コップを持つと手が痛い、ペットボトルのふたが開けられない、指が曲がったまま伸びない……
これらは、手をよく使う女性が発症しやすい、腱鞘炎の症状です。
痛くても我慢して、日常生活を送ることが多い、手首や指の腱鞘炎の症状や原因、治療法を解説します。
ご自宅で治療できる、テーピングやサポーターの詳細もご紹介していきますので、参考にしてください。
手の腱鞘炎の代表、ドケルバン病とばね指
手首の親指側が痛む「ドケルバン病」、指のつけ根が痛んで曲げ伸ばしが不自由になる「ばね指」が、手の腱鞘炎の代表です。
関節を動かすために働く、筋肉と骨のつなぎ目のスジが「腱」です。指を反らすと、手の甲に浮き出てきますよ。
その腱を包んで保護し、動きをガイドする鞘(さや)を「腱鞘」と呼び、指や手首を動かすたびに、腱鞘の中を腱が行ったり来たりします。
手指を使いすぎるとそこが擦れしまい、腱鞘の内側が炎症をおこしたり、腱が腫れて腱鞘炎になります。
手の違和感が腱鞘炎症状の前ぶれ
腱鞘炎は、だるい・動かしにくい・腫れる、から始まります。
痛みが出るまでの潜伏期間が比較的長い疾患です。痛くないので、放置するケースが多いですね。
治療せずに使い続けると、押すと痛いが明確な圧痛点はない、動作により一瞬だけど激痛をかんじるといった症状があらわれてきます。
さらに進行すると、痛む箇所がはっきりと判るようになり、使用後も熱感やズキズキ痛が残り、力が入りづらいこともあるでしょう。
やがて、雑巾しぼりや野菜の皮むきなどの日常動作中は常に痛く、安静にしていても痛みが消えなくなってきます。
日常生活が困難になり、コップや箸を持ったり、ボタン掛けなどの何気ない動作が、痛くて出来なくなってしまいます。
ばね指は、特に朝方に症状が強いのが特徴で、自ら指の曲げ伸ばしが困難になります。
親指に多く、中指や薬指にも発生します。
手の使い過ぎが腱鞘炎の原因、なぜ女性に多い?
腱鞘という狭いトンネルの中を、腱が動きすぎて、摩擦で炎症がおきた状態が腱鞘炎です。
家事や仕事、手芸やスポーツなどで、手や指を酷使する人に多い疾患といえるでしょう。
近年は、キーボードやマウスのパソコン作業や、スマホの操作が原因の腱鞘炎が増えてきています。
更年期や妊娠時、産後に発症しやすいので、女性ホルモンの影響が考えられています。
筋力低下が腱に負担をかけることも、筋肉の比較的弱い女性に腱鞘炎が多い理由かもしれません。
また、糖尿病やリウマチ、透析患者にもよく発生するそうです。血流障害も原因の一つになるでしょう。
病院での腱鞘炎治療は、固定・理学療法・お薬・注射・手術
手指の痛みが強く、長引くときは、整形外科を受診しましょう。
腱鞘炎と診断されたら、局所の安静を保つために、シーネ(添え木)固定やサポーター、テーピングが施されます。
消炎鎮痛剤などの内服薬や湿布、塗り薬が処方されるでしょう。
痛みが強い場合は、腱鞘内ステロイド注射が行われます。
特にトリアムシノロンは、3ヵ月以上有効だそうですが、再発もあるようです。
保存療法で改善しなかったり、再発を繰り返す場合は、手術が検討されるでしょう。
腱鞘を切り開く「腱鞘切開術」と「内視鏡手術」があります。
腱鞘炎治療の固定法は、主に3種類
固定材料・包帯
アルミの添え木(アルフェンス)や取り外しのできる固定材料(シーネ)を当てて、弾力性の包帯を巻きます。
患部に合わせて成型できるので、的確な固定が可能ですが、取り外しが面倒です。
手指の場合、慣れないと自分で包帯を巻くのは難しいですよね。
サポーター
手首から指にかけて固定できるサポーターが市販されています。包帯に比べ、手軽に利用できます。
固定力は、巻く強さや素材で調整でき、アルミの添え木が装着できるものもありますので、症状に合わせて選びましょう。
