厚生労働省は、2019年度から30歳以上60歳未満の男性に対する風疹の抗体検査の費用を補助することを決めました。
この情報だけを聞いても
- どうしてこの年代の男性なの?
- 女性は受けなくていいの?
- そもそも風疹にかかると何がよくないの?
など、様々な疑問が湧いてきますね。
今回は、風疹という病気について、そして抗体検査やワクチンについてご紹介します。
風疹とはどのような病気!?
風疹は、風疹ウイルスに感染することによって発症する感染症です。
感染している人の鼻汁や唾液に含まれる風疹ウイルスが、自分の体内に侵入することで感染します。
感染後2週間くらい経過してから、発熱、発疹、リンパ節が腫れるなどの症状が現れます。一部の患者さんでは症状が現れないこともあります。
また、妊娠20週頃までの妊婦が風疹ウイルスに感染すると、赤ちゃんが「先天性風疹症候群」を発症する可能性があります。
先天性風疹症候群の主な症状は以下のものです。
- 赤ちゃんの発育が遅くなる
- 小頭症(知能、発達に影響が出る)
- 眼症状(白内障、網膜症)
- 難聴
- 心疾患(心不全など)
先天性風疹症候群にかかった赤ちゃんは、一生これらの症状と付き合って生きていくことになります。
風疹の抗体検査とは
風疹の抗体検査は、自分が風疹に対する抗体を持っているか調べる検査です。
この検査で十分に抗体を持っていると診断されれば、風疹に感染する可能性はほぼ0%となります。
風疹の抗体検査は血液検査で行います。
検査結果が出るまでは1週間から1ヶ月程度かかる場合が多いです。
なぜ一部の男性に抗体検査を助成するのか?
厚生労働省は、30歳以上60歳未満の男性を対象に、風疹の抗体検査の費用を補助することを決めましたが、なぜこの年代の男性にだけ助成することを決めたのでしょうか。
それは、現在この世代の男性で風疹の感染拡大が問題になっているからです。
風疹のワクチン接種については、先天性風疹症候群を防ぐことに重点が置かれたため、1977 年から女子中学生を対象にワクチン接種を行っていました。
一方、男子全員に接種するようになったのは 1995 年です。
そのため、現在30代後半以上の男性は風疹の抗体を保有していない人が多いと思われるのです。
さらに、これらの方々は仕事で外に出ていることが多く、知らず知らずに風疹ウイルスと接していることが多いです。
その結果、風疹の感染が広まってしまうんですね。
また、女性ですが、元々妊娠を希望する女性に対する抗体検査の助成制度がありますので、こちらを利用して抗体検査を受けることが可能です。
これらに当てはまらない方でも、場合によっては風疹の抗体検査の助成を受けられます。
各自治体によって助成を受けられる方が異なりますので、自分の住んでいる地域の自治体のホームページを確認するか、問い合わせをしてみましょう。
妊婦が抗体を持っていれば良いのではないか?
先程「妊娠20週頃までの妊婦が風疹ウイルスに感染すると、赤ちゃんが先天性風疹症候群を発症する可能性があります」と述べました。
つまり、「女性が風疹の抗体を持っていれば、男性はいらないんじゃないの?」と思いませんか?
確かに、全ての女性が抗体を持っていれば、先天性風疹症候群は発症しないかもしれません。
しかし、風疹に対しては抗体が出来にくい体質の方が実際にはおられます。
風疹の抗体が出来るメカニズムは花粉症と一緒です。
毎年同じように過ごしていても、花粉症になる方とならない方がいますね。
これは、花粉に対する抗体の出来やすさの違いです。同様に、風疹に対する抗体の出来やすさも人によって異なります。
抗体が出来にくい体質の方は、ワクチンを複数回接種しても抗体が出来ないこともあります。
つまり抗体の出来にくい体質の妊婦さんは、妊娠期間中ずっと風疹のリスクに怯えて暮らすことになります。
ですから、男性の風疹の抗体がある状態にして、社会全体で先天性風疹症候群を防ぐことが必要なんですね。
検査の結果、風疹の抗体が無かったらどうすれば良いか
検査の結果、風疹の抗体が無いとわかったら、どうしたらいいのでしょうか。
その場合は、風疹のワクチンを打つことで抗体を作ることが出来ます。
風疹のワクチンは、風疹単独のワクチンと、風疹と麻疹(はしか)の混合ワクチンがあります。
今年の夏は沖縄で麻疹も流行しましたから、可能であれば、混合ワクチンを接種することをオススメします。
麻疹の抗体の検査をしてないのにワクチンを打ってもいいの?と思いますが、抗体があってもなくてもワクチンを打つ分には問題ありません。
ワクチン接種の助成について、今回厚生労働省からの新たな決定はありませんでしたが、各自治体や、最近では企業でもワクチン接種の助成をしてくれるところがあります。
自分の住む自治体や企業のホームページを見たり、問い合わせたりしてみるといいでしょう。
ちなみに女性の場合、風疹のワクチンを接種してから2か月は避妊しなければなりません。
風疹のワクチンは、毒性の弱めた風疹の病原体を摂取することで抗体を産生させます。
病原体が体内に入り、感染したのと同じ状態になるので、ワクチン接種直後に妊娠してしまうと赤ちゃんに先天性風疹症候群を発症させてしまう恐れがあります。
ですから、妊娠を望んでいない時期に抗体検査を受け、抗体がなければワクチンの接種をしておくことが肝心です。
また、風疹の感染は手洗いうがいである程度予防出来ます。
基本的な方法ではありますが、日常生活に取り入れられる予防ですから、積極的に手洗いうがいをするようにしましょう。
まとめ
- 風疹とは、風疹ウイルスによる感染症で、症状は発熱、発疹、リンパ節の腫れがある
- 妊婦が感染すると、赤ちゃんに先天性風疹症候群を発症させる可能性があり、発症すると生まれた赤ちゃんは病気と一生付き合わなければならない
- 風疹のワクチンは1995年から男性全員が接種するようになった。その結果、30 代後半以上の男性は風疹の抗体を持っていない可能性が高い。そのため、30~59歳の男性に抗体検査の助成をすることになった
- 女性は1977年から全員風疹ワクチンを接種している。また、以前から抗体検査の助成制度があるので活用するとよい
- ワクチンを打っても抗体が出来にくい人がいるので、社会全体で風疹を予防することが大切
- 風疹の抗体がなかった場合、ワクチン接種で抗体が出来る可能性が高い。ただし、女性は接種後2か月間避妊が必要
これから生まれる命に辛い病気を背負わせないためにも、各々が行動することが大切ですね。
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