足のすねが痛い!ぶつけた?突然の痛み?症状別に疑われる疾患を解説







足のすねをぶつけると、涙が出るほど痛いですよね。

すねは皮膚のすぐ下に骨があり、筋肉のクッションがないので、ぶつけると骨の表面にある骨膜が激しく痛むのです。

 

弁慶の泣き所と呼ばれる「むこうずね」ですが、運動中にケガをしていないのに痛んだり、何もしないのに突然痛むことも実は多いのです。

痛みの原因は、関節筋肉皮膚神経血管腫瘍感染などさまざまです。

 

今回は、主にすねの前面が、「何をしたときに痛いのか」で分類し、疑われるケガや疾患をご紹介します。

また、ジョギングブームで増加した、中高年ランナーのすねの痛みもとりあげましたので、ぜひ参考にしてください。

 

膝から足首までの「すね」とは?

膝から足首までのすねは「下腿(かたい)」と呼ばれ、前面内側の太い「脛骨(けいこつ)」と、外側の細い「腓骨(ひこつ)」からなります。

脛骨は下端で内くるぶしとなり、大腿骨(太ももの骨)から受ける体重を支えて足部に伝え、外くるぶしとなる腓骨とともに、足首の関節をつくります。

下腿には、足首と足指や膝関節を動かす筋肉が付いており、立つ・歩く・走る動作に重要な働きをしているだけに、障害も受けやすい部位ですね。

 

俗称の「むこうずね」は、脛骨を指しますので、今回は「ふくらはぎ」を含まない下腿前面を、わかりやすく「すね」と表記させていただきます。

それでは、足のすねの症状や状況から考えられる、ケガや病気をみていきましょう。

 

足のすねをぶつけたり、ひねって痛む

スポーツや交通事故、仕事や日常生活で、すねをぶつけたり、ねじると腫れて痛みます。

 

すねの腫れや痛みがヒドイ場合

すねの腫れや痛みがヒドイ場合には脛骨や腓骨が骨折する「下腿骨骨幹部骨折」が考えられます。

受傷直後から、腫れと痛みが激しく、歩く事はできません。

高齢者では、転んだだけでも骨折しやすいので、要注意です。

 

脛骨は皮膚に近いので、折れると皮膚を突き破る「開放骨折」となり、細菌感染しやすく骨髄炎をおこすことがあるので、傷の処置が優先されます。

転位(骨のズレ)が少ない骨折は、ギプス固定などの保存療法となりますが、近年は手術療法が一般的になってきました。

 

また、すねの筋肉が出血や腫れをおこすと、内圧が高まり神経や血管を圧迫して、激痛と腫脹をおこす「コンパートメントシンドローム」を発症し、筋肉の壊死にいたる場合があるので注意が必要です。

取り急ぎ整形外科を受診し、早期の筋膜切開で、内圧を開放します。

 

受傷直後は、すねに腫れや痛みが強いが、やがて和らぐ場合

受傷直後は、すねに腫れや痛みが強いが、やがて和らぐ場合は、脛骨や腓骨の「打撲」や、筋肉の「挫傷」が考えられます。

スポーツや転倒、日常生活でも、すねをぶつけることはよくありますよね。

骨や筋肉が腫れて痛み、皮下出血しますが、歩行は可能な場合が多いでしょう。

 

アイシングと弾力包帯での圧迫固定をして、足を心臓より高く保ち安静にしてください。

消炎鎮痛剤(飲み薬、貼り薬、塗り薬)の使用も、痛みの緩和に有効です。

痛みや腫れが悪化したり、すねの骨を指で叩いたり、かかとをすねに向けて押して痛みがあれば、骨折が疑われるので整形外科を受診しましょう。

 

ケガをした覚えがないのに、ランニングやジャンプで足のすねが痛いときは?

