ふくらはぎが腫れて痛い、むくんでだるい、歩くと痛む……
スポーツや仕事中の姿勢、加齢などが原因で、ふくらはぎに様々な症状が生じます。
今回は、「ふくらはぎ」や「すね」の痛みから疑われるケガや疾患をみていきます。
また、中年以降に多いふくらはぎの筋肉や腱の損傷と、下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)の詳細もお届けしますので、参考にしてください。
ふくらはぎの筋肉は、歩く・走る・飛ぶときに活躍
膝と足首の関節の間を、「下腿(かたい)」と呼びます。
ふくらはぎとは、この下腿の後面をさします。
下腿には、脛骨(けいこつ:すねの前の骨)と腓骨(ひこつ:すねの外側の骨)の2本の骨があり、ケガや疲労で骨折することがあります。
また、ふくらはぎの主な大きい筋肉は、腓腹筋(ひふくきん)とヒラメ筋で、合わせて下腿三頭筋といい、肉離れや炎症をおこすことがあります。
下腿三頭筋は、アキレス腱を介して踵骨(しょうこつ:かかとの骨)に付き、足首や膝を曲げるときに、働きます。
アキレス腱は、人体最大最強の腱ですが、ケガにはあまり強いとは言えません。
下腿の前面と外側にも、足首や指を動かす筋肉があり、傷めると歩行障害が生じるでしょう。
今回は、膝と足首の関節以外の下腿に発生する痛み、特に後面の「ふくらはぎの痛み」を詳しくみていきます。
ふくらはぎが痛む原因は、骨・筋肉・神経・血管にあります
ケガや腫瘍、神経痛や血管の病気などが、ふくらはぎやすねに痛みをおこします。
骨折や腫瘍による、下腿の痛み
- スポーツ時の転倒や交通事故、高所からの転落で、下腿に腫れや激痛、変形が生じて歩けなくなる……下腿骨骨幹部骨折(下腿中央から下部で脛骨と腓骨が折れる)
- ランニングやジャンプで、下腿の内側や前面が痛む……疲労骨折(患部への繰り返しの負担で発生する骨折で、脛骨に多い)
- ふくらはぎの内側、脛骨の後に腫れや痛み、運動痛がある……シンスプリント(走る・飛ぶスポーツに多い、骨膜の炎症)
- 若年者の下腿上部が、原因なく腫れて痛み、悪化する……骨肉腫(悪性の骨腫瘍)
- 小児の下腿中央が、原因なく腫れて痛み、悪化する……ユーイング肉腫(悪性の骨腫瘍)
- 下腿にできた硬くて大きなしこりが、急に大きくなる……悪性軟部腫瘍
- 若年者で、下腿上部にできた硬いしこりが、神経や腱を圧迫すると痛む……骨軟骨腫(良性の骨腫瘍)
- 下腿に弾力のあるしこりがあり、化膿すると腫れて痛む……粉瘤(ふんりゅう:アテローム:良性の軟部腫瘍)
- 押すと動くしこりで、神経のそばにできると痛む……脂肪種(良性の軟部腫瘍)
※骨折は整形外科、腫瘍もまずは整形外科、必要に応じて専門医を紹介してもらいましょう。
スポーツなどによる、ふくらはぎの筋肉や腱の痛み
- ダッシュやジャンプの後、ふくらはぎの内側で中央から上部にかけて痛む……肉離れ(筋繊維の断裂)
- スポーツ中、ふくらはぎの下部に強い衝撃を受けて倒れこみ、つま先立ちができない……アキレス腱断裂
- スポーツ中や明け方に、ふくらはぎがつって激しく痛む……腓腹筋痙攣(こむらがえり:疲労、血流障害、脱水、冷え、ミネラル不足などでおこる)
※筋肉や腱の損傷は、整形外科を受診してください。
血管や神経が原因の、ふくらはぎの痛み
- ふくらはぎが重だるく冷えて、歩くと痛み、休むと治る……閉塞性動脈硬化症(動脈硬化により、脚の血流が悪くなる疾患)
- 長時間同じ姿勢が続いた後、急にふくらはぎが赤黒く腫れて痛い……深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群:静脈に血の塊ができて詰まる:肺の血管に詰まると胸痛や呼吸困難)
- ふくらはぎやすね、太ももに痛みやむくみ、だるさがあり静脈がこぶ状に浮き出る……下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)
※血管外科、心臓血管外科、下肢静脈瘤科を受診しましょう。
- ふくらはぎの後面や外側、お尻やふとももに痛みやしびれ……坐骨神経痛(腰椎椎間板ヘルニア・腰椎分離すべり症・梨状筋症候群などが原因)
- 歩くとふくらはぎやお尻、太ももに痛みやしびれを生じ、前屈みで休むとまた歩ける……腰部脊柱管狭窄症(神経の通り道が狭くなる疾患)
※整形外科を受診し、必要に応じて専門医を紹介してもらいましょう。
30歳以降のスポーツ愛好家が、要注意のケガは?
