あぐらで座りにくくなった、起床時足をつくと、脚のつけ根に違和感や痛みがある……
そんな症状が出た場合は、もしかしたら変形性股関節症の初期症状かもしれません。
あなたが中高年の女性で、体重がオーバー気味であれば、よりリスクが高くなります。
変形性股関節症の患者数は、約300万人ともいわれています。
今回は、股関節の痛みの原因、変形股関節症の症状や治療、予防法などをご紹介します。
股関節の痛みの原因疾患
股関節の疾患は女性に多く、子供の時の病気や発育障害の後遺症が原因の80%をしめるそうです。
まずは、股関節に痛みを起こす、「変形性股関節症」以外の疾患をあげていきましょう。
・発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)
検診やオムツ替えの時、片脚の開きが悪いなどで発見、X線や超音波検査で診断されます。
出生数の0.2%で発症、脚を伸ばした状態でオムツをしたり、おんぶや抱っこ(スリング)により、脱臼するといわれています。
治療は装具療法や牽引療法、約5%が手術適応になります。
・臼蓋形成不全(きゅがいけいせいふぜん)
日本人成人女性の2~7%にみられ、変形性股関節症の原因の一つです。
股関節の骨盤側にある受け皿が浅い(かぶりが悪い)ために、股関節が不安定になりやすいです。
X線や超音波で診断されますが、予防が困難で、治療法も確立されていません。
・特発性大腿骨頭壊死症(とくはつせいだいたいこっとうえししょう)
急に生じる股関節の痛みが特徴、歩行障害をともない、腰やお尻、膝が痛み始めることもあるそうです。
太ももの骨の頭は血管が少ないため、血流障害により壊死し、骨がつぶれて痛くなります。
日本では年間約2,000人発症、原因は男性はアルコール多飲、女性はステロイド服用が関与するといわれています。
安静とお薬で症状が軽減する場合もありますが、進行したケースでは手術が検討されるでしょう。
ちなみに特発性とは、原因がはっきりしないという意味で、疾患の病名に使われます。
・大腿骨頚部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)
股関節を構成する大腿骨側の骨頭のすぐ下、細くなった部分を頚部とよびます。
外力が集中しやすい部位なので、骨粗鬆症の高齢者では、転倒や軽くひねった程度の弱い力でも骨折してしまいます。
脚のつけ根が痛くて、立ったり歩いたりできなくなります。
骨粗鬆症で骨がもろくなった高齢女性に多く(男女比 1:4)、年間10数万人が受傷するそうですよ。
骨のつきが悪く、血管を損傷すると骨頭が壊死する場合もあります。
治療は、患者さんの全身状態を検討のうえ、骨接合術や人工骨頭置換術などの手術が選択されるでしょう。
中高年女性の股関節痛の90%以上は、「変形性股関節症」が原因!
中高年女性の股関節痛の90%以上は『変形性股関節症』が原因といわれています。
そんな『変形性股関節症』についての症状や原因、治療、予防についてご紹介します。
変形性股関節症の症状は?
初期症状は「歩き始め、脚の付け根が痛い」から始まります。
初期は、立ち上がりや歩き出す時など、動作開始時に痛み、動いているうちに痛みは軽減していきます。
ちなみに痛む部位は、太ももの前や横が多く、後ろ側は少ないようです。
やがて脚の付け根の痛みが強くなってきて、夜中痛くて目が覚めたり、痛みが続くといった症状がでてきます。
また、靴下の着脱や足の爪切り、正坐やしゃがむ姿勢がつらくなり、左右に揺れて歩くことも。
階段の昇降に手すりが必要になり、家事や仕事に支障がでるでしょう。
病状が悪化すると関節の変形が進み、股関節が伸びにくい、つま先が外を向く、脚の長さの左右差などの症状があらわれます。
原因は小児期の関節の状態と、生活習慣
『変形性股関節症』は股関節が不安定になるような疾患(先天性股関節脱臼の既往、臼蓋形成不全症など)やケガが主な原因になります。
親族に股関節を患った方がいれば、臼蓋形成不全症のリスクが高くなります。
また、体重が増加したり筋力が低下すると、関節にかかる負荷が増加します。
仕事や家事、スポーツや日常生活動作で、股関節に長年負担をかけ続けると、加齢とともに軟骨がすり減ってしまい関節痛が起きる原因となります。
『変形性股関節症』は整形外科を受診し、保存療法に取り組みましょう
