スマホの使い過ぎで、首や頭の後ろが痛い!
その症状は、スマホ症候群のひとつとされる「スマホ首」かもしれません。
近年のパソコンやスマホの普及で、首や後頭部の痛みに悩む人が急増しています。
モニターや画面を注視し続けると、自然と顔が肩より前に出てしまい、首や肩に大きな負担がかかります。
また、仕事や趣味などにおける、長時間の下向きや猫背という「不良姿勢」は、さまざまな不快症状を招いてしまいます。
今回は、その中でも多くの人が患う「ストレートネック」と「後頭神経痛」をとりあげて詳しく解説していきます。
痛みを和らげる対策もご紹介しますので、パソコンやスマホが仕事や日常生活に不可欠という人は、ぜひ参考にしてください。
スマホ首も後頭神経痛も、スマホ症候群の症状

スマホ症候群とは、スマートフォンやタブレットの長時間使用において、不良姿勢や過労、関節や筋肉の酷使などがひきおこす症状の総称です。
その症状としては、
- 首や肩のコリや痛み
- 目の疲れやドライアイ
- 手指や手首の腱鞘炎
- 手のしびれや肘の痛み
- 頭痛や吐き気
- めまいや耳鳴り
など多岐にわたります。
首に症状があらわれる「スマホ首」の中でも、頚椎(首の骨)のカーブが失われ、まっすぐになった状態を「ストレートネック」と呼びます。
また、首の後ろの筋肉が硬くなって頭痛がおこる神経痛が「後頭神経痛」です。
今回はこの「ストレートネック」と「後頭神経痛」について詳しく説明していきます。
下向き、猫背の不良姿勢で首が痛い「ストレートネック」

長時間の下向きと猫背で、ストレートネックになると、首に痛みが生じます。
首の骨の正常なカーブが失われると、頚椎に障害が!?
人の背骨は、横から見るとS字を描くことで、上体の重さを吸収するスプリングの役割を担っています。
正常な頚椎では、前方凸の緩やかなカーブを描いて、重い頭(体重の約10%)を支えています。
デスクワークや作業、家事や趣味などで、長時間下を向いていると、7つの頚椎がつくる正常なカーブが失われていきます。
首を下に曲げる姿勢を継続することで、首の筋肉や椎間板に負担をかけてしまう、ストレートネックの状態になりかねません。
さらに首の痛みを我慢してこの不良姿勢を続けると、神経や血管が圧迫されて、さまざまな症状に悩まされることになるでしょう。
また、パソコンなどのモニターを、顎を突き出して覗き込み、猫背で作業を続けると、頚椎のカーブが増してきます。
首を反らす姿勢は、首の筋肉や関節に負担をかけるので、頚椎の変形や靭帯の肥厚をおこしやすくなるでしょう。
不良姿勢による頚椎への負担は、椎間板や関節、靭帯などの障害を引き起こし、首の脊柱管狭窄症に至る場合もあるので注意が必要です。

ストレートネックの症状と治療
ストレートネックになると、首や肩のコリや痛みを強く感じ、上を向きづらくなります。
さらに進行すると、腕や手の痺れや倦怠感、頭痛や吐き気、めまいや耳鳴りなどの症状があらわれるでしょう。
整形外科では、X線検査でストレートネックを確認し、MRIなどで他の頚椎疾患との鑑別が行われます。
痛みが強いときは、患部の安静とアイシング、消炎鎮痛剤の内服と外用(湿布や塗薬)が処方されます。
痛みのピークを過ぎたら、温熱療法や電気治療と運動療法などの理学療法が施されます。
さらに姿勢を含む生活習慣の改善と、筋肉トレーニングなどが勧められるでしょう。
こんな首の痛みは要注意!
首から肩や背中、腕や手指に痛みや痺れ、感覚が鈍い、力が入らないなどの症状がみられたら、要注意です。
- 頚椎捻挫(むちうち症)
- 変形性頚椎症
- 頚椎症性神経根症
- 頚椎症性脊髄症
- 頚椎椎間板ヘルニア
- 後縦靱帯骨化症(こうじゅうじんたいこっかしょう)
などの疾患が疑われます。
また、甲状腺、リンパ節、唾液腺、下咽頭、食道、皮膚などの病気がかくれている場合もあります。
普段と違う症状があるときは、かかりつけ医に相談してください。
※首の痛みの詳細は、こちらの記事も参考にしてください。
長時間の下向きで、頭が痛くなる後頭神経痛

