健康寿命をのばし、自分の足で歩き続けたい!
そのためには、運動器を健全に保ち、ロコモティブシンドロームを予防することが重要です。
最近メディアなどで、頻繁にとりあげられる「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」。
今回は、「運動器の障害により、移動機能の低下した状態」と定義されるロコモティブシンドロームを解りやすく解説します。
もちろん、症状と原因、予防についても詳しくご紹介していきますよ。
運動器とは、身体活動を担う組織や器官
運動器とは、体を動かすために働く、筋肉や骨格、神経系や脈管系の総称。
筋肉や腱・靭帯、骨や関節、軟骨や椎間板、神経や血管・リンパ管などで構成されます。
それぞれが連携して働くことで、人は支えられ、行動し生活しているのです。
移動機能が低下すると、ロコモティブシンドロームの症状が
移動機能とは、立つ・歩く・走る・座るなど、日常生活をおくるのに必要な体の移動を担う機能をさします。
移動機能が低下すると、手すりを使って階段を昇るようになったり、15分ほど続けて歩くのが辛い、青信号の間に横断歩道を渡り終わらないなどの状態に陥ります。
また、靴下を片脚立ちで履くとふらついたり、なんでもない場所や家の中でつまずいたり、転びそうになります。
これらの症状がみられたら、ロコモティブシンドロームの可能性があるでしょう。
やがて、歩行や着替え、トイレなどの「日常生活動作」が一人でできなくなり、閉じこもりや心身機能の低下、寝たきりなどの要介護に至ります。
要介護のリスクが高い状態がロコモティブシンドローム
加齢とともに筋肉が弱くなったり、関節の疾患や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などのため、移動機能が低下します。
その結果、要介護のリスクが高くなったり、寝たきりになってしまった状態が、ロコモティブシンドロームです。
運動器の病気のため、閉じこもりや転倒のリスクが高くなる「運動器不安定症」と比べ、要介護リスクが高まった状態も含めるロコモティブシンドロームは、より広い病気の概念ですね。
要介護の原因の20%は、運動器の障害です
要介護になる男性の40%以上は脳卒中ですが、女性の30%近くは、運動器の疾患が原因となります。
ロコモティブシンドロームに関係の深い運動器疾患は、膝や腰、骨の病気(変形性膝関節症・変形性腰椎症・骨粗鬆症)とされています。
これらは、多くの人が患う疾患なので、要介護にならないためにも、女性は特に注意が必要です。
要介護の予防には、「男性はメタボ、女性はロコモに注意!」ですね。
ロコモティブシンドロームの原因は、運動器の病気と機能の低下
加齢による、関節や脊椎の病気、骨粗鬆症や関節リウマチなどが原因になります。
痛みや麻痺、骨折のため、関節の動きが悪くなり、筋肉が弱くなります。
その結果、バランスが悪くなり、体力や移動能力が低下するのですね。
また、年齢と共に、身体機能は衰えていきます。
筋力や持久力、運動の速度やバランス能力が低下し、細かい作業がしづらく、反応に時間がかかるようになります。
閉じこもりなどによる運動不足は、これらをより悪化させるでしょう。
ロコモティブシンドロームの診断は、ロコチェックとロコモ度テスト
運動不足の人、いつも腰や膝などが痛い人、やせ過ぎや太り過ぎの人などは、ロコモティブシンドロームになりやすいので、初期症状をチェックをしてみましょう。
- 片脚立ちで、靴下がはけない
- 家の中でつまづいたり、すべったりする
- 階段を上がるのに、手すりが必要
- 横断歩道を、青信号で渡りきれない
- 15分くらい続けて歩けない
- 2kg程度の買い物をして、持ち帰るのが困難
- やや重い家事(掃除機、布団の上げ下ろしなど)が困難
※ひとつでも該当したら、ロコモティブシンドロームが疑われますよ。
ロコモ度テストで、定期的に自分の移動機能を確認しましょう。
- 立ち上がりテスト……片脚か両脚で、4種類の高さから立ちあがれるかで、脚の筋力を測り、判定
- 2ステップテスト……大股で2歩あるき、歩幅を測定して、歩行能力(脚の筋力・バランス能力・柔軟性など)を評価
- ロコモ25……25問(最近1ヶ月間の体の痛みや、日常生活で困難なこと)に答えて、ロコモ度を調査
3つのテストにより、現在の移動機能の状態から、ロコモの段階を判定します。
※詳しいテストの方法は、コチラを参考にしてください。
ロコモチャレンジ「ロコモを調べて予防しよう」 https://locomo-joa.jp/check/test/
毎日10分の「ロコトレ」でロコモティブシンドロームを防ぐ!
