山登りの三種の神器とは?
そうです、『登山靴』、『リュック』、『レインウエア』です。
この3つのアイテムは山登りに欠かせないとても大事なもので、しっかり吟味する必要があります。
当然、山に行く場合は必ず持参しなければなりません。
しかし、疑問を持っている人が多いのも確かです。
降水確率50%ならレインウエアを持参するのもわかります。
しかし、0〜20%でも持参しなければならないのでしょうか?
答えは、降水確率0~20%でも持参しなければいけません。
平地と山の天気は全く違う
山の天気は変わりやすいと聞いたことがありませんか?
単なる言い伝えではなく、それは事実です。
なぜなら、山は特殊な地形をしているからです。
平地であればその一帯の気温はおおむね変わらず、風はただ通り過ぎるだけです。しかし、山ではそういうわけにはいきません。
平地を渡ってきた風は山にぶつかると上昇します。
上昇すると気温が下がり、風に含まれていた水蒸気は水滴となって雲が発生します。
雲の段階でとどまっていればいいのですが、限界を越えると雨になります。
平地は降ってなくても山では雨が降る。
これが降水確率が低かろうがレインウェアを準備する必要がある理由その一です。
次に、山の空気は温まりやすく、冷めやすいという特徴があります。
太陽が昇って温められた空気は上昇します。
高度が上がると気温が下がり、再び下降します。
このように、山では往々にして上昇・下降を繰り返す空気の流れが発生します。
それを何度も繰り返しているうちに水蒸気の量が増え、そして雲が発生します。
レインウエアがない状態で雨が降ると体は濡れ、体温がどんどん下がっていきます。
その結果、生命が失われる可能性が生じます。
そういう事態はなんとしても避けなければなりません。そのためのレインウエアなのです。
三番目は防寒着としての役目です。
山頂で風が吹いていれば思いのほか体感気温は下がります。
予備のウエアがあれば救われますが、そうでなければ腰を下ろしてお弁当を食べることもできません。
レインウエアは雨を凌ぐだけでなく、いざという時の防寒具としても役に立つのです。
山では薄くて軽いタイプのレインウェアがベスト
山登りに持参する道具=荷物はコンパクトで軽いというのが大原則です。
大きいとかさばるし、重たいと体力を奪います。
レインウエアもこの原則に従うべきでしょう。
薄手で軽いというのがやはり理想です。
このウェアの分野でも最近の技術進歩は素晴らしいものがあります。
数年前までは300gを切ればすごいといわれていたのが、今や100g以下の極薄・超軽量タイプも現れているのです。
もちろん、通常の登山ではなくトレランを代表とするスポーツ登山の分野の話ですが、単なるトレッキング用でも100〜200gというレインウエアも登場しています。
ただし、薄いという事実はそのために犠牲にしている部分もあります。
強度や耐久力です。
山では岩や枝に引っ掛けるのは日常茶飯事ですし、転倒もします。
その程度では破れないほどの丈夫さがほしいのです。
しかし、薄いと破れやすいのは避けられません。
また、強い雨の中で長い時間防水性能を維持するのもなかなか難しいです。
ゴアテックスを知ってますか?
ここで原点に戻ってみましょう。
雨から身を守るにはどんなものを着ればいいと思いますか?
ナイロン?
