1987年冬、イギリス─。
いわくつきの神秘の荒れ地「イルクリー・ムーア」で、その奇妙な誘拐事件は起きた。
元警官のカメラが捕らえたグレイ型エイリアンランの信憑性は?
その後、彼は本当にUFOに拉致されたのか?
伝説の未解決事件「イルクリー・ムーア事件」の全貌をお伝えしよう。
荒れ地(ムーアのルビ)の怪事件
エイリアンによる数ある誘拐事件のうち、もっとも奇妙なものの一つ。
それが、1987年の冬、イギリスのほぼ中央に位置するイングランドのヨークシャーで起きた「イルクリー・ムーア事件/Ilkey Moor Incident」だ。
この事件の唯一の証人にして主人公、元警官のフィリップ・スペンサー(Philip Spencer)によれば、1987年12月1日の早朝、荒野を歩いていた彼は、エイリアンに遭遇し、その写真を撮影したという。
その後、エイリアンを追跡するうちに、いつのまにか飛行物体に連れこまれ、気がつくと、またいつのまにか解放されていた…。
実際、イルクリー・ムーアはことのほか不気味な場所として知られている。
そこは、古代のストーン・サークルや、ケルト文化の痕跡とおぼしい奇妙な紋様が刻まれた巨石が点在する、霧と斜面と湿地からなる荒涼とした土地だ。
ここを奇妙な生き物が歩きまわっていたとか、真夜中にホバリングしている謎の光やUFOを目撃したとか、その種の噂は絶えたことがない。
もしかすると、そんな不思議の数々は、遠からぬ場所にあるメンウィズ・ヒル軍事基地─あの全世界的監視システム「エシュロン」を運用しているという─やリーズブラッドフォード空港となんらかの形で関係しているのかもしれない。
けれど、基地と空港がスペンサーの身に起きた信じられない出来事を説明してくれるわけではない。
元警官が出くわしたエイリアン
スペンサーは別の町で4年間、警官を務めた後、妻と子供とともに、彼女の実家があるヨークシャー地方に越してきた。
12月の朝まだきのことだった。
義理の父親の家に向かって歩きながら、彼は途中で、ムーアの光の芸術を撮影することにした。
そのために、弱い光をとらえるASA感度の高いフィルムを用意した。
また、霧の中で道を見失わない用心としてコンパスを携帯した。
人気のない荒地のあちこちで、写真のアングルを探していると、突然、彼は前方の岩山のスロープに不思議な存在を見いだした。
人間とは思えない奇妙な動きだった。
かといって獣とも思えない。
スペンサーに気づいたのか、その存在はあるジェスチャーをした。
「来るな」と言っているようにも思えた。
彼はその生き物に狙いをつけて、シャッターを切った。
その後、スペンサーは「衝動のようなものに駆り立てられて」、逃げだした謎の生物を追いかけた。
どうしてそんなことをしたのか、今となってはわからないと言う。
やがて、盛り上がったドームのついた空飛ぶ船がチラリと眼に入った。
が、それはすぐに上空に姿を消した。残念ながら、写真をとる暇はなかった。
奇妙な事実
ようやく興奮からさめた彼は、いちばん近い村に向かって歩きだした。
義理の父親の家に着くまでの30分ほどの間に、2つのことが明らかになった。
まず第1に、彼のコンパスは北のかわりになぜか南を指すようになっていた。
第2に、彼の時計は村のものより1時間遅れていた。
混乱したスペンサーは、頭にうずまく疑問をなんとかしようと、写真を現像するために、バスで最寄りの町に向かった。
はたして、その結果は?
そう、確かに、そこにはなにか生き物が写っていた。
子供のように小さい。
肌は青緑色をしていた。
その後、彼はUFO調査員のピーター・ハフに連絡をとりつけることに成功した。
ハフは最初、これが「よくある嘘臭い事件」だと考えた。
しかし、スペンサーに会うと、彼がしごくまっとうな人間で、エイリアンの写真に名声や富を求めていないことに気がついた。
ハフは徹底的な調査をはじめた。
こうして、スペンサーのフィルムは、プロの精査を受ける最初のケースになった。
エイリアンの画像
一番手にスペンサーの写真を見たのは、野生動物を専門とするカメラマンだった。
そこに写ったものが、これまでに知られている動物ではないことがまず、わかった。
それが動いているのか、静止しているのかは判断がつかなかった。
ただ、撮影地との対比から、エイリアンらしい存在の身長がおよそ137センチ(4フィート半)だと割り出せた。
写真は次に、ハムステッドにあるコダックの研究所に送られた。
分析の結果、エイリアンの像がオリジナルであって、合成されたものでないことが判明した。
とは言え、その生物が何であるかは依然、特定できなかった。
つづいて写真は、コンピュータ解析を受けるためにアメリカに送られた。
米国海軍の光学物理学者、ブルース・マッカビー博士は専門家の見解として次のように述べている。
- 「低光度という条件にあわせたフィルムの特性が、得られた像を粗いものにしてしまいました」
- 「私はこの事件が決定的なものになるのを心待ちにしていました。けれど悲しいことに、状況がそれを妨げています」
霧につつまれた、早朝の荒れ地での撮影のために良かれとしたことが、残念ながら裏目に出てしまった。
彼が撮った写真はぼやけていたのだ。
とは言え、そこに写った生き物は、基本的には小さなグレイと呼んでも良いものだった。
再び現れたエイリアン
さて、この事件でスペンサーが体験した、1時間ほどの奇妙なタイム・ロスは、どのようにとらえられるべきだろうか?
彼自身は「その間、宇宙船に連れこまれていたのだろう。そして、おそらく船の中では時間が止まっていた」と考えたようだ。
元警官の撮った謎の写真と、不思議な体験─。
時がたち、ひとびとがその記憶を半ば忘れかけようとしていた、事件から24年後の2011年。
ところが、再びこの土地で、岩山の間から下をのぞく2人のエイリアンの姿が撮影された。
スペンサーが写したものとは、目が大きいことなどから異なるタイプのようだが、これもまたグレイ型のエイリアンと見られている。
イギリスのほぼ中央部─イングランドのヨークシャーに広がる神秘の荒れ地「イルクリー・ムーア」…。
そこは、古代のストーン・サークルや、ケルト文化の痕跡とおぼしい、奇妙な紋様が刻まれた巨石が散らばる、霧と斜面と湿地からなる荒涼とした場所だ。
一体、エイリアンは、なにを好き好んでそんなさびしげな土地に姿を見せるのだろう?
できるものなら、いつの日か、その理由を尋ねてみたい。
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