後頭神経痛は、「大後頭神経」「小後頭神経」「大耳介神経」が頭に痛みをおこす神経痛の総称です。
長時間下向きのスマホ操作などで、疲労して硬くなった首の後ろの筋肉が、これらの神経を圧迫して発症します。
また、緊張型頭痛やむちうち症、変形性頚椎症の患者さんなども発症しやすいとされています。
後頭神経痛の症状は?
後頭神経痛の症状は、突然首の後ろから後頭部に痛みが走り、その痛みが耳の後や側頭部、頭の頂上や上あごなどに及ぶこともあります。
主に皮膚の表面に、ビリビリ・ジンジン・チクチクするような痛みを感じます。
やがて電気が走るような痛みを繰り返し、悪化すると、指で軽く触れただけでも激痛が生じるようになります。
強いストレスを受けたり、雨の前日に発症しやすく、数秒間から数時間の痛みが、数週間持続することもあるでしょう。
後頭神経痛の診断と治療
後頭神経痛はその症状と、髪の毛の生え際で、後頭骨と首の筋肉の境目にある圧痛点で診断します。
ぼんのくぼの上にある後頭骨の出っ張りの外側、約2.5cmから大後頭神経が、さらにその約2.5cm外側から小後頭神経が出ており、押すと強く痛みます。
脳の疾患が疑われる場合は、鑑別のため画像検査がおこなわれるでしょう。
神経内科やペインクリニックでは、神経痛の内服薬の処方やトリガーポイント注射、神経ブロック注射が施されます。
なお、消炎鎮痛薬は無効で、三叉神経痛の特効薬「カルバマゼピン」が有効との報告もあります。
※後頭部を強くマッサージすると、神経を傷つけてしまい、症状が悪化することもあるのでご注意ください。
こんな頭痛は要注意!
- 頭をぶつけたり、コンタクトスポーツのあとに続く頭痛
- 突然の激しい頭痛
- 手足の動かしづらさを伴う就寝時の頭痛
- めまいや声のかすれを伴う後頭部の激痛
- 微熱がある中高年のこめかみの痛み
※脳や血管などの疾患が疑われますので、至急専門医を受診してください。
※頭痛の詳細は、こちらの記事も参考にしてください。
ストレートネックと後頭神経痛のセルフケア

病院での治療と並行して、症状を和らげる体操やテーピングなどを試してみてください。
首の後ろのコリを和らげる体操のコツは?
一般的な首や肩の体操に少し手を加えると、より効果的な運動療法になります。
〈下を向いて、首の後ろの筋肉を伸ばす体操〉
- 首の後ろの筋肉をさぐり、コリや押して痛む箇所を見つけます
- コリや圧痛点のすぐ下に、指先の腹をしっかり当てて、下方(背中の方)へ軽く引きます
- そのまま、首をゆっくりと前に曲げていきましょう
- 首の後ろの筋肉と筋膜が、ここちよく伸びるのを感じながら、10~20秒保ちます
※首のコリを感じたときや、起床時と入浴後などに行うとより効果的です
〈上を向いて、首の後ろの筋肉を縮める体操〉
- 首の後ろの筋肉をさぐり、コリや押して痛む箇所を見つけます
- コリや圧痛点に、指先を軽く当てたまま、首を2秒かけてゆっくりと反らしていき、上を向きましょう
- つぎに、首を2秒かけて元の位置にもどします
- 首の後の筋肉を縮めて伸ばす運動を、痛くない範囲で3回繰り返して終了
- 他にコリや圧痛点があれば、同様に軽く指先を当てて、縮めて伸ばす運動を3回繰り返します
※首のコリを感じたときなどに、随時行ってください
〈肩をすぼめて、首から肩の筋肉を緩める体操〉
- 首の後ろから肩先までの筋肉をさぐり、コリや押して痛む箇所を見つけます
- コリや圧痛点に、指先を軽く当てたまま、肩を2秒かけてゆっくりと上げていき、肩をすぼめます
- つぎに、肩を2秒かけて元の位置にもどしましょう
- 首から肩の筋肉を縮めて伸ばす運動を、痛くない範囲で3回繰り返して終了
- 他にコリや圧痛点があれば、同様に軽く指先を当てて、縮めて伸ばす運動を3回繰り返します
※肩のコリを感じたときなどに、随時行ってください
超簡単!あおむけゴロ寝
三井弘整形外科・リウマチクリニック院長が推奨する「あおむけゴロ寝」は、首の痛みを軽減させる簡単な方法です。
畳やフローリングに、手のひらを上に向けて、大の字に寝るだけで、首の筋肉の休息と頚椎の矯正が期待できます。
また、仰向けで後頭部を床に押しつける筋トレ(20秒を2~3回)は、首の後ろの筋肉が鍛えられるので、ストレートネックの改善に有効でしょう。
首コリや後頭痛には、テーピングが有効
患部に、市販されている伸縮性のテープを、引っ張らないで貼ってください。
「後頚筋Hテープ」は、長時間同じ姿勢の作業で首の後ろがこり固まり、後頭部に鈍痛が続くときに有効なテーピングです。
緊張していた首の後ろの筋肉がほぐれて、血行がよくなり頭痛も軽減しやすいでしょう。
<後頚筋Hテープ>
- 幅2.5cm、長さ15cmのテープを2本
- 幅2.5cm、長さ10cmのテープを1本
- 首を前に曲げ、長さ15cmのテープの端を、髪の生え際の中央からやや右側に付着させます
- そのまま、首の骨のわきに沿って、下へ向け貼っていきましょう
- 左側も同様に、長さ15cmのテープを、髪の生え際から背中に向けて貼ります
- 首をまっすぐに戻して、首の一番痛い箇所に、長さ10cmのテープの中央を、横向きに付着させます
- 縦に貼った2本のテープと交差させるように、横に貼っていき完成です
<肩こりを伴う場合は、「上僧帽筋テープ」を追加>
- 幅2.5cm、長さ20cmのテープを2本
- 首を左横に倒し、テープの端を、右側の肩先に付着させます
- そのまま、右肩から首の右横、髪の生え際まで貼っていきましょう
- 左側も同様に、首を右横に倒し、左側の肩先から、首の左横に向け、髪の生え際まで貼り完成です
痒くなければ2日くらい貼り、入浴でテープが濡れたら、ドライヤーで乾かしてください。
痛みが強くなったり、痒いときは使用を中止してください。
トリガーポイント療法で痛み軽減