ケガをした覚えがないのに、ランニングやジャンプで足のすねが痛いときは、新入生や運動初心者が受傷しやすい「シンスプリント」、もしくは「脛骨疲労骨折」が疑われます。

 

すねの内側が痛いシンスプリントは、中高年も要注意

シンスプリントは、中・高校生の新人選手が、走る競技で受傷することが多い、すねの内側(中央~下1/3)が痛む疾患です。

中・長距離走、サッカーや野球、バスケットやバレーボール、エアロビクスなどの選手や愛好者に好発します。

また、昨今のジョギングブームで増えた、中高年のランナーにも多発しています。

 

すねの内側下部で、脛骨の後方が足首を伸ばす筋肉に引っ張られ、「骨膜」が炎症をおこして痛むと考えられています。

筋肉疲労や加齢により、下腿の筋肉が硬くなり柔軟性がなくなると、受傷のリスクが高くなるでしょう。

 

運動初心者の筋力不足や運動に適さない靴、慣れない路面や床からの衝撃、かかとが外側にねじれていたり、偏平足などが要因となります。

内くるぶしの上で、12~20cmほどの部位が腫れて、指で押したときや運動時に痛みます。

初期のすねの痛みは、ウォーミングアップで消えますが、やがて運動中ずっと痛むようになり、ついには日常生活にも支障がでてきます。

 

治療は運動量の制限と練習後のアイシング、消炎鎮痛剤(貼り薬や塗り薬)や足底板(靴の中敷き)の使用、そして筋トレとストレッチです。

急性期は運動を中止しますが、早期から患部に負担をかけない筋トレ(水泳や自転車)やストレッチのリハビリを開始します。

圧痛がなくなったら、ウォーキングから始め、徐々にジョギング、ランニングを再開しましょう。





オーバートレーニングを避け、コンディション管理の徹底が、再発防止になります。

特に中高年のランナーは、下腿の筋力低下や疲労の蓄積で、シンスプリントを発症しやすいので、体力に応じた運動量を心がけましょう。

 

伸縮性のテーピングも、足のすねの痛みを和らげ、シンスプリントの予防に役立ちます。

テープは、ドラッグストアなどで入手できるので、貼り方さえ覚えてしまえば、とても有効なセルフケアとなるでしょう。

 

貼り方は、コチラの動画を参考にしてください。

※軽症例:ピップスポーツ簡単テーピング

 

※重症例:バトルウィンテーピング巻き方

 

 

すねの骨が痛い!脛骨疲労骨折

脛骨疲労骨折は、スポーツなどで、すねにケガをした覚えがないのに、すねの骨に慢性的な痛みがでてきます。

やがて、すねが腫れて痛み、骨折部を叩いたり、押すと痛みが強くなります。

 

軽度の疲労骨折では、運動時や運動後は痛みますが、日常生活では痛くありません。

しかし、治療しないで悪化させると痛みが増し、さらに骨がずれると歩けなくなり、治りにくい場合は手術の適応になってしまいます。

 

また、すねの外側の腓骨もランニングやジャンプで疲労骨折をおこしますが、腓骨には体重の負荷がかからないので、こちらは安静と固定などで治癒しやすい骨折です。

 

脛骨疲労骨折は、すねの骨に小さな力が繰り返し加わった結果、ひびが入ったり骨折して痛みます。

ちなみに脚では、足の甲(中足骨)や脛骨、腓骨に好発します。

スポーツで、短期間に過度なレーニンングを行って受傷することが多いでしょう。

 

急に運動量が増える、中・高・大学校入学直後の部活は要注意です。

体力や技術が伴わない練習、体に合わない靴や環境(グランドや床)などが引き金になるでしょう。

骨に付く筋肉に繰り返し引っ張られたり、筋疲労で骨に負担がかかって骨折に至ります。

 

脛骨を3等分したとき、上部は走る競技、中央は跳ぶ競技、下部はあらゆる競技で最も骨折しやすい部位です。

X線で検査しますが、写らないときは数週間後に再撮影するか、MRI検査などで診断します。

早期の治療は安静のみ(固定不要)で治癒しますが、的確なコンディション管理が可能であれば、練習を継続しながらの治療もできるので、担当医とよく相談しましょう。

 

ストレッチを中心のウォーミングアップとクールダウン、運動直後のアイシングが重要です。

タンパク質の不足やリンの過剰摂取(加工食品の添加物など)、女性ホルモンの乱れなどで骨が弱くなると、疲労骨折のリスクが高くなるのでご注意ください。




シンスプリントと脛骨疲労骨折の見分け方は?

