「のどが痛い!」 誰もが経験するつらい症状です。
自然に治る場合もありますが、専門医の治療が必要になることも。
「のどが腫れる」「のどがつかえて飲み込みにくい」「声が枯れる」など、痛みに伴うのどの症状とその原因はさまざまです。
さらに、のどに痛みをおこす病気は、数多く存在します。
重症化して緊急措置を要する場合や、腫瘍などの重病が隠れていこともあります。
風邪くらいと我慢したり、仕事が忙しいからと無理をしてはいけませんね。
また、のどの痛みを和らげ、早く治すためには、加湿やうがいなどのセルフケアも大切です。
そこで今回は、のどが痛む原因と対策、そしてのどの病気の代表「かぜ症候群」の詳細をお届けします。
のどが痛いのはなぜ?
のどは咽頭(いんとう)と喉頭(こうとう)からなり、鼻の奥から気管の入口までの空気が通る道と、口から食道までの飲食物が通る道があります。
のどには、呼吸・嚥下(えんげ:飲み込む)・発声の働きと、外敵から身を守る機能が備わっています。
空気や食物が通過するのどには、ウイルスや細菌などの外からの攻撃を防御する働きがあります。
のどが外敵により損傷を受けると、体を守るための炎症反応がおきます。
外敵と戦い、患部を修復するために血液が集まるので、のどが赤く腫れて、痛みや熱感が生じるのですね。
のどが痛くなる主な原因
ウイルスや細菌
のどがウイルスや細菌の攻撃を受けて、のどに炎症がおきます。
声の酷使
カラオケやスポーツ観戦などで、大声をだし続けると、のどが炎症をおこします。
お酒とタバコ、刺激物
お酒を飲み過ぎると、アルコール分解に大量の水分がいるので、翌朝のどが乾燥して痛くなります。
度の強いお酒やタバコのタール、刺激の強い食品などは、のどに慢性的な炎症をおこすことがあります。
飲み過ぎ、吸い過ぎ、食べ過ぎには注意しましょう。
乾燥
乾燥により、のどの粘膜の表面を覆う粘液が固まると、ウイルスや細菌を排出する粘膜の働きが低下します。
病原体がのどに付きやすくなるので、炎症によるのどの痛みが生じるのです。
アレルギー
食物や花粉などによるアレルギーで、のどに痛みやかゆみを感じることがあります。
花粉症では、アレルギー性咽喉頭炎のほか、のどまで落ちてきた鼻汁が原因で、炎症をおこす場合があります。
また、鼻が詰まって口呼吸になると、のどが乾燥して痛くなります。
秋の花粉症(ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ、カモガヤなど)は、喘息(ぜんそく)症状の原因にもなるので、注意が必要ですね。
のどが痛い:合併症状から疑われる病気
のどの痛みにともなう症状から、疑われる病気をみていきましょう。
のどが腫れて痛い
のどの奥の扁桃腺(へんとうせん)や、咽喉頭などが腫れて痛い。
- 咽頭炎、喉頭炎、扁桃炎
- 急性喉頭蓋(こうとうがい)炎
- 扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうよう)
- 咽後膿瘍
- 腫瘍
※のどの腫れの詳細は、こちらをご覧ください。
「のどが腫れる原因は?のどが腫れる病気の症状や原因について詳しく紹介!」
のどがつかえる
のどの違和感や異物感、つかえる、つまった感じなど。
- 咽頭炎、喉頭炎、扁桃炎
- 咽頭がん、喉頭がん
- 逆流性食道炎
- 甲状腺疾患
- 副鼻腔炎
- 食道がん
- 咽喉頭異常感症
※のどのつかえの詳細は、こちらをご覧ください。
「のどがつかえる?のどに違和感がある時に考えられる病気とその症状について解説」
声の異常(嗄声:させい)
声がかれる、かすれる、出しにくいなど。
- 喉頭炎
- 声帯ポリープ
- ポリープ様声帯
- 喉頭がん
- 半回神経マヒ(声帯マヒ)
- 逆流性食道炎
