江戸時代に本当にあった”もったいない“の精神が旺盛な仕事とは?







”もったいない”という精神は江戸時代から続く日本が世界に誇る独自の文化です。

世界の風俗学を研究する海外の大学の教授は江戸時代から日本人が”もったいない”という精神から市場拡大とその精神を活かした事業を実践していたことを知り、

「日本はこんなに古くから3R(リユース・リディース・リサイクル)を実践していたのか!?3Rの概念は日本が元祖である」

と学界に提唱したことから、”もったいない”の精神は海外からも注目を集めています。

 

江戸時代にあった”もったいない”精神旺盛な仕事とはどのようなものか、本記事で紹介します。

 

もったいない精神で大店に出世 贈答品専門質屋

国内から戦が根絶した江戸時代、武士の見栄を張るところと言えばお中元やお歳暮などの贈答品です。

江戸時代、武士が借金をした動機には「食費や生活費」、「調度品や武器の整備費用」についで「贈答品を購入するため」がランクインしています。

贈答品を贈る、お返しをするという日本独自の習慣が武士の家計を圧迫したのです。

 

それに注目したのが、贈答品専門質屋という仕事です。

この事業を開業した人物の名は現在まで伝わっていませんが、もともとは化粧品を扱う大店(おおだな)の手代(従業員)をしていた方のようです。

職業柄多くの女性と会話をすることがあったこの従業員は、武家のご夫人たちの井戸端会議や愚痴にアンテナを向けました。

 

武家のご夫人たちの会話には「○○さんから頂いたあの反物。もったいなくてまだ使ってないわ」、「使っていない贈答品を贈れたらよいのだけれど、それって失礼だよね。お金がもったいない」というような日常的な会話から贈答品専門質屋を開業することを決心します。

さらにこの手代が開業した贈答品専門質屋が通常の質屋と異なるのが昆布や海苔など贈答品の定番な商品も受け入れて取り扱ったことです。

質入れされた昆布や海苔を必要とする飲食店に安値で売りさばき、新しいものを仕入れて販売することもしていました。

 

そして贈答品専門質屋は画期的なサービスを展開します。

それは「商品の一割を支払えば、持参した商品と交換してもいいよ」というサービスです。

これによって、武家の家計は改善され同じ商品に何度も値をつけて贈答品専門質屋が販売できるという好循環なサイクルを確立しました。

 

本来は捨てるはずのあれがもったいなくてできた事業

 

江戸時代、現在の東京もとい江戸は世界初の億万都市となっていました。

人口がかなり密集しているのに江戸の町並みはゴミや小石が転がっていないほど大変綺麗だったそうです。

それは本来捨てるはずのものを商品として販売したり、ゴミを拾ったり清掃をすることを生業とする業者によって保たれていたとも言えます。

 

紙くずがもったいないで開業された紙買い

現在も古新聞やチラシなどの古紙を回収してトイレットペーパーなどと交換してくれる業者がありますが、その起源は江戸時代の紙買いという業者であると言われています。

 

当時新聞のようなマスメディアだった読売や瓦版などは江戸の庶民たちが老若男女購読するものでした。

しかし、ニュースというのは毎日更新されるので一度刷られた情報は時間が経過すると古い情報となってしまい、薪の着火剤となるくらいにしか用をなしません。

紙買いはボテフリと呼ばれる行商人の一種で、民家を回って古紙を二束三文で買い、ふすま職人や傘職人などの紙を必要とする事業者に売って生計を立てました。

 

燃え残った灰さえも売り物にした灰買い

江戸時代の人々の”もったいない”の精神は毎日の炊事で必ず出てしまう灰にまで目を向けました。

灰買いと言いますが、実際には民家を一軒一軒地道に回ってかまどの清掃をする代わりに灰を回収したので金銭的なやりとりはほとんどなかったそうです。

 

そうやって灰買いが回収した灰は、農家や左官職人に販売されました。

農家は畑の地質を変えるため、左官職人は土壁などに使用する塗料などを生成するために大量の灰が必要でした。

それらを自分たちで手間をかけて一から作るよりならば灰買いから入手するほうがとても楽だったのです。

灰買いという仕事は「捨てる神あれば拾う神あり」のことわざを体系化した仕事でした。

 

汚物さえも売り物に!? 糞尿くみ

水洗トイレや浄化槽が普及したことで最近はあまり見かけることがなくなったバキュームカー。

江戸時代以前はバキュームカーの役割は妻や子供たちがやらなければいけない家事のひとつでした。

バキュームカーが吸い取っていたのは人が排泄する糞や尿などの汚物です。

いくら家族のものとはいえ、これらを扱うのは相当抵抗があります。

そこに注目して江戸時代に開業されたのが糞尿くみです。

 

当時の長屋は共同トイレであることが一般的でした。

糞尿くみは長屋の大家さんや店舗の主人と契約して糞尿をくみ、その手間賃をもらいながら、回収した糞尿を農家に販売しました。

農家にとって人や家畜が排泄した糞尿は土によい栄養を与える肥料として使われます。

汚物を扱うのは苦痛ですが、お金をもらって回収したものを販売できるのでけっこう稼ぎのよい仕事だったようです。

 

まとめ

 

  • 贈答品専門質屋
  • 紙買い
  • 灰買い
  • 糞尿くみ

 

以上の仕事は”もったいない”の精神を遺憾なく発揮した仕事と言ってもよいでしょう。

江戸はさまざまな人が密集し、同業他社が乱立する町でした。

そのような江戸で生き残るためには、あえて本来捨てるはずのものや人々のニーズに目を向けて市場拡大や他の業者との差別化をはかる必要がありました。

その中で本記事で紹介したような仕事は人々の心情としての”もったいない”や資源や資本などの物理的な”もったいない”に注目して開業されたすばらしい事業であると言えます。










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