ピリピリ、ジンジン、チクチク……それは体の異常を知らせる、しびれのサインかもしれません。
坐骨神経にトラブルが生じると、お尻や脚が痛い、しびれる、感覚が鈍いなどの症状が見られることがあります。
近年増加傾向にある坐骨神経痛、その主な原因である、腰椎椎間板ヘルニアの推定患者数は100万人、腰部脊柱管狭窄症は240万人といわれています。
今回は、多くの方を悩ます坐骨神経痛の原因から、効果的なツボ治療までご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
坐骨神経痛は病気?
みなさんもよく耳にする「坐骨神経痛」は、病名ではなく、症状をあらわす言葉です。
坐骨神経は、腰から下の神経が束になって膝上まで走り、その先の足指までのびています。
何らかの原因で神経に障害がおきたり、坐骨神経の経路に沿って症状がでた時、坐骨神経痛と呼ばれるのです。
主にお尻や太ももの後ろ側、ふくらはぎから足にかけて痛み、片側の脚に発症する場合が多いですね。
また、しびれるような感じ、だるい、突っ張る、触った感覚が鈍い、足に力が入りづらいなどの症状が見られる場合も多いでしょう。
原因疾患により、歩行時や立位、座位あるいは寝ていても症状がでることがあります。
靴下の着脱が辛かったり、せきやくしゃみで悪化することも。
痛みやしびれが長引いたり、悪化する時は、病気が隠れている場合もあるので、早めに整形外科を受診してください。
坐骨神経痛の原因は様々です
坐骨神経痛の原因は、腰椎で神経が圧迫されるものから、腫瘍まで本当にさまざまです。
中高年に多く見られる「腰部脊柱管狭窄症」は、腰部で神経の通り道が狭くなってしまう、中高年に多い疾患。
立っていたり、歩くと短時間でお尻や脚が痛くなってしまう間欠跛行が特徴です。
「腰椎椎間板ヘルニア」は、背骨の間にあるクッションの外側が傷つき、中の髄核が飛び出して神経を圧迫する、若年者に多い疾患です。
学童期のはげしいスポーツなどが原因で、腰椎が分離して前方にずれる「腰椎分離すべり症」や50歳以上の女性に多い「腰椎変性すべり症」、
お尻の筋肉が神経を圧迫する「梨状筋症候群」なども原因となります。
また、ウイルスにより神経に沿って痛みと発疹がでる「帯状疱疹」、「変形性股関節症」の関連痛のケースも。
まれに神経の腫瘍や骨の癌といった、命にかかわる疾患が原因の場合もあるので、注意が必要ですね。
坐骨神経痛のこんな症状には、要注意
内臓性腰痛の特徴は、安静時も痛い、夜間痛くて目が覚める、痛みが背骨の運動で増悪せず、内臓疾患の特徴的な症状がみられることです。
腎臓、骨盤内臓器の障害、小腸の疾患、高齢者の前立腺癌、子宮癌などが疑われる場合があるので、専門医を受診しましょう。
脊椎や馬尾神経の腫瘍の特徴は、安静時も痛い、夜間痛くて目が覚める、痛みがどんどん強くなる、膀胱直腸障害、知覚・運動麻痺などです。
癌の骨への転移は、腰椎が最も多いので、癌の病歴がある方は、特にご注意ください。
原因不明の発熱や、異常な体重の減少などにも気をつけましょう。
※膀胱直腸障害とは、排尿困難・尿失禁・便秘・便失禁のことです。
坐骨神経痛は手術以外の保存治療から
坐骨神経痛が疑われたら、整形外科を受診しましょう。
問診のあと、筋肉や関節、神経や血液循環などを診ます。
必要に応じてX腺やMRIなどの画像検査、内科・婦人科・泌尿器科などの検査がおこなわれます。
診断の結果、重篤な病因がなければ、手術以外の保存療法がすすめられます。
安静やコルセット固定の指示、神経ブロック注射や牽引、温熱・電気治療などの理学療法、運動療法などでしょう。
お薬は、消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、末梢血管拡張薬、末梢性神経障害治療剤の他、抗うつ剤や漢方薬が処方される場合もあります。
近年、神経障害性疼痛の薬として「リリカ」が普及してきました。
眠気、ふらつきなどの副作用も考慮して、最初は少量から始め、薬に慣れてきたら、痛みが軽減する量まで少しずつ増やし、その患者さんに適した量に調整していきます。
用法用量などを守り、必ず医師の指示にしたがって、服用してください。
ツボ刺激で坐骨神経痛の症状改善
病院の治療とあわせて早期回復のため、あるいは坐骨神経痛の予防にツボ治療をおすすめします。
東洋医学によるツボ刺激は、人が本来もっている自然治癒力を高めてくれるので、西洋医学の治療の助けとなるでしょう。
正しいツボを押した時は、気持ちよい痛みが感じられます。
そして、ツボには硬結(こり)がある、皮膚に張りがなく、くぼみやすいなどの特徴があります。
ゆっくりと押していき、ひびきを感じたら3~5秒間保持し、ゆっくりと離していきます。
心地よい強さで3~5分間続けましょう。
押すとかえって痛みが強くなる箇所は、炎症があるので押さないでください。
ツボは体の異常を知らせる体表のサイン、と同時に治療ポイントでもあります。
ぜひ、3,000年の歴史を持つ東洋医学の力を借りて、症状を改善させましょう。
坐骨神経痛には、このツボ!
