4cm以上身長が縮んだ中高年女性は、要注意!
比較的弱い力でも、骨折してしまう骨粗鬆症……
骨粗鬆症になってしまったら、転んだり尻もちをついて、時には、重い物を持ち上げたり、中腰になっただけで、背骨が折れてしまうことがあります。
骨粗鬆症とは、長年の生活習慣などで骨の量が減り、骨が弱くなって骨折を起こしやすくなる病気です。
近年の高齢化にともない骨粗鬆症患者数は急増し、推定1300万人と言われています。
40~50歳代以降の女性は、特に注意が必要な疾患「骨粗鬆症」の原因や症状、そして予防法を詳しくご紹介していきます。
骨粗鬆症は骨に鬆(す)が入り、骨折しやすくなる病気です
硬い骨も、破壊(骨吸収)と再生(骨形成)という新陳代謝を繰り返し、他の細胞と同様に、常に新しい骨に入れ替わっています。
生活習慣や女性ホルモンなどの影響で、骨をつくる量よりも、骨をこわす量のほうが多くなると、すが入ったように、骨がスカスカになってしまいます。
加齢と共に弱くなった骨は、転倒・転落やちょっとした弾みで、背骨や手首、太もものつけ根などが、容易に骨折しやすくなります。
骨粗鬆症による骨折は、寝たきりになる原因の第3位なので、老後の生活の質を維持するためにも、骨粗鬆症の予防はとても重要ですね。
骨量のピークは、18歳!
人の骨の量は、男女ともに18歳から、おだやかに減少していきます。
この骨量の減少は、骨の中のカルシウムが減るために生じます。
人体のカルシウムの99%は、骨と歯に蓄えられています。
そして、残りの1%は血液中にあり、一定量が保たれないと、生命の維持に支障をきたします。
食事中のカルシウム摂取量が不足すると、人体は貯蔵庫である骨からカルシウムを取り出して、血中濃度を一定に保とうとします。
この状態が続いて、骨量が2~3割減ってしまい、骨折しやすくなった病気を骨粗鬆症と呼びます。
骨粗鬆症の要因は、女性・加齢・生活習慣
骨粗鬆症の発症には、骨の量が減りやすい体質や加齢、生活のしかたなど、様々な要因があります。
危険因子として、身体要因や体に悪い生活習慣、遺伝的な素因や病気などがあげられます。
女性ホルモンには、骨量を維持する働きがありますが、閉経と共に女性ホルモン分泌の急激な減少がおこります。
卵巣摘出などの手術で閉経になっても同様で、もともと骨が細い女性が、加齢と女性ホルモンの激減のため、骨粗鬆症になりやすいと考えられています。
また、副腎皮質ホルモンや甲状腺ホルモンの過剰でも起こりやすいです。
食習慣では、カルシウム不足やタンパク質不足、偏食や極端なダイエット、アルコールや コーヒーの多飲などが骨粗鬆症の要因となるでしょう。
生活習慣としては、家に閉じこもることによる運動不足や日照不足、多量の喫煙などがあります。
閉経の時期や痩せ型、家族に骨粗鬆症がいないかなど、遺伝的な素因があることも指摘されています。
最近の研究では、慢性的なストレスは骨粗鬆症の危険因子とされています。
ストレスは、中枢神経系や副腎皮質系、交感神経系や内分泌・免疫系への影響を介して、骨量を低下させます。
リラックスできる時間をもち、楽しいことや面白いと感じることができる、趣味やスポーツなどの生きがいをみつけて、ストレスを解消しましょう。
こんな病気も骨粗鬆症の原因になります
病気や薬、手術や栄養障害などにより、二次的に骨量が減少したものを、続発性骨粗鬆症と呼びます。
原因としては
- 甲状腺機能亢進症
- 副甲状腺機能亢進症
- 高カルシウム尿症
- 糖尿病
- 関節リウマチ
- 腎不全
- 肝疾患
- 胃の切除
- ステロイド剤の長期服用
などが挙げられます。
代表的な原因疾患だけでも数十におよびますので、専門医による適切な検査と正確な診断が必要です。
原因となる疾患の治療により、骨量の正常化が期待できます。
※骨粗鬆症が疑われたら、専門医の診察をうけましょう。
骨粗鬆症の診療を専門的に扱っている病医院のリスト http://www.jpof.or.jp/public/
骨粗鬆症の自覚症状は、更年期を過ぎてから
骨粗鬆症は、静かに進行する疾患です。
通常は骨折するまで、痛みはほとんどありません。
しかし、閉経後の女性は加齢と共に、立ち上がり時や重い荷物を持つときなどに、背中から腰が痛いといった自覚症状が、あらわれることがあります。
やがて、背中が丸くなってきた、身長が縮んできたなどの症状もみられるでしょう。
病気が進行すると、ちょっとしたはずみで骨折が起こり、痛くて動かせなくなります。
骨粗鬆症による骨折は、背骨や手首、脚のつけ根におきやすい
