1964年、アメリカはニューメキシコ州ソコロの荒れ地に、UFOらしき物体が轟音をたてて墜落した。
現場に駆けつけた警官は、白いコスチュームに身をつつむ、小柄な2人のヒューマノイドに遭遇!
本物のUFOか、熱気球とその搭乗員を誤認したのか。
50年前の謎多き第三種接近遭遇の全貌とは?
勤務中の警官がUFOとエイリアンを目撃
いまからおよそ50年前の1964年4月24日。
アメリカ合衆国ニューメキシコ州ソコロのさまざまな場所で、複数の市民が奇妙な体験をした。
ある者は空中を低空で飛行する、青い光を放つ物体を目撃した。またある者は航空機の離着陸を思わせる大音響を耳にした。たちまち警察署や近隣のテレビ局に複数の通報が寄せられた。
けれど、その中で一人の男性だけが次のように主張した。
自分は物体が離着陸する近くに居合わせたと。
そして、それは宇宙船以外のなにものでもないらしいと。
男の名は、ロニー・ザモーラ(Lonnie Zamora)。
ザモーラのことばを信じるなら、彼はUFOとの驚くべき遭遇をはたしたことになる。
空に浮かぶ物体を見たとき、スピード違反の車とカーチェイスを演じていた彼は呆気にとられて、目下の業務を忘れそうになった。
そう、そのときザモーラはソコロ市警の保安官として勤務中だった。
涸れ谷に不時着した銀色の楕円
ハイウェイを走行中、彼は突然の轟音に注意を奪われた。
それは高音で始まり、やがてゆっくり低音に変わっていった。
次にザモーラの目がとらえたのは、空中のはるか高みに浮かんで炎を噴き上げる、青みがかったオレンジ色の光を放つ巨大な球形だった。
物体は降下しつつあった。
違反車両の追跡を放棄し、彼は近くにある鉱山用のダイナマイト貯蔵庫の方に急行した。
その爆発の可能性を思い浮かべて─。
図らずもその日はザモーラにとって人生でいちばん長い日となった。
やがて見晴らしのきく丘の上に出たザモーラは、前方150メートルほどの涸れ谷に、銀色に輝く乗り物を見つけて車を降りた。
谷からは金属音が聞こえてきた。
その不審な物体は卵型で、窓もドアもなく、側面には赤いマークのようなものが見えた。
それは脚のような桁(けた)で直立していた。
時に17時45分─。
夕方とはいえ、まだ明るい空の下、ザモーラは白いつなぎを着た2人の小さなヒューマノイドをとらえた。
近づいていくとかれらは警官に驚いた様子を見せ、ふっと姿を消した。
ついで、ドアが閉まるような物音とともに、さきほど耳にしたのと同じ轟音があたりをつつんだ。
見れば、物体の下方から炎が吹き出ていた。
これに恐れをなしたザモーラは停めてある車に逃げ戻った。
実直な警官
たった今眼にしたことを報告しようと無線機に手を伸ばすやいなや、謎の球体は機体の底から青い炎を噴きながら上昇し、一度、地上3,4メートルほどのところに浮上した。
その後信じられないスピードで、南西方向に飛び去っていった。
ザモーラに呼び出された同僚は、「着陸装置」が地面に接触した際に生じたぎざぎざな窪みと、離陸の際の焼け焦げた葉群をはっきりと眼にした。
事件の確かな証拠と思われた。
その後、この事件についてザモーラにインタビューした数人の人々は─そこにはジャーナリストや空軍関係者が含まれていた─一様に同じ結論にたどり着いた。
要点は次の2点にしぼられた。
- 「ロニー・ザモーラがなんらかの物体を目撃したこと、そしてそれが彼に強い印象を残したことは間違いない」
- 「彼の証言の信憑性にはなんら問題がない。ザモーラは真面目な警察官であり、この地域を飛ぶ航空機そのほかにも精通している」
その正体は熱気球?
専門家のそんな判断にもかかわらず、炎をあげるUFOの正体が「熱気球だったとする説」を唱える者が現れた。
その理由は、
- 謎の物体の側面の赤いマークは気球を製造していた会社のロゴ・マークにそっくり。
- ザモーラは視力が弱かったので、不時着した熱気球とその搭乗員を思わず見誤ったのではないか
というものだった。
これに追い打ちをかけたのが、「大学生によるイタズラ説」だった。
事件から48年後の2012年、ザモーラの目撃例は、ニューメキシコ工科大学の学生たちによる悪ふざけだったとの報告がなされた。
確かにザモーラは目撃の途中でメガネを失くしている上に、UFOの姿を「気球のようだ」とも表現していた。
しかし、次のような理由から、この人騒がせな「イタズラ熱気球説」は否定された。
まず、気球のバーナーは地面に焼け焦げの跡を残さない。
またプロジェクト・チームの調査によれば、謎の物体の離陸時の推定速度は時速1700キロメートルほどであり、たとえヘリコプターでもこんなスピードが出せるはずがなかった。
いまなお続く謎
一度は劇的な解決をみたはずの「ソコロ エイリアンUFO目撃事件」だが、かくして、それは再び、ミステリーの領分に組み入れられて現在に至っている。
謹厳実直なひとりの叩き上げの警官が、荒れ地の真ん中で眼にしたものは一体なんだったのだろうか?
彼の記憶はきわめて正確で、その証言に曖昧なところは皆無だった。
それにしても、UFOを眼にすると、ひとは不幸になるのだろうか? まさかそんなことはあるまいが!
後年、ザモーラはたびたびの取材や調査への協力、また目撃をでっちあげだとする非難や、彼を狂人とする誹謗中傷にすっかり嫌気がさして、UFOを見たことを後悔したという。
そして、ついには事件への関与を否定するようになった。
もし、このインシデントが一つだけ良い結果を残したとすれば、ザモーラの目撃例に刺激されたのか、その後、ニューメキシコ州では空を見上げる者が急増したという。
そのため、UFOの目撃件数が跳ね上がった。
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