※声の異常の詳細は、こちらをご覧ください。
「声がおかしい?声の異常は重大な病気のサインかも?声の異常の詳細と原因となる病気について」
飲み込みにくい(嚥下障害:えんげしょうがい)
飲食物が飲み込みにくい、むせるなど。
- 扁桃炎
- 咽頭がん、喉頭がん、食道がん
- 逆流性食道炎
- 脳卒中
- パーキンソン病
- 認知症
- 重症筋無力症
- 鉄欠乏性貧血
- 水痘・帯状疱疹ウイルス感染
※嚥下障害の詳細は、こちらをご覧ください。
「物が飲み込みにくい!「嚥下(えんげ)障害」の症状と原因について」
のどが痛いときの対策
加湿
のどを乾燥による炎症から守るためには、加湿が有効です。
加湿器の使用や濡れたタオルなどを干すなど、部屋を乾燥させない対策が大切です。
室内の湿度は、40~50%を維持するとよいでしょう。
マスクやのど飴も、のどの湿度を保ってくれます。
のどをうるおすための水分摂取は、手軽で即効性のある手段です。
のどに付いたウイルスや細菌を、洗い流す効果も期待できますね。
一口でもよいので、こまめに水分を補給しましょう。
殺菌
うがい薬や塗り薬、のどスプレーやドロップ剤で、のどのウイルスや細菌などを殺菌・消毒しましょう。
薬物療法
病院では、症状を軽減させる対症療法として、解熱鎮痛剤などが処方されます。
また、のどに白い膿がついているなど、細菌感染が疑われるときは、抗生剤を投与します。
ウイルスの増殖を抑えるために、坑ウイルス薬が使われる場合もあるでしょう。
なお、多くの医師が風邪のひき始めには、漢方薬の「葛根湯(かっこんとう)」をおすすめしています。
※お薬は、専門医や薬剤師の指示に従って服用してください。
アイシング
のどが炎症をおこして痛むときは、冷却が症状軽減に効果的な場合があります。
凍傷に気をつけて、氷のうや保冷剤で、のどをアイシングしてみましょう。
冷やしても痛みが和らがないときは、専門医を受診してください。
なお、熱い飲食物や刺激物は、のどの粘膜を傷つけ炎症を悪化させるので、避けたほうがよいです。
免疫力を向上させましょう
たとえウイルスや細菌に感染しても免疫力が勝れば、発症しないか軽症ですみます。
過労やストレスを避け、規則正しい生活を心がけましょう。
十分な睡眠と適切な食事、適度な運動がおすすめです。
特に、血糖値の高い人は、免疫力が低下しやすいのでご注意ください。
健常な人でも、季節の変わり目は自律神経やホルモンのバランスが乱れがちなので、用心しましょう。
のどの痛みは「かぜ症候群」の主症状
かぜ症候群は、「鼻かぜ(急性鼻炎)」「のどかぜ(咽頭炎)」「扁桃炎」「喉頭炎」などの症状の総称です。
原因の約9割はウイルス
かぜ症候群(風邪)とは、主にウイルスにより、鼻腔・咽頭・喉頭などに生じる感染症のことです。
患部が急性の炎症をおこしており、この炎症が気管・気管支・肺に及ぶ場合もあります。
主な原因となるウイルスは、ライノウイルス、コロナウイルス、パラインフルエンザウイルスなどです。
なかでも、インフルエンザウイルスやアデノウイルスは、粘膜に障害をおこす力が強いので、細菌による2次感染が生じやすいでしょう。
小児では中耳炎や脳症、高齢者では気管支炎や肺炎をおこすことがあります。
風邪の症状が、肝臓や腎臓、脳の病気の場合もあるので、注意が必要ですね。
風邪の感染経路は、患者さんの咳やくしゃみで飛ぶ、ウイルスを含むしぶき(飛沫:ひまつ)による「飛沫感染」と、「接触感染」「空気感染」です。
うがい・手洗いとマスクは、風邪の予防に必須ですね。
風邪は1週間ほどで自然治癒します
一般的な風邪では、ウイルスに感染してから約12時間で、のどの痛みが発生します。
さらに鼻水、鼻づまり、咳(せき)、痰(たん)、声枯れ、発熱、頭痛、倦怠感、食欲不振、下痢、嘔吐などの症状があらわれます。