ツボは体調や日により変化し、位置も微妙に移動します。
ご紹介する、代表的な坐骨神経痛のツボの位置を目安に、その周りを探ってみてください。
押してみて、つらい部位などにひびく箇所が正しいツボです。
・志室(ししつ) 直立した時の肘の高さの背骨から、左右外側に指幅3本ずれたところ
・陽関(ようかん) 骨盤の上端と背骨の交点、突起と突起の間
・椎間(ついかん) 陽関の左右外側に指幅1本の位置とその下
・上胞肓(じょうほうこう) 仙骨の外側、骨盤の関節の外下方
・梨状(りじょう) 太ももの外側にある骨のでっぱりと、上胞肓を結んだ線の中央とその下
・上殿(じょうでん) 骨盤の上縁の最も高い位置から、指幅3~4本下がったところ
・殷門(いんもん) 太ももの後ろ側真ん中(お尻の下の横しわと、膝裏の横しわを結んだ線の中心)
・委中(いちゅう) 膝の後ろにある、曲がりじわの真ん中
・承山(しょうざん) アキレス腱とふくらはぎの筋肉の境目(膝うらと足首の中央)
・承筋(しょうきん) ふくらはぎ、委中と承山の中央
・陽陵泉(ようりょうせん) 膝関節の外側下にある、飛び出した丸い骨の真下
・足三里(あしさんり) 膝のお皿のすぐ外側にあるくぼみから、指幅4本下
・風市(ふうし) 直立して手のひらを太ももの外側に当てた時の、中指の先
・附陽(ふよう) 足の外くるぶしから指幅3本上、アキレス腱と骨の境目
・解谿(かいけい) 足首の前面、真ん中あたりのくぼみの中
・崑崙(こんろん) 外くるぶしとアキレス腱の間にあるくぼみの中
・照海(しょうかい)内くるぶしから親指幅1本分、下がったふくらみ
※指幅1本は親指の幅、指幅2本以上は、人差し指から小指に向かって数えます。(指幅は患者さんの指幅が目安)
自宅で簡単、はり・きゅう治療
指圧によるツボ治療で効果のみられた方には、はりやお灸の治療をおすすめします。
本格的な、はり・きゅう治療は、鍼灸師の免許が必要ですが、ご家庭でできる簡単な方法もあるのでご紹介しましょう。
はりは、置き鍼と同様の効果が期待できる、肌に刺さない円皮鍼(えんぴしん)を使用します。
ツボに貼るだけで、指圧による治療効果を長時間持続させることができます。
一つずつ滅菌包装され、かぶれにくい和紙のテープを採用した製品が、ネットなどで購入できるので重宝しますね。
お灸は、直接肌にもぐさを置かない、せんねん灸などの温灸を利用しましょう。
温灸の台座のシールをはがして、火をつけツボに貼るだけです。
温熱療法は、神経痛にとても効果的。
そして、何より心地よいのが魅力です。
1つのツボに1日1回、1個から。ツボは1~3箇所からはじめてください。
慣れてきたら、1つのツボに2~3個すえてみましょう。
決して熱いのを我慢しないでください。
また、入浴前後・食事直後・飲酒後・発熱時は、使用してはいけません。
気を付ければ、ヤケドすることもないので、ぜひお試しください。
まとめ
坐骨神経痛のつらい症状は、なかなか他人には理解してもらえない、とっても嫌な痛みやしびれです。
若年者の椎間板ヘルニアは、数年で自然に吸収される例もありますが、中高年の坐骨神経痛は治りづらく、徐々に悪化してしまうケースも見受けられます。
しかし、原因疾患が加齢変性だからと、何もせずに諦めたりしないでください。
画像診断で異常が認められても、症状の軽い患者さんは、大勢いらっしゃいます。
治療に前向きに取り組めば、症状が改善する可能性はあるのです。
普段の動作や姿勢に気を付け、腰に無理な負担がかからないように配慮しましょう。
ただし、痛いからと動かないでいると悪化しやすいので、症状に合わせて適度に運動してください。
また、ツボ治療は、試す価値のある優れた治療法です。
ぜひ日常生活に取り入れて、少しでも楽になるようにつとめてください。
※参照・参考:日本整形外科学会ホームページ https://www.joa.or.jp/public/publication/pdf/joa_029.pdf
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