世界的には超有名だが、ここ日本ではなぜか一般的な認知が低く、そればかりかマイナスなイメージでとらえられ不当な扱いを受けているように感じるミュージシャンやアーティストが大勢います。
一般的に人物の名前と顔が一致し、なおかつ曲もいくつか知っているアーティストはビートルズとマイケル・ジャクソンくらいかもしれません。
それ以外にもポピュラーミュージックの世界では歴史を作ったアーティストは数知れず。
もし、音楽好きを自称する人で名前や曲を知らない人がいるのであれば、これを機に是非魅力を知ってほしいアーティストをシリーズにてお伝えしていきたいと思います。
ファンクの帝王『ジェイムズ・ブラウン』
全てのダンスミュージックの元を作ったファンクの帝王であるジェイムズ・ブラウンは日本においてはカップヌードルのCMのインパクトやモチーフとされた映画による影響の為か、功績に反してあまり良いイメージで語られることが少ない偉大なアーティストです。
ファンクという確固たるジャンルを確立した1960年代後半から1970年代前半にかけてのアートワークはその後のブラックミュージックやロック、またディスコ、テクノ、ハウスなどのダンスミュージック全てにおいて彼の影響下であると断言しても過言ではないです。
そんな帝王ジェイムズ・ブラウンについての人気の無さの問題点と魅力についてお伝えしてみたいと思います。
『ジェイムズ・ブラウン』ゲロッパの人というコミカルなイメージ?
音楽好きの間ではJBと呼ばれ、2006年の死去後も国内外問わずいまだに最大のリスペクトを受け続けているジェイムズ・ブラウン。
ただ、ここ日本においてはイメージが少し違っており、音楽のことに疎い一定年齢層の方はテレビコマーシャルでのコミカルなイメージを持たれていることでしょう。
1992年に日清のカップヌードルのCMにてお茶の間の目に触れることとなったJB、彼の代表曲「SEX MACHINE」の中のフレーズ『GET UP』が日本人には『ゲロンパ』に聞こえるということからミソ味の商品にちなんで『ミソンパ』ともじって、楽曲をバックにコミカルな動きと共にセルフパロディとして映像化しました。
これによりインパクトの強いヴィジュアルとフレーズでミソンパの人として一般のパブリックイメージを確立。
さらに2003年の井筒和幸監督映画「ゲロッパ!」によって本人は未出演ですがコメディ映画作品の中でふんだんにJBの楽曲が使用されました。
これにより音楽的な歴史的貢献よりも、コミカルなイメージをさらに植え付ける結果になったのではないかと思います。
音楽で踊れるのはJBのおかげ
戦後アメリカのポピュラーミュージックにおいてはダンスミュージックとしての側面は持ち合わせていましたが、どちらかというと男女のコミュニケーションとしての意味合いが強く、個人で音楽に陶酔し一心不乱にダンスに没頭するような今のクラブミュージックに通じるダンスの定義を確立したのはジェイムズ・ブラウンといっても異論はないでしょう。
それまでのブルースやソウルに合った粘っこい部分を抽出し、ひたすら反復することによって生まれるグルーヴを楽曲としてリリースしたのが1964年の「Out Of Sight」で、これがFUNK(ファンク)という音楽スタイルの誕生の瞬間です。
その後JBのファンクの追及は1970年代後半まで続き、多くのヒット曲を世に送り出しています。
先述の「SEX MACHINE」もその時期の楽曲で、この曲を筆頭に数えきれない曲がいまだにヒップホップのトラックにサンプリングされまくっています。
収録時間の制限があるレコードではなくコンサートにおいては一つのフレーズをしつこいほどに反復することによって観客のダンスへの陶酔感が増し、この時代以降ライブコンサートで踊るのは当たり前というムーブメントを作り出したのもJBといえます。
この同じフレーズを反復するというのはその後打ち込みやエレクトリックなサウンドになりながらもテクノやハウスといったジャンルとして今のクラブミュージックシーンやEDMにも大きな影響を与えています。
今では洋楽、邦楽問わずライブでは観客も思い思いに踊るのは当たり前になっていますが、その風潮と共に踊れる音楽そのものの大元を作ったのがジェイムズ・ブラウンで、彼が帝王と呼ばれる所以となっています。
『ジェームズ・ブラウン』歴史的必聴アルバム3選
活動時期が50年以上に渡り、その間多くのレーベルに作品を残したり、不遇の時代も有ったり、また少々事件を起こして服役していたりなどあるのですが、やはりJBのことをあまり知らない人に聴いてほしいのは絶頂期のファンク時代1970年代前半頃の作品です。
オリジナルスタジオ盤、ライブ盤、編集盤合わせて無数に存在する作品の中から厳選して3作品をオススメしたいと思います。
・Sex Machine (1970年)
いかにもライブかのような観客の歓声をオーバーダブしたスタジオ音源と本当のライブ音源からなる代表的1枚。
ファンク誕生前からのスタイルとしていたソウルと、この時期人気が上がりだしたファンクをバランス良く収録した充実の内容です。
・Revolution Of Mind (1971年)
こちらはアポロ劇場での本当のライブ盤。
遅いバラード曲を少なくしセットリストのほとんどがファンクで構成されている最高傑作と名高い作品。
聴衆との一体感が音楽だけで伝わる歴史的名作。
・In The Jungle Groove (1986年編集)
ヒップホップのトラックにサンプリングされまくり、この時期低迷していたJBの人気を再確認させるきっかけになったサンプリング用ともいえるファンクばかりを集めた編集盤。
JBのファンクサウンドの神髄が味わえる至高の傑作です。
後世に影響を与えたJBファンク
JBから影響を受けたと公言するアーティストは多いのですが、そのサウンドに直接的にファンクの影響を感じられる有名人といえばやはりマイケル・ジャクソンとプリンスではないでしょうか。
またJAZZの大御所マイルス・デイビスも自伝において一時期JBのファンクサウンドを標榜していたような言葉も残しています。
もちろんファンクという音楽ジャンルはその後多くのフォロワーを生み、1970年代後半にはディスコというブームにも発展、そのディスコサウンドをロックに取り入れたデヴィッド・ボウイ「Let’s Dance」も時代の波に乗り世界的にヒットしました。
また80年代以降はヒップホップ勢によるサンプリングを通した再評価の時代を経てJB本人も精力的に死の直前まで第一線で活動していました。
90年代以降はファンクを取り入れたロックサウンドで世界的バンドになったレッドホットチリペッパーズや多くのオルタナティブロックバンドにとってファンクそのものもスタイルを変え新しいサウンドを生み出しています。
音楽好きのほとんどの人がJB本人や楽曲を知らなくてもいつのまにか色んなアーティストの背景に見え隠れするファンクテイストを通じてJBに間接的に触れていることでしょう。
これを機にさらにルーツを探求して本物のJBサウンドに触れ、彼のグルーヴの虜が増えてくれることを願うばかりです。
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