ぶつけたり、捻った覚えがないのに、左や右の”わき腹が痛い”!
内臓の病気かも?と不安になりますよね。
わき腹には、筋肉や肋骨と神経、そして腹部の内臓があり、ケガや病気が痛みの原因となります。
スポーツや転倒などでわき腹をぶつけて、押したり動くと痛いときは、肋骨や筋肉の損傷が考えられるでしょう。
しかし、思い当たる原因がなく、わき腹が痛みだしたら、神経や内臓の疾患が疑われる場合もあります。
今回は、わき腹の痛みの出かたや内臓疾患の初期症状などから、「わき腹の痛み」の原因を探っていきます。
思い当たる原因がないのに、体を動かすと”わき腹が痛い”
思い当たる原因がないのにわき腹が痛む場合は肋骨の疲労骨折や、わき腹の筋肉の損傷が考えられます。
せき・くしゃみでわき腹が痛いときは、肋骨を傷めたかも……
体をひねったり、ふりかぶるような、わき腹に負担のかかる動作を繰り返すと、肋骨の疲労骨折をおこすことがあります。
肋骨の疲労骨折は中高年のスポーツ初心者や運動不足の人が、ゴルフやテニス、野球や剣道などのスポーツで受傷しやすいです。
また、骨が弱くなっている高齢者では、激しいせきや寝返りだけでも骨折する場合があるので要注意です。
わき腹から背中の肋骨に沿っての圧痛や、せき・くしゃみでのわき腹の痛みがみられたら、整形外科を受診しましょう。
※肋骨骨折の詳細は、こちらの記事も参考にしてください。
わき腹の筋肉の肉離れや、筋肉痛でも痛みます
体を急にねじったときに、わき腹の筋肉を傷めることがあります。
ゴルフや野球、テニスなどのスポーツや、転んだり、転落したときなどに受傷します。
また、筋肉が弱くなっていると、体をねじる体操やストレッチで、高齢者では横の物を取ろうとしただけで、わき腹の筋肉を痛めてしまう事もあるでしょう。
普段より運動量が多かったり、疲れているときなどは、わき腹の筋肉痛も生じやすいものです。
わき腹には、上腕骨(二の腕)や肩甲骨、肋骨などを動かしたり、呼吸時に働く筋肉があるので、傷めると上半身の運動や呼吸にともない痛みます。
急性期は、わき腹に痛みを感じる動作や姿勢は避け、アイシングや湿布などで様子をみます。
痛みが軽くなってきたら、温めて少しずつストレッチや筋トレを開始しましょう。
スポーツの前には十分なストレッチを行い、高齢の人は無理な運動は控えて、急がずゆっくりと慎重に行動してください。
わき腹が突然、刺すような痛みに襲われる「肋間神経痛(ろっかんしんけいつう)」
わき腹が痛む肋間神経痛(ろっかんしんけいつう)の原因は、背骨や肋骨、筋肉やウイルスなどです。
上半身を動かすと痛む、骨が原因の肋間神経痛
肋間神経痛では、背中から始まり、わき腹やみぞおちまで広い範囲で痛みます。
左右どちらかの肋骨にそって、急にするどい痛みが生じることが多いでしょう。
上半身を動かして痛みが強くなる場合は、背骨や肋骨の異常が考えられます。
変形性脊椎症や肋骨骨折、腫瘍などの可能性があるので、整形外科を受診しましょう。
わき腹の皮膚が痛む肋間神経痛は、帯状疱疹(たいじょうほうしん)
わき腹などの皮膚がピリピリ・ジンジン痛み、やがて発疹や水泡ができたら帯状疱疹が疑われるので、皮膚科や内科、整形外科を受診してください。
帯状疱疹は、神経に潜んでいた「水ぼうそう」のウイルスが、免疫力低下時に活発化して発症するので、過労やストレスに注意しましょう。
また、水ぼうそうのワクチンを受けていない小児には、うつす可能性があるのでお気を付け下さい。
治療薬の「抗ウイルス薬」は、発疹が出てから3日以内の投与が効果的なので、早期発見・早期治療が重要です。
病状が進行してからだと、薬の効き目が悪くなるので、わき腹などの症状に気が付いたら速やかに受診してください。
帯状疱疹によるわき腹の痛みが強いときは、神経ブロック療法が施されます。
局所麻酔剤の注射で、痛みを感じる神経を一時的に遮断したり、ステロイドで神経の炎症を鎮める治療法です。
この治療法では痛みによる悪循環を改善し、自然治癒力を高めることで、症状緩和に導くと考えられています。
また、神経障害性疼痛の内服薬(リリカなど)も神経の痛みに有効なので、処方されることがあるでしょう。
帯状疱疹治癒後のわき腹の痛みには、手技療法(関節運動学的アプローチなど)が有効な場合もあります。
パソコンやスマホで硬くなった背筋が原因の肋間神経痛
近年はパソコンなどの長時間のデスクワークや、悪い姿勢でのスマホの使用などで、背筋に負担をかける人が増えています。
疲れて硬くなった背筋が、肋骨の間を走る肋間神経を刺激して、わき腹の痛みとなることもあるでしょう。
出来るだけ長時間の悪い姿勢は避け、休憩やストレッチで、時々背中の筋肉を休ませてあげてください。
神経は冷やすと痛みが出やすくなるので、クーラーや汗をかいた下着などで、背中やわき腹を冷やさないようにしましょう。
内臓の異常がひきおこす「わき腹の痛み」
内臓の異常による”わき腹の痛み”については痛む部位や内臓の症状が、おおよその目安になります。
わき腹のどこが痛みますか?
