日本史の教科書で「大塩平八郎の乱」とほぼ同時期に学習する江戸時代の社会問題に米騒動があります。
米騒動はその事件を伝える絵とともにたった数行で片づけられてしまっていますが、この記事では米騒動についてわかりやすく、詳しく解説します。
米騒動は江戸時代以前にも度々起きていた
私たちが日本史を学習していたとき「米騒動」の文字が登場するのは江戸時代に入ってからです。
ところが米騒動はいついかなるときでも起こりうる社会問題で江戸時代以前にも度々起きていました。
江戸時代以前に起きた米騒動の一例をあげるとすれば、室町幕府第11代将軍足利義政(あしかがよしまさ)の正室日野富子(ひのとみこ)が米の買い占めを行って高値をつけて市場へ流すということを繰り返し、米の相場をつり上げて巨額の収入を得ていたスキャンダルがあります。
しかも日野富子が引き起こした米騒動は京都を長い間戦争の舞台とした応仁の乱の最中に起きた出来事です。
江戸時代に起きた米騒動
さてそれでは日本史の教科書にはたいていどこの出版社も掲載している江戸時代の米騒動についてわかりやすく説明しましょう。
江戸時代の米騒動では米問屋などの商人が米の買い占めを行って高値で販売し、米の相場をつり上げて米の価格を急高騰させたことに起因します。
米の価格が急激に高騰したことで米の入手が困難になり、暴徒と化した町人が米を独占販売していた商人の蔵や邸宅に押し入り深刻な社会問題へと発展した出来事です。
つまり米騒動とは商人が米を買い占め高値で独占販売したことによって米相場が急激に高騰し、米を使用する業種の人々や一般庶民を困らせた騒動です。
教科書ではたった数行で終わる米騒動だが?
私たちが日本史の授業で米騒動を学習したとき教科書にはたった数行の記述しかなく、一般的な認識としては「お米が高くなって買いづらくなった」という結果しか読み取れません。
米騒動をもっと深く掘り下げてみると事態の深刻さがわかります。
次からは米騒動の発端となる米の買い占め、米の独占販売が社会や人々にどのような影響を及ぼしていたのかを示します。
米を米問屋や商人が買い占める
↓
米の供給率が下がる(出回らなくなる)
↓
米を米問屋や商人が独占販売する
↓
米は独占販売している業者でしか手に入らないためみんな同じ業者から購入する
↓
米を独占販売する業者が儲かる
↓
米に高値がついても主食なのでみんな購入するので価格をさらに上げる
↓
米を独占販売している業者がさらに儲かる
↓
消費者の家計を圧迫する
以上のような米の独占販売をする業者だけが一人勝ちするシステムが確立し、半永久的に米の相場は上昇します。
結果として米を提供するサービスの賃金、米を原料として加工した商品の物価が連動して高騰し、米の購入や仕入れが困難となる負のスパイラルが続きます。
米騒動の影響は米だけにとどまらない?
さらに視野を広げてみるとどうでしょうか?
例えばお寿司屋さんを例に考えてみましょう、お寿司には当然、シャリ(お米)が必要です。
シャリがなければお寿司は握れないので、お寿司屋さんは常に大量のお米を仕入れています。
昨日まで1キロあたり900円前後で仕入れることができていた同じ銘柄のお米が今日は1200円で売られています。
単純にお米の原価は前日比の35%増しです。
となると一皿あたり200円で提供していたお寿司も最低でも270円で提供しなければお米が高騰した分をカバーできません。
一般成人男性の平均的なお寿司の消費量は20皿程度なので合計金額が4000円だったのが、次の日には5400円になっていたら顧客はどう感じるでしょうか?
「ぼったくりだ」と文句を言われるかも知れません。
お店の前で立ち止まり同じ量で1000円以上差があるなら食べなくてもいいかなと踵を返す者もいるはずです。
お米の値段が高騰したことによって顧客の数が減ると売り上げも減ります。
お米の仕入れる量を制限する措置をとっても顧客が増えることはありません。
仮にお米の質を落として安いお米を仕入れようとするとお寿司の味が落ちてしまい、信用を失う恐れもあります。
この状況が半永久的に続くとお店の経営は立ち行かなくなるのは必至です。
顧客も日常的に消費するものの値段が高騰するので節約しようとするのはごくごく当たり前のことです。
この流れが続くと寿司屋は店じまいをしなければならなくなるかもしれません。
そしてこの寿司屋の店主は米だけでなく、その他の生活必需品や嗜好品なども節約しなければ生活できなくなるでしょう。
このような事が連鎖的に起きれば、貧乏になる人が増えるので米関連以外のモノも売れなくなっていきます。そして景気が悪くなっていきます。
このように、米のような必需品が独占販売され、価格が高騰するようなことがあると、単純に米が買いにくくなるというだけでなく、経済全体に影響していくのです。
まとめ
江戸時代の米騒動は商人が米の買い占めを行い、高値で米を独占販売したことで米の相場が急激に上昇し、消費者の家計を圧迫したことで暴徒と化した町人たちが米を独占販売する商人の蔵や邸宅に打ち入って深刻な社会問題へと発展した騒動です。
日本史の教科者ではたった数行程度で済まされていますが、想像力を働かせて改めて米騒動を見つめ直すと事態の深刻さがおわかりになったと思います。
現在は独禁法(独占禁止法)など経済的な措置が取られているので、米騒動のような社会問題へと発展する心配はありません。
独占販売は単に特権ではなく、米騒動のような危険性をはらんでいることを私たちは認識し、経済を意識して生活を送るべきです。
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