夕方になると、足がむくんで靴がきつい、靴下のあとがくっきり残る、足が重くでだるい、多くの方が経験する、足のむくみ。
国民生活基礎調査(平成22年 厚生労働省)によると、「足のむくみ・だるさ」に悩む人は全体で29%、女性は42%にのぼるそうです。
同じ姿勢でのデスクワークや、運動不足による筋力低下などが原因になりますが、病気が隠れているケースも珍しくありません。
たかが「むくみ」と見過ごさず、普段と違う症状を感じたら、内科を受診するようにして下さい。
今回は、むくみの原因と、マッサージやツボ押しなどの、セルフケアによる解消法をご紹介します。
足のむくみの原因が内臓の疾患でない方は、ぜひ参考にしてください。
皮膚の下に、水が溜まった状態が「むくみ」
静脈とリンパ管の働きが悪くなり、心臓に戻ってくるべき水分が足に溜まって、足がむくみます。
心臓のポンプ作用で、動脈血が酸素や栄養などを全身の細胞に運び、不要なものは静脈やリンパ管から心臓に戻ってきます。
起きている時は、心臓の吸引力と静脈の逆流防止弁の働き、そしてふくらはぎの筋肉の伸び縮みで静脈を絞り、血液は循環しています。
長時間立っていたり、座り続けると、ふくらはぎのポンプ作用が機能せず、流れが滞り足がむくんでしまうのです。
こんな「むくみ」には、要注意!
むくみが、内臓の異常を知らせるサインの場合もあります。
- 動悸や息切れなどを伴う足のむくみは、心臓の疾患が疑われることがあります。
- 食欲不振や全身倦怠感、黄疸(眼球や皮膚が黄色くなる)などを伴う身体のむくみは、肝臓の疾患が疑われることがあります。
- 血尿やタンパク尿、尿量の変化や高血圧などを伴う、顔や足のむくみは、腎臓の疾患が疑われます。
- 初期は自覚症状がほとんど無いので、注意が必要です。
- 全身倦怠感や眠気、運動能力が落ちてやる気が出ない、体重増加や寒がりなどに伴う身体のむくみは、甲状腺機能低下症が疑われることがあります。
汗が減る、むくみを押しても、くぼみが残らないなども特徴です。
内臓性は両足がむくみやすく、手や顔がむくむこともあります。
普段とは違う、身体の変化に気がついたら、専門医を受診しましょう。
むくみは通常、痛みや熱感を伴いません。
赤くはれたり、熱っぽく痛みが強いときは、病気による炎症が疑われるので、早急に病院を訪れてください。
足のむくみの原因について
足のむくみは、長時間の立位や座位(起立性浮腫)のほか、さまざまな原因でおこります。
・加齢
高齢者に多い原因は、足の筋肉の弱化による、ポンプ作用の低下です。
また、運動不足で筋肉を動かさないでいると、足の水分を心臓に戻すことが、より難しくなってしまいますね。
加齢による心臓や腎臓の機能低下なども、むくみの原因となります。
・内臓の病気
心臓疾患では、血液を送り出す力や吸い上げる力が弱まるため、静脈血が滞り、足がむくみます。
肝臓疾患になると、水分を血管内に保つ働きをするタンパク質(アルブミン)の量が減るため、血管から水分が染み出し、むくみます。
腎臓疾患になると、体内の余分な水分やミネラルを排泄できず、むくんでしまいます。
甲状腺機能低下症では、皮膚の下にムコ多糖類(水分を蓄える物質)が溜まって、押してもくぼみの残らない粘液性のむくみがでます。
・下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)
静脈血の逆流を防ぐ、静脈の弁の働きが悪くなると、足に血液が溜まり、静脈がこぶのように膨らんでしまいます。
足のむくみやかゆみ、重だるさや痛みがあらわれ、足がつりやすくなります。
長時間の立ち仕事を避け、弾性ストッキングを着用しますが、改善しなければ、血管外科での治療(血管内レーザー・高周波治療、ストリッピング手術など)になるでしょう。