整形外科では、問診のあと運動痛や可動域を診て、X線検査で診断します。必要なら、CTやMRI検査が追加されるでしょう。
まずは股関節の痛みを和らげて、進行を遅らせるために、手術以外の保存療法が選択されます。
温熱療法は、股関節の周りの血行を促し、筋肉を和らげて痛みを軽減させます。
動く範囲を広げるストレッチや、股関節を支える筋肉を強化する筋肉トレーニングなどの運動療法は、進行を遅らせる効果が期待できます。
きつい運動のほうが効くと勘違いされている患者さんが多いようですが、逆効果となりますので、無理は禁物です。
運動後や翌日、痛みが強くなるようでしたら、必ず運動量を減らしてください。
急性期や痛みが激しい時は、消炎鎮痛剤(内服・注射・湿布など)が処方されます。
痛みを抑えるだけでなく、関節の炎症を改善してくれるので、内服薬は用法用量を守って飲みきってください。
また、お薬の作用で痛みを感じなくなっても、無理な運動や作業は、症状を悪化させることがあるので厳禁です。
治療と同時に、日常生活で股関節に負担をかけないように気を付けましょう。
進行すれば、手術も治療の選択肢に
保存療法で症状が改善しなかったり、痛みが激しく日常生活動作が不自由なときは、手術が検討されるでしょう。
手術には、関節を温存する方法と、人工関節に置き換える人工関節置換術などがあります。
股関節鏡手術は、関節内の痛んだ部分を取り除くなどの処置で、痛みを和らげ関節の動きをよくします。
約1cmの孔を2~3か所切開、手術時間は2~3時間、術後2~3日で歩行可能、入院期間は2~4週間。
骨切り術は、関節の形を整える手術で、軟骨への負担を減らします。
手術時間は約2時間、入院期間は1~2ヵ月で、変形性膝関節症の初期の患者さんなどが対象となります。
人工股関節置換術の手術時間は1~2時間、入院期間は2週間~1ヵ月、手術の翌日から歩けるようになる方が多いです。
人工股関節の耐用年数は約20~30年なので、60歳以上の患者さんが対象といわれています。
術後の脱臼や感染、骨粗しょう症患者さんの転倒による骨折などに注意が必要です。
『変形性股関節症』予防は生活習慣と運動療法
椅子やベッドなどの洋式の生活に切り替えて、股関節への負担を減らしましょう。
仕事や家事もできるだけ無理をせず、痛みを感じる動作や姿勢は避けてください。
体重管理はもちろん、立ち上がり時や階段では手すりを使い負荷をかけないようにします。
杖やシルバーカーなどでの歩行も検討してみてください。
筋力強化のため、水中歩行や水泳(平泳ぎ以外)を週2~3回がおすすめですが、無理は禁物です。
ウォーキングは痛くない速度で、10~15分間程度がよいでしょう。
『変形性股関節症』予防におすすめな3つの体操
- 仰向けで膝を立てて、両脚をゆっくりと開いたり閉じたりしましょう。痛くない範囲で、無理せず続けてください。片脚ずつでもよいです。
- 次に踵(かかと)をすらすように膝を曲げたり、伸ばしたりしてみて下さい。
- 腰かけて、ゆっくりの貧乏ゆすりや、膝の開閉運動も有効といわれています。
ながら運動でよいので、根気よく続けてみましょう。
股関節周りの筋肉を緩め、軟骨に栄養を与える関節液の循環をよくすることで、軟骨の再生を促す効果が期待できます。
股関節の変形を元にもどすのは困難ですが、変形が残っていても痛みを軽減させることは可能だと考えられています。
まとめ
人体最大の関節「股関節」には、床や椅子からの立ち上がり、階段の昇降などの動作で、とても大きな負荷がかかります。
こちらの記事で紹介した予防体操などを生活の一部に取り入れてみて下さい。
『変形性股関節症』は年齢とともに軟骨が痛んでしまった股関節に、日常生活で負担をかけ続けることで発症し、慢性的に経過して変形などの症状が進んでしまいます。
ただ、初期はお尻から脚にかけての違和感や倦怠感などの症状の場合が多いので、股関節の疾患と気付かず、見逃してしまうかもしれませんので注意が必要です。
坐骨神経痛や変形性膝関節症などとの鑑別も必要なので、異変に気が付いた場合は早めに整形外科を受診されることをおすすめします。
変形性股関節症の発症には、小児期の関節の状態が大きく関与しますので、なるべく早期に発見し治療にとりくむことが重要といえるでしょう。
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