朝おきたら、足の親指のつけ根が腫れて、すごく痛い!
ぶつけたり、捻ったおぼえがないのに……
もしかしたら、その痛みは痛風発作かもしれません。
全国に痛風患者は数十万人いるとされ、こじらせると、腎不全になることもある、こわい病気です。
予防のためにも、関節に激しい痛みをおこす「痛風」の症状と原因、対策法などを知っておきましょう。
目次
血中の尿酸値が高くなると、痛風発作がおきます

長期間、血液中の尿酸値が高い状態(高尿酸血症)が続くと、突然足の親指のつけ根などが赤く腫れて、激しく痛みだします。
風が吹くだけで関節が痛むので、痛風と呼ばれ、20歳以降の男性に多くみられます。
女性ホルモンには、尿酸の排泄を促す作用があるので、女性の痛風患者は少ないですが、閉経後は男女差が小さくなります。
何らかの原因で、尿酸が血中に溶けきれないと、結晶化して尿酸塩となり、関節を包む袋の内側などに沈着。
この尿酸結晶は、体にとっては異物なので、白血球が攻撃し、強い炎症がおきた結果、激しい痛みが生じるといわれています。
突然の痛みを痛風発作といい、7~10日ほど続きますが、やがて自然におさまり、痛くなくなるでしょう。
血清尿酸値 7.0mg/dl以上が数年間続くと、痛風を発症するとされています。
足の親指以外の関節も、痛くなることが
痛風発作が一時治まっても、高尿酸血症を放置すると、やがて痛風発作を繰り返すようになってしまいます。
発作がおきる間隔が狭くなって、指以外の関節が腫れて痛くなることもあります。
ひどくなると足や手の関節、足の甲やアキレス腱、膝の関節などにおよぶでしょう。
低温になると尿酸が結晶化しやすいので、冷える手足に発作がおきやすいです。
関節の痛み以外の症状や合併症は?
尿酸が皮膚の下にたまると、結晶化してコブのような「痛風結節(つうふうけっせつ)」ができます。
大きさは、米粒大からりんごくらいまで、最初は柔らかく、だんだん硬くなるでしょう。
手首や足首、肘や膝の関節、耳たぶやアキレス腱などに出来やすいです。
尿酸値が高い状態が続くと、合併症がおきやすくなります。
尿路結石や腎不全、狭心症や心筋梗塞、脳出血や脳梗塞などです。
また、生活習慣病(肥満、高血圧、高脂血症など)も合併するでしょう。
その暴飲暴食が痛風の原因になるかも?

生活習慣や体質により尿酸が増えすぎたり、尿や汗や便から排出されにくいと、尿酸が体内にたまります。
肉料理や海産物の過剰摂取は、痛風を増やします。
食生活の欧米化や運動不足などによる肥満が、尿酸値に影響するとされています。
肥満指数(BMI)が上がると、高尿酸血症にかかる人が増えるので、過食には注意しましょう。
アルコールが体内で分解されるとき、尿酸が作られて蓄積されるので、尿酸値があがります。
尿酸のもとになるプリン体は、ビールに最も多く含まれているので、飲みすぎないようにしましょう。
ちなみに、蒸留酒は痛風を少し増やし、ワインは少し減らすそうです。
ストレスや激しい運動は、尿酸値を上げるといわれています。
多量に汗をかいたり、下痢をしたときは、脱水により血液が濃縮されて、尿酸値が高くなってしまいます。
また、腎臓から尿酸を排出する機能の低下、降圧利尿薬や喘息、結核などの治療薬でも尿酸値が上昇するでしょう。
近年、尿酸値に影響を与える遺伝子の働きが解ってきました。
肝臓や腸管から、尿酸を排出する作用に関与する遺伝子の、変異が発見されたそうです。
痛風の治療薬の開発や、予防などの研究が、すすむことが期待されますね。
痛風は血液検査と症状から診断可能です

