多くの大人が絵本に求めている根本的なものは、「ぬくもり」ではないでしょうか。
心温まるような素敵な物語が、紙から直接伝わってくる感じ。それはまさに、絵本ならではの読後感といえるかもしれません。
優しい色使いで描かれたかわいい絵本は、眺めているだけでも、なんだかほっとします。
それに素敵なストーリーがついていたなら、尚更です。
そこで今回は、かわいいだけではない、ストーリー性のしっかりした「心温まる絵本」を紹介していきます。
子供はもちろん、大人の方にもおすすめです。
『しましまかしてください』 林なつこ (著)
ある日、ゾウがハチに言います。
「その しましま、ぼくに かしてくれませんか」
「いいけど、ちゃんと かえしてね」
ハチは快く貸してくれますが、体の大きなゾウには、まだまだ全然足りません。長い鼻先に、ほんのちょっぴり、しましまがついただけです。
そこでゾウは、サルやトラにも声をかけていきます。
「その しましま、ぼくに かしてくれませんか……」
なぜゾウは、そんなに“しましま”を欲しがるのでしょうか。その理由はとってもシンプル!
実に微笑ましい、心温まる素敵なお話です。かわいすぎて、身もだえしてしまうかもしれません。本当の友達とはなんなのか、じんわりと伝わってきます。
絵も非常に魅力的。のびのびとした力強さと遊び心があり、動物たちの愛嬌ある姿が、生き生きと描かれています。
『レモンちゃん』 さとう めぐみ (著)
レモンちゃんは、レモンの女の子。
一緒に遊ぶお友達を探そうと、「おいしい森」を歩いています。
早速、りんごちゃん、ももちゃん、バナナくんをみつけますが、「すっぱいヤツは仲間じゃない!」と言われ、遊んでもらえません。
自分はくだものの仲間だと思っていたのに、拒絶されがっかりです。
今度は野菜たちに声をかけますが、「ご飯のおかずで見たことがない!」と、ここでも冷たい返事が返ってくるばかり……。
非常にかわいらしい絵柄なので、一見、ふんわりしたお話のように思うかもしれませんが、 実は道徳的テーマがしっかりと組み込まれた、内容の濃い絵本です。
「仲間はずれ」の本質がユーモアを交えてわかりやすく描かれ、「個性」を尊重することの大切さが、嫌味なくストレートに伝わってきます。
お話の舞台となっているのが「おいしい森」ということで、イチゴやパプリカの草花、キウイのちょうちょなど、絵に遊び心があり、描写もとっても丁寧です。
戦隊ヒーロー的なお話の構成になっているところも見事! 子供から大人まで、世代を問わず楽しめます。
『こぐまになったピーナ』 PEIACO (著)
くまが大好きなピーナ。
おかあさんからとっておきのプレゼントをもらいます。それはなんと、くまの着ぐるみ! さっそく着てみると、毛むくじゃらでまるで本物のこぐまのようです。
「これなら、くまとおともだちになれそう!」
そう思ったピーナは、おかあさんに内緒で家の裏の森へと入っていきます。
すっかり森の奥までやってきました。そこで出会ったのが、迷子になっている本物のこぐまです。
着ぐるみのピーナがドキドキしながら一緒にママを探してあげていると、あらまあびっくり! たくさんのくまたちが、みんなでお茶会をしているではありませんか……!
「着ぐるみのくま」と「本物のくま」の姿が、それぞれきちんと描き分けられています。
ピーナが扮するくまは「着ぐるみ」なので表情が変わりませんが、それとは対照的に、本物のくまたちはとっても表情豊か。
たくさんのくまたちが、みんなで一斉にびっくり仰天している姿は、思わず笑ってしまうほどかわいいです。
『わすれもの』 豊福まきこ (著)
「ひつじ」の小さなぬいぐるみが、公園のベンチでポツンとしています。
ずっとずっと大切にされていたのに、どうやら「わすれもの」になってしまったようなのです。
ひつじはカラスにつつかれ、ベンチから転げ落ちてしまいます。
ノラ猫の親子に助けてもらい、ほっとしたのもつかの間、「あんた、捨てられたのかい?」 ママ猫に突然そう聞かれ、ひつじは思わずびっくり!
必死で弁明するひつじの言葉は微笑ましくもあり、ママ猫の身の上を思うと、ちょっと切なく感じられる部分かもしれません。
迎えが来てくれるのを、ベンチの上でじっと待っている「ひつじ」のぬいぐるみ。
まさに絵本ならではの温かな世界観です。
優しい絵のタッチと見事な構図で、「わすれもの」になってしまったひつじの心情が、非常に丁寧に描かれています。
『とりこしふくろう』 滑川 まい (著)
雨降る夜のこと。ふくろうのおじいちゃんが、迷子のひよこをみつけます。
自分の家へとつれて帰ってきたものの、このおじいちゃん、実はとってもとっても心配性。
ひよこはやがて「にわとり」になる。「にわとり」はとっても早起きだ。
朝の苦手な自分にちゃんと世話ができるだろうか。こまった こまった たいへんだ!
心配でたまらなくなったおじいちゃん。それならば夜のうちに準備しておこうと、慌しく動きまわりますが……。
短めの文章が、転げるように続いていきます。
心配性のおじいちゃんを表現するには、ぴったりの言葉のリズムです。
洋服やおもちゃ、おやつなど、さまざまなモチーフが、優しい色合いで丁寧に描かれています。
絵の雰囲気通りの微笑ましい結末に、思わずにっこりしてしまうことでしょう。
【まとめ】
心温まる絵本かどうかは、画風による第一印象も大きく影響します。
あらすじをあまり調べたりせずに、表紙の絵だけを見て、直感的に選んでみるのもおすすめです。
お気に入りとなる1冊は、そうやって出会うことのほうが多いかもしれません。
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