運動により、すねが痛むシンスプリント脛骨疲労骨折は、受傷原因や患者の年齢など共通点が多いので、鑑別が困難な場合があります。

 

どちらの疾患も、走る・跳ぶ競技で受傷しやすく、年齢は、男子18歳、女子16歳が一番多いとされています。

骨折はX線で診断しますが、疲労骨折の場合、初期には写らないこともしばしば。

 

両疾患の違いは、シンスプリントが、すねの内側の下部に縦長に痛みがでるのに対して、脛骨疲労骨折は、すねの骨がピンポイントに痛みます。

痛みが軽い場合は、どちらも運動量を制限して、アイシングや消炎鎮痛剤で様子をみてもよいでしょう。

 

ただし、骨の上を指先で軽く叩いて、ひびく痛みがあれば、骨折が疑われるので、整形外科を受診してください。

競技を継続したいスポーツ選手は、近隣のスポーツ専門医での相談をおすすめします。

 

※スポーツ専門の整形外科はコチラ

日本整形外科スポーツ医学会 スポーツ医名簿 http://www.jossm.or.jp/meibo/index.php

日本整形外科学会認定スポーツ医名簿 https://www.joa.or.jp/search_doctor.html

 

何もしていないのに、突然足のすねが痛む

何もしていないのに、突然足のすねが痛む場合は、血管の病気や感染症、腫瘍が疑われます。

 

すねの痛みや麻痺がヒドイ場合

すねの痛みや麻痺がヒドイ場合、血栓(血の塊)が脚の動脈に詰まる「下肢急性動脈閉塞症」が考えられます。

突然脚の血行が途絶えるので、すねに痛みや痺れがあらわれ、冷たく青白くあるいは紫色になります。

 

感覚や運動の麻痺がみられたら、迅速な処置が必要で、6時間以内に血流を再開させないと、下肢切断のリスクが高まると言われています。

治療は血栓の除去ですが、カテーテルによるバルーン拡張やステント留置で、血管を拡げる治療が行われることもあります。

心臓に持病のある人がなりやすいので、普段から食事と運動に配慮し、水分の補給に努めましょう。




すねの痛みや腫れがヒドイ場合

すねの痛みや腫れがヒドイ場合、血栓(血の塊)が脚の静脈に詰まる「深部静脈血栓症」が疑われます。

すねやふくらはぎ、太ももが急に腫れて痛み、熱感をともないます。

脚の血栓がはがれて肺の動脈に詰まると、「急性肺血栓塞栓症」を発症し、突然の胸痛や呼吸困難をおこし命の危険があります。

 

血栓を溶かす注射やカテーテルによる治療が行われます。

エコノミークラス症候群とも呼ばれる疾患なので、長時間同じ姿勢でいる時は、足首をよく動かしたり、水分を充分に補給し予防してください。

 

※血管の専門医はコチラ

日本血管外科学会認定血管内治療医一覧  http://www.jsvs.org/ja/certified_physician/nintei/

 

皮膚の傷から細菌感染して、皮膚の下でブドウ球菌や溶血性連鎖球菌が繁殖する「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」も考えられます。

足からすねにかけて、赤く腫れて痛く熱感が生じ、微熱や倦怠感を伴うこともあります。

安静をとり、皮膚科を受診して、抗生物質の点滴や飲み薬を1週間ほど続ける治療が一般的でしょう。

 

若年者のすねの腫れと痛みが長びく

若年者のすねの腫れと痛みが長びく場合には、10歳代に好発する、すねの上部の骨のがん「悪性骨腫瘍」が疑われることがあります。

X線やMRIなどで検査し、化学療法(抗癌剤)や手術で治療します。

安静時や夜間にすねの上部が痛み、消炎鎮痛剤で1ヶ月以上治療しても症状が改善せず、悪化するときは整形外科を受診してください。

 