いいえ、ナイロン素材は水を通します。
完璧に雨から守るにはビニール素材、またはゴム素材でなければなりません。
しかし、ビニールやゴムでは大きな問題が生じます。
外からの侵入は防ぎますが、内部の水蒸気も外に出してくれないのです。
その為、ビニールやゴムのレインウェアでは内部が蒸れてとても暑くなります。
山で動けば汗が出ます。それを放置しておくと衣類は汗でぐっしょりと濡れてしまいます。
それが乾く段階で体温を奪いますから、最悪の場合は低体温症を引き起こします。
それ以前に、快適ではなくなります。
コンビニで販売されている値段の安いビニール製レインコートを着たことのある人はわかると思いますが、蒸れて暑くてたまりません。
その点、レインウエアは、水はシャットアウトしますが水蒸気は放出するという優れた性能を持っています。
その代表がゴアテックスという素材です。
現在では各メーカーが似たような透湿素材を開発し、独自の商品名で販売しています。
ゴアテックスという名称以外でも優れた性能のレインウエアは存在しますから、アウトドアショップのスタッフにお勧め商品を尋ねてみてください。
商品を解説しているウェブサイトも参考になりますが、往々にしてメーカーのカタログを抜粋したものが多く、あまり役に立たないと思っていいでしょう。
もっとも、その商品の欠点を取り上げていたとしたら、それはかなり信頼できそうです。
防水・透湿性能を維持するために
水は通さず、水蒸気だけを通すというのがゴアテックス素材ですが、現在はゴアテックス以外にも同様の性能を持つ素材がありますから、これ以降は防水・透湿素材と表記します。
さて、この防水・透湿性能を維持するにはこまめなメンテナンスが必要なことを知っておかなければなりません。
雨に濡れたレインウエアを乾かすだけでは性能がどんどん低下してしまいます。
水蒸気を逃す微細な穴がゴミのためふさがってしまうからです。
そのためには使用後に必ず洗濯しなければなりません。
洗剤にも注意してください。
柔軟剤を使ってはいけません。
防水・透湿素材専用の洗剤が売り出されていますから、それを使えば性能維持に大きく役立ちます。
洗濯機に入れるときはファスナーを閉じてネットに入れ、優しく洗います。
そして、十分すすぎ、洗剤は完全に洗い落としてください。
軽く脱水したら低温で乾燥します。
熱を加えることで撥水性が回復するからです。
買ったばかりのレインウエアはいくら雨に濡れても、ブルッと体を震わせるとすべて水滴となって流れ落ちます。
これが最高に撥水性能が高い状態です。
しかし、撥水性能が落ちるといつまでもレインウエアの表面にとどまります。
すると、どんなに微細な穴でもじわって染み込んでいくのです。
防水性能を維持するには高い撥水性能も必要なのです。
防水スプレーを活用しよう
撥水性能は年々衰えていきます。
乾燥機に入れていてもいつかは雨水を弾かなくなります。
そうなれば防水性はまったく期待できなくなります。
そんなときは防水スプレーの出番です。
といって、適当に噴きつければいいわけではありません。
現在のレインウエアは上下に分かれたセパレートタイプがメインですから、まずは上衣から始めましょう。
ハンガーにかけたレインウエアの上衣にたっぷりと隙間なく噴きつけます。
このとき、必ず屋外でスプレーしてください。
換気の悪い屋内で行うと揮発性の溶剤が充満し、頭痛を起こしたり嘔吐、発熱などの症状を引き起こしたりします。
上衣が終われば次はパンツにスプレーします。
防水スプレーの効果を高めるには、何回にも分けてスプレーすることです。
乾いたらまたスプレー、乾いたらまたスプレーします。
そのような時間と手間をかけられないときは、スプレー後に低温でアイロンをかけます。
こうすれば防水効果は長く保つことができます。
なお、防水スプレーにはフッ素樹脂系とシリコン系があります。
透湿素材に向いているのはフッ素樹脂系です。
防水スプレーにはゴアテックス向きかそうでないかを明記していますから、必ずそれを確認してください。
まとめ
軽くて透湿性能が高いレインウエアは高価です。
しかし、それだけの価値はあります。
一度使ってみるともう手放せなくなるほどです。
その価値あるレインウエアの能力を十分発揮させるために注意してほしいことがあります。
決して、折り畳んだまま仕舞わないでください。
長い期間折り目がついた状態が続くと、その部分の撥水機能は著しく衰えてしまいます。
せっかく手間をかけて防水スプレーをかけたのが台なしになるのです。
レインウエアはハンガーにかけて保管するのが基本ですので覚えておいて下さい。
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