・深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)
バス旅行や飛行機、病気で寝たきりなど、長時間の同じ姿勢で、足の静脈に血栓ができて、足がむくむことがあります。
血栓が肺の血管に飛んで、呼吸困難になる肺血栓塞栓症は、命を落とすこともあるので、要注意です。
近年、抗凝固薬が開発され、症状によっては外来治療も可能になりました。
・ホルモン
女性ホルモンの影響で、生理前はむくみやすくなります。
ホルモンのアンバランスは、自律神経の乱れを引き起こし、血流を停滞させます。
生理不順や生理痛の強いかたは、むくみやすいです。
妊娠中や産後も、血液量の増加や急激な減少で、むくみが出ます。
・体の冷え
体が冷えると、末梢の血管が縮んで血流が悪くなり、足がむくみます。
環境(寒さや騒音、臭いや振動など)や精神的なストレスを受けると、自律神経の交感神経が興奮して、血行不良によるむくみが生じます。
・肥満
肥満により、心臓に負担がかかり、むくみやすくなります。
脂肪が静脈やリンパ管を圧迫して、水分の移動を邪魔します。
・塩分や水分の過剰摂取
体内の塩分濃度が上がると、水分で薄めようとして、喉がかわきます。
ナトリウムは水分を溜める性質があるので、塩分や水分を過剰に摂取するとむくみます。
塩は軽くひとつまみで約1g、調味料や加工食品にも多く含まれています。
健康のためにも、1日10g以上摂らないようにしましょう。(1日の必要量は、3~4gだそうです)
・ミネラルやタンパク質の不足
カリウムやカルシウム、マグネシウムやビタミンB1、タンパク質などが不足すると、むくみやすくなります。
・薬の副作用
風邪薬や鎮痛剤、胃腸薬や漢方薬などの市販薬。
処方された糖尿病や高血圧の薬、抗ガン剤や抗生剤など。
むくみが治らなかったり、服用後違和感があるなど、副作用が疑われたら、担当医にご相談ください。
他に、炎症やアレルギーによりむくんだり、婦人科の癌の手術後に、片側の足が強くむくむことがあります。
むくみの治療は、保存療法や生活指導と利尿薬
むくみの原因となる内臓等の疾患があれば、その治療が最優先ですので、各専門科を受診してください。
内臓等の病気がなければ、理学療法を中心とする保存的治療と生活指導で改善を目指します。
改善しなければ、主に各種利尿薬が処方されるでしょう。
足を上げて、軽く動かしたり、さすって水分の流れを促し、弾性ストッキングや弾性包帯で圧迫して、足に戻ってこないようにします。
圧迫しながらの運動も効果があるそうなので、理学療法士の指導をうけましょう。
弾性ストッキングは、症状に応じて強度が選択されるので、担当医とよく相談してください。
利尿薬は、血中の塩分を尿として排泄し、むくみを取ります。
高血圧の場合は降下作用があり、主に朝から昼にかけて服用します。
1日5分!むくみを解消するマッサージ法
皮膚と筋肉の隙間(約5mm)のリンパの流れを促しましょう。
強く押さずに、皮膚の下を動かすイメージでさすります。
・まずは、足のつけ根から
あぐらをかいて、両手のひらで鼠径部(ふともものつけ根)のリンパ節を、ゆっくりと左右5回ずつ押しましょう。
・ふともものマッサージ
足を軽くのばして、膝から足のつけ根まで、両手のひらで包むように、優しくさすり上げます。
左右5回ずつ、太ももの裏側もお忘れなく。
・膝の裏側のリンパ節
膝うらに示指から小指を当てて、ふとももに向かい左右10回さすってください。
膝のお皿も、手のひらで同様にさすり上げましょう。
・いよいよ、ふくらはぎ
足首から膝うらにかけて、手のひらで包むように、優しくさすり上げます。
左右5回ずつ、すねの両脇もお忘れなく。
・最後につま先から
つま先から足首に向かって、足の甲と足のうらを左右5回ずつさすってください。
