戦国時代の戦国武将たちはどのような食事をしていたのでしょうか。
戦国時代と現代の食文化を比べてみますと、今では当たり前に食べている食材が、戦国時代には思想の観点から食べられていなかったり、逆に現代ではほとんど食卓に並ぶことがない食材がごく一般的に食べられていたことなど、食文化はガラリと異なっています。
本記事では、戦国武将の食生活について説明していきます。
戦国武将の食生活
現在わたしたちが口にしている食べ物や料理は、冷蔵庫や冷凍庫の発明や明治維新以降の文明開化の影響を大きく受けています。
しかも、当時はごく当たり前のように食卓に並んでいた食料がいまでは入手困難であまり食べられないものもあったりします。
また、現代では普通に食されている食材でも、戦国時代の思想上の観点から当時は食べてはいけないものとされていた食材もありました。
では、それら戦国武将の食事について細かく見ていくことにしましょう。
武士は一日二食、米は1日5合
まず、食事の頻度についてですが、戦国時代の人々はどんなに裕福な武家であっても基本は一日二食でした。
当時の一般的なごはん時は午前7時~9時までの間と午後3時から5時までの間でした。
これを読めば少ないような印象をうけるのですが、武田信玄に仕えた家臣の食事に関する記録を参考にすると、武士は一日5合のお米を消費していました。
つまり、一食あたり2.5合を平均に食べていた計算になります。
たまたま記録に残っていた戦国時代のご先祖様がフードファイターなのでは?
と純粋に質問したい方もいるでしょう。
実はそれ以外の記録や、大名が発給した文書をみても、人数あたりのお米の量がだいたい1日5合前後となるので、1食2.5合のお米を食べていたということは信憑性のある数値だと言えます。
なぜそんなにお米を食べていたか、理由についてあげるとすれば、
- 武士は常に鍛えておりみんなアスリートなみにバキバキの体であった。
- 戦時中に身に着ける具足は全部合わせると最低でも20kgもあったので、それを着て走り回ったり5kg前後の武器を振り回すには相当なカロリーを消費していた。
- 具足を着ていてもパフォーマンスが発揮できるように普段から具足を着て訓練していたと考えられている。
このように、現代のアスリート並みの運動量のあった当時の戦国武将にとっては妥当な食事量であったと考えられます。
獣の肉は食べちゃダメ
戦国時代の人々は、思想上の観点から牛肉や豚肉などいわゆる”ももぢい(獣肉)”を食べてはいけないとされていました。
これは「むやみに生き物を殺生してはいけない」とする仏教の教えや「獣の肉を食べると自分が獣になる」という迷信、農耕を手伝ってくれる牛馬に対する冒涜であると考えていたためです。
現に農村地帯ではいまでも馬や牛を神として祀っており、その神社の氏子は極力牛肉を食べることを控えている地域さえあります。
そのような考えからか、戦国時代の人々の主なタンパク源は魚や鳥肉で、なぜかウサギも鳥と同じ分類として扱われていました。
ウサギが1羽2羽…というように数えるのは、この名残だと言われています。
食事のお作法や独自ルール
戦国武将たちは武家として幼少期から食事についてもお作法を叩きこまれていました。
冠婚葬祭やコンプライアンスで定められているマナーのようなものを日々訓練されていたのです。
日本では礼に関するマナーのほとんどが小笠原礼法をもとにして定められました。
奈良時代に流鏑馬をはじめたことや敬礼は45度、会釈は15度とすることも小笠原礼法の規定です。
宴会の席決めでうるさく言われる上座下座も弓道における神座(上座)と下座から来ています。
また、戦国大名たちは自身の領土でのみ通用する分国法を定め、その土地に適した法律を作りました。
駿河の今川家が定めたとする法律「今川仮名目録」には、お米を食べる際、ひと口目は必ず頂上部から箸をつけるべしと定めています。
鷹狩りの戦利品は最上級のごちそう
鎌倉時代以降、武士たちは天皇や貴族などの公家を真似て、鷹狩りをするようになりました。
鷹狩りは鷹を用いて獲物を獲らせる狩猟方法の一種で、中国では春秋戦国時代から王侯の娯楽として親しまれました。
鷹狩りは単純に食料を得るためではなく、自分の指揮のもとで手下の者を自由自在に動かしつつ、獲物を弓で射ることから実戦的に用兵を学ぶ訓練の一環も担っていました。
さらに、鷹などの猛禽類は飼育が非常に難しく、食物連鎖の上位に食い込む鳥なので数もそれほど多くはありませんでした。
そのような動物を飼育できる「権力や財力があるよ」という自分のステータスを誇示するためのツールでもあったので、戦国大名たちもこぞって鷹狩りをしていました。
その鷹狩りでは野ウサギやイタチなどの小動物を得ることができるのですが、鷹の強さにあやかるということで、武士にとっては極上のごちそうでした。
鷹狩りで獲ってきた獲物を自分の仕える殿様や天皇陛下に献上すると、恩賞としてボーナスや俸禄のアップ、さらには官職まで与えられることがありました。
戦場でのごちそうは大根
戦国武将たちでさえ、戦時中は好きなものばかりを口にすることはできません。
何日続くかも見当がつかないので、戦場に持っていく食料は干物や塩漬け、酢じめなどの日持ちする食料を持っていき食べていました。
野菜にいたってはカピカピに乾燥させるか塩や酢でしなしなになったものを口にしており、みずみずしい大根はひときわ食欲をそそる食材でした。
まとめ
戦国武将たちの食生活についてご説明いたしました。
武士は一日二食、一回の食事でお米2.5合を平らげるということでしたが、彼らとは運動量がまったく異なるので私たちが真似することはあまりおすすめできません。
獣肉を食せなかったというのも現代では考えられないことかもしれませんね。
私は牛肉や豚肉を何不自由なく食べることができ、おいしい牛丼のチェーン店がそこらじゅうに乱立している時代に生まれてくることができて幸せだなと感じています。
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