手首だけを固定するタイプも、簡易でおすすめです。
着脱は楽ですが、既製品なのでサイズが合わないと違和感があります。
強く巻きすぎると、血流障害を起こすので、気を付けてください。
また、長期間使用した場合の筋力低下も心配ですので、夜間は必ず外しましょう。
テーピング
テーピングには、固定力の強い非伸縮性のテープや関節が動かしやすい伸縮性のテープ(キネシオテープ)を使用します。
ドラッグストアなどで簡単に入手でき、貼り方を覚えれば自分でいつでも使用できる手軽な治療法ですね。
貼り方により、固定力の調整ができるので、作業に支障がない程度の固定も可能です。
撥水加工のテープも発売されているので、多少の水仕事は、大丈夫ですよ。ただ、毎日使用するとかぶれ易いので、皮膚の弱い人には注意が必要です。
また、テープは使い捨てなので、ちょっとコスト高になってしまいます。
キネシオテーピングをしてみましょう【ばね指】
それでは早速、ばね指のテーピングをしてみましょう。多発する親指を例にご紹介します。
2.5cm幅の伸縮性のテープを、35cm用意します。(5cm幅のテープを2分割してもよいでしょう)
片端は親指に巻き付けるので、指の太さに合わせて、数cmの切れ込みを入れます。
切れ込み側を親指の指先(甲側)に、ゆるく巻いて固定します。
親指を中にして指を握り、手首を小指側に曲げましょう。
テープを引っ張らないように気を付け、親指→手首→肘へと貼っていきます。
テープの角は、丸くカットしたほうが、剥がれにくいですよ。
キネシオテーピングをしてみましょう【手首】
手首の腱鞘炎には、親指ばね指のテーピングの上から、手首のテープを貼っていきます。
5cm幅の伸縮性のテープを、10cm用意します。片端に3cmの切れ込みを入れます。
切れ込みのない側の中央を手首の痛むところに合わせて貼りましょう。
手首を軽く曲げて、切れ込み側の一方を手首の小指側の骨に向かって貼ります。
もう一方を少し広げて貼って、完成です。
軽症や再発予防には、5cm幅のテープを手首にぐるっと巻くだけでも良いですよ。
手首に強く巻くと血流を阻害するので、必ず引っ張らないで貼ってくださいね。
腱鞘炎の症状緩和に!マッサージやストレッチ
痛む部分は腱なので、筋肉を押すような強いマッサージは向きません。
消炎鎮痛剤の軟膏などを使って、患部をやさしく撫でるようにマッサージしてください。
マッサージの後、指や手首のストレッチをゆっくりと、痛くない程度に行いましょう。
指は曲げ伸ばし、手首は肘を伸ばしたまま、反らしたり曲げてみてください。
また、前腕(手首と肘のあいだ)にある、指や手首を動かす筋肉には、治療ポイントが点在します。
筋肉の上を探ってみて、患部にひびくシコリがあれば、トリガーポイントです。
イタ気持ちよい位の強さで、ひびきがなくなるまで、押してみてください。
根気よく続ければ、症状を軽減してくれるでしょう。
最後に
急性期は、患部の安静を保つための固定が重要ですが、長期におよぶと筋力が低下し、関節の動く範囲が狭くなります。
痛みのピークを過ぎたら、患部を温めてゆくりと動かすようにしましょう。
ちなみにキネシオテープには、運動痛を軽減する作用があります。テーピングは貼り方により、しっかり固定することも可能ですが、「動かしながら治す」治療法として、テーピングを利用したいですね。
また、サポーターやテーピングを利用すれば、手を使うときに患部に意識が向くようになります。
不用意に患部に負担をかける動作を防いでくれるので、手指の腱鞘炎でお悩みのかたは、ぜひ試してみてください。
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