たった2つの運動(ロコモーショントレーニング)で、元気な足腰を保ちましょう。
- 開眼片足立ち……机などに手か指をつき、片足立ちを左右1分間ずつ、1日3回
- スクワット……足を肩幅より広めに、つま先を30度に開いて立ち、お尻を後ろに引くイメージで、脚を曲げる(ゆっくり5~6回、1日3回)
最初は少なめの回数から始め、無理をせずに、徐々に体を慣らしていってください。
途中で痛みを感じたり、無理だと思ったら、必ず中止してください。
転ばないように気を付け、出来れば毎日続けましょう。
体力に余裕のある人は、つま先立ち運動や、脚をゆっくり大きく前に踏み出す運動などを追加してみましょう。
運動習慣として、柔軟体操やストレッチを毎日の生活に取り入れたり、普段より10分間多く、体を動かすように心掛けて下さい。
転倒を予防する運動療法により、転倒や骨折を原因とする、寝たきりや要介護の状態にならないようにしましょう。
食生活の改善で、ロコモティブシンドローム予防
・肥満も痩せすぎも、ロコモの原因
メタボによる体重増加は、膝や腰などの関節の病気の原因となり、移動機能を低下させます。
若い女性のダイエットや、高齢者の食欲不振による低栄養状態は、骨や筋肉の量を減らします。
・五大栄養素をバランスよく
運動器の働きを維持するためには、炭水化物・脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラルが必要です。
主食と主菜や副菜に、乳製品や果物を加え、五大栄養素をバランスよくとりましょう。
1食ごとに全てを摂取するのは難しいので、1日あるいは1週間単位で、トータルで栄養をとるようにしてください。
また、栄養不足の高齢者には、食欲がでるような工夫が大切ですね。
飽きないようなメニュー、いろどりや盛り付けなど見た目にも配慮しましょう。
多人数での楽しい会食や、外食もおすすめですよ。
骨と筋肉を強くする食事も大切
・カルシウムで骨を強くしましょう
骨に鬆(す)が入り弱くなる「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」を患うと、骨折しやすくなります。
日本人に不足しがちなカルシウムを、牛乳や乳製品、小魚や緑黄色野菜などから、しっかりと摂りましょう。
・タンパク質やビタミンも、骨には必要です
骨の材料になるタンパク質、カルシウムの吸収を助けるビタミンD(魚・きのこ)、骨をつくり維持する働きのビタミンK(納豆・青菜)などが多く含まれる食品も、意識して食べましょう。
他にマグネシウム(大豆製品・海藻)や葉酸(ほうれん草・春菊)、ビタミンB6(レバー・鶏肉)やB12(レバー・サンマ)なども、骨を強くして骨折を予防するために必要ですよ。
加工食品などに多く含まれるリン、カフェインや食塩は、摂りすぎると骨を弱くするので、注意してください。
・筋肉を強くするには、運動とタンパク質
筋トレに伴い、筋肉の材料になるタンパク質を、肉や魚、卵や乳製品、大豆製品などから、積極的に摂りましょう。
炭水化物や脂質が不足すると、筋肉内のタンパク質が減ってしまうので、バランスのとれた食事がのぞまれます。
また、ビタミンB6は、タンパク質の代謝を促進するので、マグロの赤身やカツオ、赤ピーマンやキウイ、バナナなどから摂取しましょう。
ロコモティブシンドロームの予防にチャレンジ!
ロコモ・メタボ・認知症は、健康寿命と介護予防の敵です。
最近では、運動が認知症の予防になるとの報告もあります。
ロコチェックで早期発見し、ロコトレで予防に努めましょう。
運動と食事療法は、ご自分でできる最善の治療法ですよ。
現代の高齢女性は、平均余命データから、90歳まで生きると推計されます。
この超高齢化社会のなか、ロコモティブシンドロームの人口は予備軍を含めると、4700万人といわれる、まさに国民病です。
40歳を過ぎたら「いつまでも、自分の足で、自由に歩ける」を目標に、ロコモティブシンドロームの予防にチャレンジしましょう。
ロコモと関連のある骨粗鬆症の記事はこちら
コメントを残す