歩くと足のすねが痛く、休むとまた歩ける

中高年が患う「腰部脊柱管狭窄症」「閉塞性動脈硬化症」は、歩くとすねが痛む疾患です。

 

すねの痛みが、かがんで休むと和らぐ

すねの痛みがかがんで休むと和らぐという方は、腰の神経の通り道が狭くなり、お尻や脚が痛む「腰部脊柱管狭窄症」が考えられます。

少し歩くと、お尻太ももふくらはぎ・すねに痛みや痺れが出ますが、前にかがんで休むと、また歩けます。

 

腰の骨が変形したり、椎間板がつぶれたり、靭帯が厚くなったりして、神経が圧迫されて発症します。

整形外科を受診し、薬物療法や理学療法、ブロック注射などで治療しますが、日常生活に支障があれば手術が検討されるでしょう。

 

※腰部脊柱管狭窄症の詳細は、こちらの記事も参考にしてください。
「腰部脊柱管狭窄症の症状と原因、治療について徹底解説!」
https://lifehack-analyzer.com/yobusekichukankyosakusho/

 

すねの痛みが、どの姿勢で休んでも和らぐ

すねの痛みが、どの姿勢で休んでも和らぐ場合は、足の血管が動脈硬化のため、狭くなったり詰まる「閉塞性動脈硬化症」が考えられます。

少し歩くと、すねやふくらはぎ、お尻や太ももなどに、痛みや倦怠感が生じ歩けなくなります。

そして、体勢に関係なく10分ほど休むと症状が消えるといった状態が、一定の距離でほぼ毎回おこるでしょう。

血流をよくする薬物療法や運動療法で治療しますが、効果がない場合は、カテーテル治療やバイパス手術が検討されます。

 

筋肉疲労でも、歩くとすねが痛みます

歩きすぎや立ちっぱなしでも、足のすねの筋肉が痛み、休むと楽になります。

筋肉痛は、使い過ぎが原因なので、なるべく負担を減らし、休息と入浴、マッサージやストレッチで対処しましょう。

 

筋力が低下していても、筋疲労をおこして、すねが痛みますので、筋肉トレーニングが有効となります。

ウォーキングやスクワットを体力に合わせて、最初は無理せず始めてください。

またご高齢者は、安全な場所につかまって、つま先立ちやかかと立ち、膝の軽い屈伸運動や片足立ちなどを、ゆっくりと痛くない程度に行いましょう。

 

足首や膝、股関節などに痛みのある人は脚をかばって、足首を固定したロボットのような歩き方になるので、下腿の筋肉に負担がかかり、すねやふくらはぎが痛みます。

脚の関節に不調を感じたら、整形外科を受診して適切な治療を受けましょう。

 

また、重心がかかとに掛かり、つま先が浮いてしまう人や、サンダルやスリッパで歩くことが多い人も、足のすねが痛くなるのでご注意ください。

足首や足指を曲げ伸ばしするストレッチと、足裏のアーチを保つための足指の運動(グーチョキパー体操や床のタオルつかみ)が有効ですよ。




足のすねの突然の痛みやしつこい痛みは、まず整形外科へ

 

足のすねは、ぶつけるととても痛いですし、ランニングやジャンプの競技でも痛くなりやすいです。

また、思い当たる原因がなくても、腫れて痛くなることがあり、病院に行こうか迷うことも多いでしょう。

ケガやスポーツですねを傷めても、安静をとれば楽になり、時間の経過と共に痛みや腫れが軽くなっていくようでしたら、様子を見てもよいかもしれません。

 

しかし、足のすねに突然の腫れや痛みが生じ、安静にしていても痛みが徐々に強くなる場合は、なるべく早く病院に行ってください。

また、しつこい痛みが改善することなく1ヵ月以上続き、特に寝ているときにすねが痛む場合も要注意です。

まずは、整形外科を受診し、必要に応じて専門医を紹介してもらうことをおすすめします。










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