛点があれば、同様に軽く押しながら親指の屈伸運動を行ってください。

 

スマホやマウス操作で「テニス肘」になる!?

 

肘の外側が痛むテニス肘の症状と治療、予防法などをご紹介します。

 

指や手首の使い過ぎで肘が痛む

スマホを持つだけで肘が痛い、マウス操作やタイピング時に肘が痛むなどの症状でお悩みの患者さんが増えています。

タオルを絞る、物を持つなどの動作で、上腕骨(肩から肘まで)の肘近くで、骨の外側(親指側)にある出っ張りに痛みを感じることが多いでしょう。

 

スマホ肘、マウス肘などとも呼ばれますが、正式には「上腕骨外側上顆炎(通称テニス肘)」という病名です。

テニス肘は、指を伸ばす、手首を反らす、手首を外側にひねるときに働く筋肉の腱が、上腕骨に付く部位で炎症がおきる疾患です。

 

腱の部分断裂以外に、骨を覆う骨膜の炎症、腱と骨の間にありクッションの役目をする滑液包の炎症なども痛みの原因と考えられています。

また、関節を覆う関節包や靭帯、神経の障害でも肘が痛むので、専門医による鑑別診断が重要ですね。

 

※肘痛の原因は、こちらの記事も参考にしてください。

『肘が痛い』そんな時の原因と対処法を解説!

 

通常は鈍痛から始まり、疲労感や痛みが前腕(肘から手首まで)や上腕に及ぶようになります。

徐々に、指や手首を使う作業でおきる肘の痛みや、肘の外側の圧痛が強まります。

タオルを絞ったり、物を持ち上げる、フタを開けるなどの動作がつらく、日常生活にも支障がでてくるでしょう。

 

テニス肘のセルフチェック

  • 指を握り手首を反らす動作に抵抗を加えると、肘の外側に痛みが生じる
  • 手のひらを下に向けて、肘と中指をまっすぐ伸ばし、中指を手のひら側に曲げるように力を加えると痛い
  • 肘を伸ばして、手のひらを下に向けて手首を反らした状態で、荷物(イスなど)を持ち上げようとすると痛い

 

これらの症状に当てはまっていればテニス肘が疑われます。

 

テニス肘の治療はまず保存療法

テニス肘は肘の使い過ぎが原因なので、なるべく患部の安静を保ち、サポーターやバンド、テーピングなどで固定します。

急性期はアイシング、慢性期は温熱療法がすすめられます。

低周波治療や超音波治療などの物理療法と、運動療法などの理学療法も有効でしょう。

 

痛みが強い症例では、消炎鎮痛剤の内服や外用、ステロイドと局所麻酔の注射が処方されます。

保存療法で症状が改善せず悪化する場合は、手術が検討されるでしょう。

 

※「診療ガイドラインに基づいた上腕骨外側上顆炎(テニス肘)ガイドブック」による、治療効果の説明

  • 発症から6週間以内では、ステロイド注射が有効
  • 3ヶ月以上の慢性期では、注射より理学療法が有効
  • 手術後、短期間であれば成績は良好

 

テニス肘の予防方法は?

スマホを片手で持ち、画面を正面に向けているとき、指を曲げて手首をひねるために、前腕の筋肉に負担がかかり、肘が痛くなります。

机やクッションなどの上に、適度な高さと角度でスマホを置き、スマホを持たずに操作するとよいでしょう。

また、キーボードやマウスを使うときは、手首が反らないように、ハンドレストのようなクッションを利用してください。

 

パソコン作業中の姿勢の改善も、テニス肘の予防になります。

肩の関節の位置が上がり過ぎても、下がり過ぎてもいけません。

肘を直角に曲げて、前腕が自然に机の上に乗せられるように、椅子とデスクの高さを調整しましょう。

 

マウス操作の多い人は、アームレストの使用もすすめられます。

長時間の作業時は適宜休憩をとり、マウスやキーボードを操作しないときは、手を離して軽く振ったりストレッチをしてください。

 

安静とセルフケアで症状が改善しないときは、手専門の整形外科へ

 

手指を酷使することでおきる疾患と対処法などをご紹介しましたが、いかがでしたか。

 

スマホやマウスの多用で発症する主な腱鞘炎は、「ばね指」と手首の「ドケルバン病」、腱の炎症は「上腕骨外側上顆炎(テニス肘)」です。

これらの症状に該当するようでしたら、まずは安静をとりましょう。

 

スマホやパソコンは生活や仕事の必需品ですが、長時間の連用をなるべく避けて、手指を休ませてあげてください。

なお、セルフチェックで疾患が疑われる場合や、セルフケアを施しても症状が改善せず悪化するときは、近隣の手外科専門医を受診するようにしましょう。










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