大人気漫画「花の慶次」の主人公、前田慶次の称号は「天下御免の傾奇者」です。
しかし、みなさんは「天下御免」の意味するところやその由来についてご存知でしょうか?
本記事では天下御免の傾奇者の「天下御免」の意味や由来について紹介します。
前田慶次の称号は天下御免の傾奇者
1990年代を代表する歴史漫画といえば原哲夫氏が週刊少年ジャンプで連載していた「花の慶次」が必ずランクインするでしょう。
「花の慶次」の主人公である前田慶次に贈られた称号は「天下御免の傾奇者」です。
これは特に歴史を好きでない方も花の慶次を読んだことがあれば、必ず知っているはずです。
ところが、「天下御免の傾奇者」の「天下御免」の意味やその由来についてご存知の方は意外と少ないのが事実です。
その由来には関白豊臣秀吉と天下御免の傾奇者の前田慶次による傾奇者合戦があります。
天下御免の由来 豊臣秀吉と前田慶次による傾奇者合戦
このエピソードは前田慶次が推定51歳、豊臣秀吉が55歳のときの話です。
意外かも知れませんが、豊臣秀吉と前田慶次の叔父である前田利家は同年代で甥と叔父でありながら4歳しか年齢がかわりませんでした。
前田慶次は51歳という年齢でなお自由奔放に傾き続ける異端児だったのです。
太閤の豊臣秀吉は1500人で5000人を撃破したり、1日で100人以上を斬り殺す前田慶次の武勇を耳にして、「ぜひその者に会いたい」と前田慶次を聚楽第へ召喚します。
聚楽第というのは、京都にある豊臣秀吉の大邸宅で、すべての壁面や茶器を金色で統一していたことで有名な金の茶室が作られた場所です。
聚楽第は太閤豊臣秀吉の権威の象徴でした。
聚楽第で豊臣秀吉が会いたいといったのには次のようなイベントをする目的がありました。
それは、召喚した人を自分の前で頭を下げさせることにより、自分の権威を周知させるというものです。
このとき前田慶次は京都にある行きつけの料亭で複数人の女性を侍らせながら、酒や肴を楽しんでいました。
豊臣秀吉の召喚は早馬によって、遊興にふける前田慶次のもとへもたらされました。
一方聚楽第には豊臣政権の五大老である徳川家康、前田利家、毛利輝元、宇喜多秀家らをはじめ石田三成、上杉景勝などの三奉行の面々も列席していました。
そして聚楽第では叔父の前田利家が隊大量の汗を額に浮かべ「甥が変な真似をしませんように」と切に願っていました。
この件は前田慶次だけでなく前田家にとっても最大のピンチだったのです。
額に汗を浮かべる叔父をよそ目に前田慶次は喜び勇んで聚楽第に参上します。
「前田慶次、ただいま参上仕りましたー」と声高らかに登場した前田慶次は白い袴に赤い小袖、虎とウサギの毛皮で作った裃を身に着けて登場しました。
さらに斜めにマゲを結っていたのです。
列席していた大名たちはみな「!?」と言葉にならない疑問詞を口々に放ちました。
そんなことなどお構いなしにズンズンと進み出た前田慶次は何事もなかったかのように座ると顔をそっぽに向けて平伏しました。
するとどうでしょうか。
斜めに結っていたマゲが真っ直ぐにピンと立ちました。
すると豊臣秀吉は「ほう、マゲは真っ直ぐ立っているな」と関心すると「して、なぜマゲを斜めに結っているんだ?」と質問しました。
前田慶次はこの問に対し「髷は曲がりたる故、曲げと申します」と返答しました。
「これで前田家も終わりだー」と内心ハラハラしていた前田利家が目を閉じると、「はっはっはっはっは」という笑い声が聞こえました。
声の主は太閤の豊臣秀吉です。
「身体は従っても、心までは従えぬということか…。その方、誠に変わりたるやつよのう。褒美に馬をくれてやる」と意外な返答をしたのです。
天下御免の真意
先ほどのように褒美をやると言われた前田慶次は立ち上がると、無言のままその場を後にします。
周りにいる大名たちは開いた口がふさがりません。
しばらくすると、マゲを真っ直ぐに結い、きちんとした直垂に着替えて入室しました。
そして一寸の狂いなく、模範的な拝礼をすると「此度は格別な褒美を賜り誠に有難き幸せにござりまする。手前前田慶次、太閤殿下に厚く御礼申し上げ奉る」と御礼を述べて、ただの礼儀知らずではないことと豊臣秀吉を立てる言動をとったのです。
そして、この態度を見た豊臣秀吉は自分の意志を貫き通しつつ、自分のことも立てるという粋な態度を痛く気に入ってこう発言するのです。
「これからはいつどんなときでも傾くがよい。ワシが許す」と。
天下御免の傾奇者とは、豊臣秀吉公認の傾奇者。
つまり、日本全国公認の傾奇者という意味があるのです。
まとめ
天下御免の傾奇者の天下御免とは豊臣秀吉公認のつまり日本全国公認という意味があったのです。
また、「髷は曲がりたる故に曲げと申します」や一度は奇行に及ぶものの、感謝の言葉をのべるときにはきちんとした格好と所作で礼儀をわきまえたという粋な行動が由来となりました。
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