足首をゆっくりと左右に回してから、最後に足先から足のつけ根まで、さすり上げて終了です。
マッサージ用のクリームやジェル、アロマオイルなどを使うと、皮膚に優しく、気分よく続けられます。
ツボ押しで、セルフケア
気血水のバランンスを整え、水分の排出を促す足のツボです。
- 足三里(あしさんり)……膝のお皿の下部外側から、指幅4本下がった、骨のきわ
- 曲泉(きょくせん)……膝を深く曲げたときにできる、ひざ内側の曲がりジワの先端
- 三陰交(さんいんこう)……内くるぶしの中心から、指幅4本上がった、骨のきわ
- 復溜(ふくりゅう)……内くるぶしの中心から、指幅3本上がった、骨のきわ
- 太白(たいはく)……足の親指を曲げてできるシワの、かかとより
- 太渓(たいけい)……内くるぶしとアキレス腱のあいだの、くぼみにあります
- 湧泉(ゆうせん)……足のうらの中央よりやや上 指を曲げたとき、くぼむところ
- 失眠(しつみん)……かかとのふくらみの中心
「3~5秒間ゆっくり押して、ゆっくり離す」を3~5分間繰り返しましょう。
せんねん灸のような温灸も有効ですので、火傷に気をつけて試してみてください。
ツボ刺激には、こんな方法もあります。
・衝門(しょうもん)……足のつけ根の中央、少しくぼんだところ(鼠径部の真ん中)
両手小指の横腹をツボに当て、左右から中央に向かい、鼠径部に沿って、こすりおろしましょう。
心地よい程度の強さで、太ももが温かくなるまで、続けてください。
・無名穴(むめいけつ)……太ももの内側の真ん中で、圧痛の強いところ
腰掛けて、ツボに交差させた両手の4本指を当てて、ゆっくりと5回押します。
押すときに、太ももを閉じるように力を入れると、より効果的ですよ。
ストレッチやテーピングで、むくみ解消
足首回しや開脚、アキレス腱のばしなどのストレッチも、足のむくみ解消に効果的です。
もちろん、体操や軽い運動は、全身の血行を促し、筋肉の刺激にもなるので、ぜひ続けてください。
また、ふくらはぎのテーピングは、ポンプの役割をする筋肉の働きを助け、血流の改善が期待できます。
詳しい貼り方は、こちらの貼り方講座を参考にしてください。
むくみを予防する為に日常生活に気をつけましょう
長い時間座り続けたり、立ち続けないようにしましょう。
時々、お茶を入れたり、トイレに行ったり、少し歩きまわったりしてください。
座っている時は、足首の曲げ伸ばしや、ぐるぐる回す運動を頻繁に行います。
貧乏ゆすりも良いと言われています。とにかく、ふくらはぎの筋肉を動かしましょう。
立っている時は、何処かにつかまって、つま先立ちやかかと立ち、軽い膝の屈伸や足踏みをしてください。
昼間は、できるだけ脚を上げた状態を保つと、むくみの解消になります。
ぬるめの湯(38~39度)で、半身浴もおすすめです。
最初にふくらはぎを温め、次に太もも、最後に体の順で湯につかると、効果的です。
温めることで血行が良くなり、水圧が溜まった水分を押し上げる助けになるので、むくみを軽減してくれるでしょう。
足のむくみが治らず、だんだん悪化したり、足以外にもむくみが出てきたら、病気のサインかも知れません。
まずは、内科を受診しましょう。診察と検査の結果、必要であれば、専門医を紹介してくれるでしょう。
病気に関して言えば早期発見、早期治療が鉄則です。
何でも相談できる、ホームドクターを持つことをおすすめします。
運動不足や長時間の同一姿勢、水分や塩分の取りすぎが原因の足のむくみには、マッサージやツボ押しなどのセルフケアが有効な場合もあるので、ぜひお試しください。
また、日常生活では運動がいちばん大事ですので、とにかく楽しく体を動かす習慣を作るようにしましょう。
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