痛風発作中の関節の中に、尿酸結晶があれば診断は確定されます。
しかし、激しく痛む関節に注射針を刺す検査は、患者さんにとっては、かなりの負担となります。
通常、専門医においては、血液検査と痛風特有の症状から、診断可能とされています。
以前から血清尿酸値の高い男性が、一つの関節で急性の炎症を繰り返す場合は、診断が容易でしょう。
他の疾患との鑑別を主な目的として、X線撮影などの検査がおこなわれます。
また、関節が赤く腫れて激しく痛むという痛風の特徴は、関節リウマチとの区別に有用です。
痛風と間違えやすい病気は多数あるので、専門医の正確な診断が必要です。
痛風と間違えやすい病気は外反母趾・変形性関節症・蜂窩織炎(ほうかしきえん)・腰椎の変形に伴う足の痛み・偽痛風・関節リウマチなどです。
痛風はお薬で治療します
痛風発作の症状を和らげる薬と、尿酸値を下げる薬で治療します。
発作時は、患部を心臓より高い位置に上げて冷やし、関節の安静を保ちます。
発作の初期や予兆があるとき、発作の鎮静化には、「コルヒチン」が有効です。
非ステロイド系抗炎症薬や、副腎皮質ストロイド薬で、炎症を抑えて痛みを鎮めます。
ステロイドの静脈注射や、局所麻酔剤を混合したステロイド関節内注入も有効とされています。
尿酸値を下げるために、尿酸の産生を抑える薬と、排泄を促す薬を使用します。
また、尿酸を溶けやすくして、尿路結石を予防する薬もあります。
痛風発作が治まったら、尿酸値を下げる薬を服用するか検討しますが、長期間使用することになるので、担当医とよく相談をして、慎重に判断してください。
食事療法で痛風を予防しましょう

食事療法として、「1日400mgを目安にしたプリン体の摂取制限」を生活指導することになっています。(高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン2012)
食事に含まれるプリン体は、代謝により最後は尿酸になります。
プリン体の多い食品や飲料を多くとれば、痛風発症のリスクは高くなってしまいます。
肉や海産物の多量摂取は痛風を増やし、野菜や乳製品は減らすとされています。
また、お酒を毎日飲む人は、痛風のリスクが2倍になると言われています。
レバー類(210~320mg/100g)、白子(300mg/100g)、エビ・イワシ・カツオ(210~270mg/100g)などは、プリン体含有量が多い食品です。
また、蒸留酒はプリン体が少なく、醸造酒には多いようです。
特に、地ビール(19~55mg/330ml)、紹興酒(21mg/180ml)には多く含まれています。
毎日ビールを1缶飲む人は、6年間で血清尿酸値が1mg/dl近く上がるとの報告もありますで、要注意です。
食事療法と共に、適度な運動は痛風の予防に効果的です。
ただ、運動不足の人が、急に激しい運動をすると、筋肉が傷ついて尿酸が増え、痛風発作がおきることがあるので、ご注意ください。
また、脱水になりやすい季節は、血中の尿酸の濃度が上がりやすいので、水分補給に配慮しましょう。
運動療法とツボ治療で痛風のセルフケア

ウォーキングや体操などの、軽い有酸素運動がすすめられます。
肥満改善とストレス解消に有効なので、尿酸値のコントロールが期待できるでしょう。
腎臓の働きをよくして、痛風の症状を和らげるツボをご紹介します。
発作が治まってから、担当医とご相談のうえ、お試しください。
気持ちよい程度の力で、ゆっくりと3~5秒間押して、ゆっくり離すを数回繰り返します。
痛みが強くなるようでしたら、中止してください。
- 腎兪(じんゆ)……肘がわき腹にあたる位置の高さの背骨(第2腰椎)から、指幅2本外側
- 三陰交(さんいんこう)……足の内くるぶしから指幅4本上にある骨のキワ
- 足三里(あしさんり)…… 膝の皿の外側の下から、指幅4本下がった、すねのキワ
- 太谿(たいけい)……足の内くるぶしのすぐ後、アキレス腱の手前のくぼみ
- 照海(しょうかい)……足の内くるぶしのから指幅1本下のくぼみ
- 崑崙(こんろん)……足の外くるぶしのすぐ後、アキレス腱の手前のくぼみ
- 湧泉(ゆうせん)……足の指を全部曲げた時にできる足裏のくぼみ、つま先からかかとまでの3分の1くらいの位置
最後に
激しい痛みがつらい痛風発作ですが、放置したための様々な合併症も怖いですね。
突然、関節が赤く腫れて痛むときは、我慢せず病院を受診しましょう。
できれば、痛風の専門医に診てもらうことを、おすすめします。
※日本痛風・核酸代謝学会認定「痛風医」名簿 http://www.tukaku.jp/society/list.html
※痛風協力医療機関 http://www.tufu.or.jp/medical_institution/
痛風発作は一度おさまっても、1年以内には、また同様の発作がおきやすく、繰り返しているうちに、重症の慢性痛風になってしまうことも多いです。
正確な診断と適切な治療、そして生活習慣の改善がとても大切な疾患です。
尿酸値が6以下で、関節の尿酸結晶が溶け出すそうなので、尿酸値のコントロールは重要ですね。
「暴飲暴食を避け、腹八分で栄養バランスのよい食生活、適度な運動」が、生活指導の基本になります。
ただ、厳格な食事制限は長続きしないので、美味しい物も適量食べて、ストレスを減らす生活がおすすめです。
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