不良姿勢による筋肉のシコリが、首や頭の痛みの原因になることがあります。
スマホで負担がかかる筋肉を押して、患部にひびくシコリをあれば、そこがトリガーポイント(治療点)です。
「3~4秒押して、パッと離す」を数回か、「30秒間押し続けてパッと離す」を2~3回試してみてください。
押す強さは、痛きもち良いくらいの強さで十分です。
症状が悪化するときは、中止してください。
〈後頚部の痛み〉
- 板状筋群……首を後ろに反らしたときに緊張する、後頚部の筋肉の中央(首の中心から外側へ指幅1本)
- 僧帽筋……肩をすくめたときに緊張する筋肉の中央(首の付け根と肩先を結んだ線の中央)
- 肩甲挙筋……側頚部(首の横)の中央で、肩をすくめたときに緊張する筋肉
- 斜角筋……首を横に倒したり、回すときに緊張する、側頚部の筋肉
- 棘下筋……肩甲骨の下半分にある筋肉のやや外側
〈後頭部の痛み〉
- 僧帽筋……肩をすくめたときに緊張する筋肉の中央(首の付け根と肩先を結んだ線の中央)
- 胸鎖乳突筋……乳様突起(耳の後にある後頭骨の出っ張り)から、鎖骨と胸骨(胸の中央の骨)までの筋肉の上・中・下部
- 板状筋群……首を後ろに反らしたときに緊張する、後頚部の筋肉の中央(首の中心から外側へ指幅1本)
- 後頭下筋群……後頭骨のキワで、首を後ろに反らしたときに緊張する筋肉
スマホの画面は、顔の正面に!

外出先(電車の中など)で、腰かけてスマホなどを操作するときは、どうしても姿勢が悪くなります。
膝の上で操作を続けると腕は楽ですが、下向きで猫背の不良姿勢になるので、首から背中に大きな負担がかかります。
画面を顔の正面に保持できれば、首への負担は減りますが、肩関節が前に巻き込みやすいので注意しましょう。
片手スマホの場合は、肘を反対の手で支えると、比較的楽に操作できます。
自宅や職場では、スマホやタブレット用のスタンドを利用しましょう。
ネットなどで、1,000~2,000円で販売されています。
スタンドのアームが硬くてしっかりした製品を選ぶと、端末を操作しやすいですよ。
スマホ症候群は、生活に支障が出る前にケアしましょう
今回は、スマホ症候群にみられる、ストレートネックと後頭神経痛の症状や治療と、セルフケアをご紹介しました。
日常生活や仕事で、スマホやパソコンが不可欠の人にとっては、腱鞘炎や目の疾患などと並び、とてもつらい症状ですね。
悪化させると、普段の生活にも支障がでてきますので、スマホなどの長時間使用は、なるべく避けるようにしてください。
また、首や頭の痛みは、怖い病気がかくれている場合もあるので、異常を感じたら早めに専門医を受診しましょう。
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