- 左わき腹の上部が痛いとき…胃や膵臓、脾臓や心臓などの異常が疑われます。
- 右わき腹の上部が痛いとき…肝臓や胆嚢、十二指腸などの異常が疑われます。
- 左わき腹の下部が痛いとき…過敏性腸症候群の可能性があります。
- 右わき腹の下部が痛いとき…盲腸(虫垂炎)、左右の下部の痛みは、大腸の異常が疑われます。
※安静にしていても、わき腹の痛みが繰り返しおこり、長びく痛みが徐々に強くなるときは、内臓の疾患が考えられるので、早めに内科を受診しましょう。
わき腹の痛みに伴う、内臓疾患特有の初期症状
わき腹が痛いときに考えられる内臓疾患の、一般的な初期症状をみていきます。
胃潰瘍
食後や空腹時の痛み、吐き気、腹部膨満感、胸やけ、げっぷ、食欲不振など、ストレスで誘発されることも
急性膵炎
初期は軽い胃痛に似た症状(やがて刺すような鋭い痛みが腹部全体に広がる)、吐き気、嘔吐、お腹の張りなど、食べすぎや飲み過ぎで誘発されることも
脾腫
少しの食事での満腹感、左肩の痛み、貧血、呼吸困難、吐き気、便秘、疲労感など
心筋梗塞
突然、胸の真ん中から左側にかけて、手のひらサイズの範囲が押されたり、締め付けられるような嫌な感じが、数分から30分程度続いて治まるのを繰り返す、同時に背中や肩、首や左腕、顎や奥歯、左腕などにも痛みや痺れがでることがあり、呼吸困難、吐き気、冷や汗なども
肝炎
全身倦怠感、食欲不振、発熱、頭痛、吐き気、嘔吐、かぜのような症状など
急性胆嚢炎
脂物を食べた後などに痛み、1~2時間で治まる、右わき腹の上部を押すと痛い、息が吸いづらい、発熱、吐き気、嘔吐など
胆石症
脂物を食べた後や夜間に、右わき腹の上部が激しく痛み、数十分~数時間で治まる、背中から胸や右肩の痛み、腹部の違和感、腹部膨満感、発熱など
十二指腸潰瘍
空腹時や夜間に、みぞおちや右わき腹が痛むが食後軽減する、胸やけ、吐き気、嘔吐、食欲不振など
過敏性腸症候群
左わき腹の下部に突然の差し込むような腹痛、持続性の鈍痛、排便後は症状軽減、外出時の下痢、下痢と便秘を繰り返す、腹部膨満感、腹鳴、放屁、頭痛、倦怠感、不安感など
急性虫垂炎
みぞおちやへそ周辺が時々痛みだし、やがて右下腹部に移動して持続的ではっきりした痛みになる、せきや運動や押して離した時に痛みが強くなる、発熱、吐き気、嘔吐、食欲不振など
潰瘍性大腸炎
血便、粘液便、下痢、腹痛などが繰り返し続く、ストレスが誘因になることも
左右のわき腹が痛いときは、腎臓疾患の場合も
腎臓の腫れや尿管の結石などで、左右のわき腹が痛むことがあります。
わき腹の痛みが強くなると、吐き気や嘔吐もみられるでしょう。
弱い痛みが続き、押しての痛みや発熱があり、尿検査で白血球が増加しているときは、腎臓の感染症が疑われるので、尿培養検査を行い診断します。
腎結石と鑑別のため、CT検査や超音波検査などが行われるでしょう。
腎臓疾患の症状は
- 発熱
- 倦怠感
- 食欲不振
- 嘔吐
- 背腰部痛
- 排尿異常(血尿・頻尿・残尿感・排尿痛・尿量減少など)
- 貧血
- 体重減少
などです。
腎梗塞、腎膿瘍、遊走腎、水腎症、腎がん、腎臓結石などが疑われますので、泌尿器科を受診しましょう。
食後に激しい運動をしたとき、わき腹が痛む原因と対策は?
左のわき腹が痛むときは、脾臓が原因かもしれません。
激しい運動をしたときに、筋肉が必要とする酸素を運ぶ血液を供給するために、急に収縮する脾臓の痛みと考えられています。
しっかりウォーミングアップすることが予防となり、痛み出したら左わき腹のストレッチと深呼吸で対応しましょう。
右のわき腹が痛むときは、運動で揺れる肝臓などの重みが、横隔膜を刺激しておこる痛みと考えられています。
左わき腹の痛みと同様に、ウォーミングアップと右わき腹のストレッチが有効でしょう。
食事をしたときは、消化器が大量の血液を必要としますが、運動をすると消化器の血液が不足して痛みをおこすとも言われています。
また近年は、お腹の臓器や腹腔(ふくくう:内臓が入る空間)を包む腹膜が、運動により擦れて痛みが出るとする研究者もいます。
運動をする1~2時間前までに消化の良いものをとるようにし、食事直後は激しい運動をなるべく控えましょう。
運動中の水分補給は、少量ずつ頻回に行い、体幹の筋トレや背筋を伸ばす姿勢も予防になるようです。
わき腹の痛みには、食事や運動と姿勢などの生活習慣を改善しましょう
わき腹が痛くなる原因は、筋肉だけでなく骨や神経、ウイルスや内臓などと多彩です。
近年は、中高年のスポーツ愛好者の増加に伴い、運動初心者や普段運動不足の人の肋骨疲労骨折が増えています。
また、骨が弱くなった高齢者では、長びく激しい咳でも疲労骨折をおこすので、注意が必要です。
内臓の疾患が原因のわき腹の痛みも多くみられますので、普段と違う身体の異常に気が付いたら、放置せずに専門医を受診しましょう。
また、生活習慣病や姿勢などが原因の場合は、食事療法や運動療法、仕事や生活習慣の改善も有効なので、ぜひ取り組んでみてください。
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