転倒や転落、比較的弱い外力でも骨折します。
脊椎椎体骨折(せきついついたいこっせつ)
骨粗鬆症による骨折のほか、転移性骨腫瘍や外傷性の椎体骨折などがあり、圧迫骨折とも呼ばれます。
高齢者では、尻もちなどのちょっとした外力で生じ、痛みが軽い場合もありますが、通常は背中から腰が痛くて寝込んでしまいます。
胸椎の下部から腰椎の上部にかけて骨折しやすく、背骨の前方が楔(くさび)形につぶれます。
何ヵ所か折れてしまうと、背中が丸まり、背が低くなるでしょう。
X線検査で診断し、骨粗鬆症の疑いがあれば、骨密度も測ります。
骨粗鬆症による軽い圧迫骨折は、コルセットで固定し、前屈みにならないように指示します。
痛む動作や姿勢を避け、安静が保てれば、3~4週間で治るでしょう。
橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)
中年以降の女性が、手のひらをついて転んだときに、生じやすい骨折です。
前腕(手首から肘まで)の骨の手首寄りが折れると、強い痛みと腫れ、変形がみられ、手がグラグラになります。
高所からの転落や交通事故でも発生し、橈骨の隣の尺骨も骨折することがあります。
X線検査で診断し、麻酔下で整復して固定しますが、整復が困難なケースでは手術が検討されるでしょう。
大腿骨頚部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)
高齢者が転んで、脚のつけ根を痛がり、立てなくなったら、この骨折を疑います。
大腿骨頚部は、太ももの骨が股関節から出てすぐのところにある、くびれた部分です。
関節の中で折れる、頚部内側骨折では、軽く脚をひねった程度でも発生し、ある日突然立てなくなったりします。
骨のつきが悪いため、長期の安静による認知症や寝たきりになってしまうケースが多いので、手術も検討されます。
年間10数万人が受傷する、高齢者に多い骨折なので、骨粗鬆症の治療と転びにくい環境作りが重要ですね。
骨粗鬆症の診断には骨の量を測りましょう
骨密度が若年成人の80%以上で正常、70~80%で骨量減少、70%未満で骨粗鬆症と判定されます。
閉経後の女性は、1年に1回ずつの骨密度測定をおすすめします。
男性は、長期間の寝たきりや、胃腸・腎臓障害などがなければ、測定の必要はありません。
70歳代以降は、男女とも2年おきくらいに測定しましょう。
骨粗鬆症の診断には、腰椎などの骨密度を測定する、DXA(デキサ)法の信頼性が高いとされています。
他に超音波法やMD法、CT法などがありますが、検診用には、かかとや前腕の骨で測る、骨量測定機器が大半でしょう。
女性は40歳から5歳ごとに、節目検診を保健センターや保健所、指定医療機関で受けることができるので、ご利用ください。
骨粗鬆症はお薬で治療します
近年、骨粗鬆症の治療薬の開発が進み、有効性の高い薬が発売され、症状の程度やタイプ、年齢に応じた薬物療法が行われています。
骨吸収抑制剤(骨の減少を防ぐ)、骨形成促進剤(骨をつくる)、ホルモン剤、各種ビタミン剤などがあり、内服や注射(カルシトニン)で治療します。
- ビスフォスフォネート…骨を吸収する細胞の働きを抑え、 骨量を増加させる
- サーム…女性ホルモンと同じ働きで、骨のカルシウムが溶け出すのを抑える
- デノスマブ、イプリフラボン… 骨量の減少を抑える
- ラロキシフェン…骨量を増加させる
- ビタミンK2… 骨がつくられるのを助ける
- 活性型ビタミンD3… 腸からのカルシウムの吸収を促進し、骨を強くする
- カルシウム剤…骨量の減少を防止、食事からのカルシウム摂取量が少ない場合に服用
- 女性ホルモン…閉経期の女性が対象、更年期症状の改善と骨量の減少を抑える
- カルシトニン…骨量の減少を抑え、背中や腰の疼痛を軽減する
骨粗鬆症の予防は、食事・運動・日光浴
骨粗鬆症は、生活習慣の改善による予防が、とても大切な病気です。
食事による骨粗鬆症予防
骨粗鬆症の予防と治療のためには、カルシウムを1日800mg、食事から摂取するよう心がけましょう。
現代の日本人は、ほとんどの栄養素は十分に足りていますが、唯一カルシウムのみ不足しています。
普段の食事に、あと200mgのカルシウム(牛乳1杯、豆腐半丁など)を加えましょう。
牛乳やチーズなどの乳製品、豆腐や納豆、生揚げなどの大豆製品、ワカサギやイワシなどの小魚、ひじきやわかめなどの海草類、小松菜やチンゲンサイなどの緑黄野菜などが、カルシウムを多く含む食品です。