ちなみに、ウイルスは熱に弱いので、人の体は体温を上げてウイルスを退治しようとするのです。
風邪の症状のピークは2~3日、通常7~10日ほどで治るでしょう。
強い症状が10日以上続き悪化してきたり、咳が3週間以上続くときは、他の病気が疑われるので、専門医を受診してください。
こんな症状は、病院へ
下記のような症状が出た場合は病院へ行くようにしましょう。
- 39度以上の熱が3日以上続く(急に38度以上になったときも)
- のどが痛くて、飲み込めない
- 症状が辛くて、眠れない
- 息苦しく、ぜいぜい・ヒューヒュー音がする
- のどの奥(扁桃腺)に、白や黄色のカス(膿)がついている
- 黄や緑色の鼻汁や痰
- ひどい咳や痰が止まらない
- 舌に赤い斑点
- 耳の痛みや聞こえにくい
- 筋肉痛や関節痛、全身の倦怠感
細菌感染やインフルエンザ、呼吸器疾患などが疑われるので、内科か耳鼻咽喉科を受診しましょう。
なお、上記のような症状がなければ、普通の「風邪」の可能性が高いでしょう。
普通の風邪であれば、自然に治るものなので、安静と保温、水分と栄養補給に留意すれば、病院を受診する必要はないとされています。
薬局で薬剤師に相談し、症状を和らげるための市販薬を検討してもよいでしょう。
ただし、認知症の人が総合感冒薬を服用する際は、強い副作用に注意が必要といわれています。
風邪の症状で、耳鼻咽喉科を受診するメリット
耳鼻咽喉科では、風邪以外の病気を除外し、風邪の症状を和らげ、最短で治癒に導くことができます。
また、鼻汁の吸引や、鼻と口のネブライザー治療(吸入療法)などが受けられる点も、耳鼻咽喉科受診のメリットと言えます。
耳鼻科医による、風邪と風邪以外の病気との鑑別診断は、とても重要なことです。
風邪の症状に、緊急の措置を要する病気が隠れているかもしれないからです。
いつもの風邪と違うと感じたときや、小児や高齢者の様子がいつもと違う(元気や食欲がない、水が飲めないなど)場合は、迷わず病院に行きましょう。
風邪を治す薬はありません!?
風邪の8~9割は、ウイルスによる感染症です。
現在、「抗インフルエンザ薬」と「抗ヘルペスウィルス薬」以外、ウイルスに効く薬はありません。
抗生物質は、細菌にのみ有効なので、風邪の1~2割に対して必要最小限処方されますが、ウイルスによる風邪には効果がないのです。
ただし、下がっていた熱が再び出てきたり、鼻水やのどの痛み、鼻の周りや耳の中の痛みなどが悪化したときは、要注意です。
ウイルス感染した粘膜が、2次的に細菌感染をおこしている場合があるので、抗生物質の投与が検討されます。
また、のどの痛みと鼻水と咳が同程度で生じない風邪は、細菌感染の可能性が疑われます。
風邪と同様の症状がみられる、肺炎や扁桃炎、溶連菌感染や副鼻腔炎などは抗生物質投与の対象です。
通常の風邪には、解熱鎮痛剤、くしゃみ・鼻水止め、咳止め、痰を切る、喉の腫れを引かせる薬、うがい薬などが、症状を和らげるために処方されるでしょう。
なお、近年は「薬剤耐性菌」の問題があるので、抗生物質などの処方には慎重な医師が増えているようです。
おすすめの風邪対策
風邪を早く治すための対策をご紹介します。
睡眠不足は、風邪の敵
睡眠時間が不足すると、ホルモンバランスが乱れて免疫力が低下するので、風邪を引きやすいとの研究発表がされています。
特に寝始めの3時間は、良質な睡眠をとるように心掛けてください。
ソファーでうたた寝をしたり、テレビや照明をつけたまま寝てはいけません。
良質で十分な睡眠は、免疫力を向上させるので、ウイルス撃退に役立ちますよ。
うがいと鼻洗浄
少し濃い塩水でうがいをすると、粘膜の腫れにより神経が刺激されるのどの痛みを、和らげる効果が期待できます。
口内衛生も重要なので、歯みがきやうがいなどで、お口の中を清潔に保ちましょう。
生理食塩水(塩分濃度0.9%)のぬるま湯で、鼻洗浄を1日1~2回おこなうと、風邪の悪化を防ぎ、症状を軽減できるでしょう。
水分とビタミンC
風邪をひくと脱水になりやすいので、水分の補給が必要です。
常温の水を少しずつ、まめに口にするようにしましょう。
汗を多くかいたときはミネラルが不足するので、スポーツドリンクや経口補水液などを飲んでください。
ビタミンCを多量に摂取すると、風邪が早く治るとの報告は以前から多くみられます。
野菜や果物、サプリメントなどからビタミンCをとると良いでしょう。
消化のよい食事
食事は、消化のよい物をとるようにしてください。
おかゆや雑炊、うどんやスープ、豆腐やゼリー飲料などがよいでしょう。
病原体と戦うためには、十分な体力がいります。
食物の消化吸収には、多くのエネルギーを要するので、消化の悪い物は食べないでください。
食欲がないときは、無理に食べる必要はありません。
保温と入浴
熱に弱いウイルスを退治するために、体は体温を上げようとします。
寒気がして筋肉が震えるのは、熱を産生するためです。
この時に体を温めると、より免疫力が向上するでしょう。
また、高熱や倦怠感が強いとき以外は、入浴も効果的です。
ただし、長湯はせず、湯冷めしないように注意してください。
ハウスダストに注意
ダニやホコリなどのハウスダストは、免疫力を低下させます。
まめに掃除機をかけ、空気清浄機や布団乾燥機を利用しましょう。
のどの痛みや風邪にツボ療法
ツボ療法は、症状を和らげて、自然治癒力を高めてくれます。
ツボの位置を目安に、その周辺を押してみて、こりやしこり、冷えやへこみがあり、心地よくひびく箇所が治療点です。
痛気持ち良い程度の強さで、ゆっくりと3~5秒間ほど押して、ゆっくりと離す指圧を5~10回繰り返しましょう。
のどの痛みに効くツボ
- 感冒点(かんぼうてん):手のひら側で、親指と人差し指の骨が合わさる点、合谷(ごうこく)の真裏
- 大都(だいと):足の親指の内くるぶし側で、親指を曲げるとできる横じわの先端
- 尺沢(しゃくたく):肘の内側の曲がりじわの親指側外端から、中央に向かい指幅1本の点(咳にも有効)
- 孔最(こうさい):尺沢から手首の親指側に向かい指幅3本、肘と手首の間で上1/3の点(くしゃみや咳込みにも有効)
- 太谿(たいけい):足の内くるぶしのすぐ後ろの、くぼみの中
のどがイガイガ、ヒリヒリする痛みに効くツボ
- 天突(てんとつ):左右の鎖骨の内側の間にある、くぼみの中(痰のない咳にも有効)
風邪のひき始めに効くツボ
- 合谷(ごうこく):手の甲側で、親指と人差し指の骨が合わさる点の、やや人差し指寄り
- 風門(ふうもん):下を向くと出っ張る、首の後のつけ根にあるの大きな骨の突起から腰に向かい、2番目と3番目の突起の間の、指幅2本外側
東洋医学では、風邪は「風門」から身体に入るとされています。
風門を、ドライヤーや熱めのシャワーで温めると効果的です。
市販の温灸(せんねん灸など)を利用してもよいでしょう。
※ツボ治療で症状が悪化するときは、中止してください。
いつもの風邪と違う症状があれば病院へ
のどが痛む原因は多岐にわたるので、専門医の診察が必要な場合が多いですね。
のどが痛くて水も飲めない、息苦しいなどの症状がみられたら、耳鼻咽喉科や内科の受診を検討しましょう。
ただし、普通の風邪であれば、病院に急ぐ必要はありません。
休息をとり、水分と栄養の摂取に気をつければ、自然に治癒するでしょう。
風邪を早く治すためには「おすすめの風邪対策」も、ぜひ参考にしてください。
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