特に乳製品は、吸収率が高く、カルシウム源としてもっとも効率がよいので、おすすめです。
ビタミンDは、カルシウムの吸収を促進し、尿へのカルシウム排泄を減らして、骨を丈夫にします。
イワシやサンマ、サケやシラス干しなどの魚類、干しシイタケやキクラゲなどのきのこ類に、ビタミンDは多く含まれます。
シイタケは、使う前に天日で干すと、ビタミンDが増えるので、おすすめですよ。
人体の皮膚でも、紫外線にあたるとビタミンDは作られます。
紫外線量の少ない冬は、ビタミンDが不足しやすいので、魚類やきのこ類を積極的に食べるようにしましょう。
ビタミンKは、カルシウムを骨に取り込むのを助け、骨を強くします。
モロヘイヤや小松菜、ブロッコリーなどの野菜、納豆や鳥もも肉などに、ビタミンKは多く含まれます。
色の濃い葉野菜に多く、脂溶性なので、油で調理するとよいですよ。
他にビタミンB6やビタミンB12、葉酸やタンパク質、リンやマグネシウムなども、併せて適量摂取することが大切です。
食事からとることが望ましいですが、不足する場合は、補助的にサプリメントを利用しても問題ないでしょう。
ただし、過剰な摂取は弊害もありますので、十分ご注意ください。(多量のリンが含まれる食品を食べすぎると、カルシウムを便の中に出してしまうなど)
できれば、体や骨にとって必要な栄養素を、食事からバランスよくいただくことが理想です。
運動による骨粗鬆症予防
骨にかかる力が大きく、繰り返しが多い運動は、骨を強くしてくれます。
ただし、高齢者や骨粗鬆症がすすんだ人は、無理に激しい運動をすることは、勧められません。
ウォーキングや水泳、自転車などの有酸素運動や、体操を継続して行う方がよいでしょう。
骨を強くするためには、ウォーキングは1日30分、水泳は30分を週2回、自転車は1時間くらいを目標にしてください。
ご自身の体力や、その日の体調にあわせて無理せず、運動中異常を感じたら、すぐに中止しましょう。
運動は、閉経後の女性の骨密度を維持し上昇させる効果や、高齢者の転倒予防効果が期待できるので、ぜひ毎日の生活に取り入れてください。
日光浴による骨粗鬆症予防
カルシウムの吸収に必要なビタミンDを皮膚でつくるために、日光浴が勧められます。
夏は木陰で30分、冬は服から出ている部分に1時間くらい、日光をあてましょう。
ガラス越しの日光浴は、紫外線を通しづらいので、できれば屋外がおすすめです。
家の中にこもり、外出しない人は、ビタミンDが不足しがちなので、食事から積極的に摂取しましょう。
タバコやお酒
喫煙は胃腸の働きを悪くして、食欲減退をまねき、カルシウムの吸収を妨げます。
また、骨からのカルシウムの流出を防いでくれる、女性ホルモンの分泌を低下させ、骨を弱くします。
多量の飲酒は、アルコールの利尿作用により、体内のカルシウムを必要以上に、体外へ排泄させてしまいます。
転倒を防ぐ
80歳以上の高齢者においては、要介護になる原因として、骨粗鬆症による骨折が10%を超えます。
高齢者は、居間などのなれた場所や、平らな道などのなんでもない場所で、ちょっとつまづいたり、すべって転ぶことが多いです。
家の中やいつもの道でも、急がずあわてず、慎重に行動するように心掛け、手すりや杖なども利用するようにしましょう。
また、転ぶ要因となる病気(足や膝、腰などの疾患、白内障やめまい)がある人や、ふらつきや眠気などの副作用がある薬を服用している人は、特に気をつけてください。
骨粗鬆症の治療はとても大変
骨粗鬆症の兆候はなるべく早く見つけて、生活習慣の改善と治療で骨折を予防することで、生活の質の維持が可能となります。
40歳代以降の女性は、骨粗鬆症財団のセルフチェックを利用したり、検査を受けて早期発見に努めましょう。
※骨の健康度チェック http://www.jpof.or.jp/selfcheck/
骨粗鬆症の治療の目的は、骨折の予防にあります。
そのためには、バランスのよい食生活と適度な運動習慣、転びにくい環境づくりなどが、ポイントとなります。
骨粗鬆症の予防法は、生活習慣病の予防にもなるので、ぜひ前向きに取り組んでくださいね。
より詳細な医療情報が必要な方には、こちらの動画もおすすめです。
国立国際医療研究センター病院 病院長 中村利孝先生が、骨粗鬆症の病態や疫学、予後や診断、治療を分かりやすく解説しています。
※骨粗鬆症の基礎知識と骨折の予防について http://www.jpof.or.jp/medical-qa-video/video3/
コメントを残す