ふくらはぎの筋肉や腱は、30歳くらいから弱くなってくるので、疲労が蓄積したり大きな力が加わると、思わぬケガをすることがあります。
ふくらはぎの肉離れは、ランニングで発症
ダッシュやジャンプで発生しやすい肉離れですが、ふくらはぎの肉離れは、中長距離走で多発します。
筋肉の柔軟性や筋力の低下、疲労などが要因となるので、壮年以降のランナーは注意が必要ですね。
症状は、歩行や走行、筋肉を伸ばしたときの痛み、内出血や筋肉のへこみなどがみられ、重症になるとじっとしていても、ふくらはぎが痛みます。
受傷直後は、運動を中止してアイシングを施し、弾力包帯で圧迫固定しましょう。
腫れを防ぐため足を少し上げて、安静を保ってください。
痛みが強いときは、整形外科で消炎鎮痛剤や局所注射、理学療法などの治療を受けましょう。
予防は、ストレッチによる十分なウォーミングアップとクールダウン、そして筋トレです。
正しいランニングフォームの獲得も予防には重要ですので、心がけてください。
年配者にも多い、アキレス腱のケガ
ふくらはぎと踵(かかと)をつなぐアキレス腱が、加齢変性をおこして弱くなっていると、スポーツ中に傷めやすくなります。
ランニングやジャンプなどで、急にふくらはぎの筋肉が縮んだり、引き伸ばされた時や、繰り返しの負担により発症します。
バレーボールやテニス、ジョギングやウォーキングなどで受傷することが多いでしょう。
「アキレス腱炎」では、ふくらはぎの下部やアキレス腱から踵にかけて、腫れや痛みが生じます。
ふくらはぎの筋肉を伸ばすと痛みが強まり、足首が動かしづらくなることもあります。
また、足首の捻挫などにより踵が傾いている人は、アキレス腱を取り巻く薄い膜の炎症「アキレス腱周囲炎」を患いやすいでしょう。
急性期はアイシングと消炎鎮痛剤、痛みが軽減してきたら温熱療法や理学療法を施します。
患部の使い過ぎが原因なので、運動を中止するか、ふくらはぎに負担のかからない運動に切り替えてください。
「アキレス腱断裂」は、30~40歳代のスポーツによる受傷と、高齢者の日常生活での受傷が多いケガです。
テニスやバトミントン、バレーボールや剣道でおこりやすく、50歳以上では転倒や転落も原因になります。
受傷時、ふくらはぎをバットで殴られたとか、人がぶつかってきたなどと感じることが多く、断裂音(ブチッ、パン)を聞くこともあるでしょう。
直後は激痛で立ちあがれず、アキレス腱断裂部にへこみが生じ、腫れてきます。
しばらくすると歩けるようになる場合がありますが、つま先立ちはできません。
治療はギプス固定による保存療法か、断裂部を縫合する手術療法が検討されるでしょう。
なお、形成外科医の井上義治氏によると、早期にリハビリが開始できれば、必ずしも手術は必要ないそうです。
アキレス腱のケガ予防
運動前後のストレッチと、ふくらはぎの筋肉トレーニングは、アキレス腱のケガの予防に役立ちます。
ストレッチは、ゆっくりとふくらはぎからアキレス腱を伸ばして、気持ち良いところで30~60秒保ちましょう。
ウォーミングアップには、小刻みに伸び縮みを繰り返しながら、筋肉を伸ばしていくストレッチも有効ですので、ぜひお試しください。
中年以降の女性に多発する「下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)」
40歳以降の女性に多く発症し、患者数は1,000万人とも推定される、下肢静脈瘤の詳細を見て行きましょう。
下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)は進行性の病気
足先から心臓に向かって、血液を戻す血管が静脈です。
重力に逆らい、ふくらはぎの筋肉のポンプ作用で血液を押し上げるため、静脈の壁には逆流を防ぐ弁がついています。
加齢で静脈が弱くなったり、妊娠や立ち仕事、便秘や肥満などで静脈に負担をかけると、弁の働きが悪くなり、血液が溜まってしまいます。
その結果、ふくらはぎやすね、太ももの皮膚に近い静脈が、膨れてコブのように浮き出た状態が「下肢静脈瘤」です。
下肢静脈瘤は、深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)のように命にかかわる疾患ではありませんが、自然に治ることはなく、少しずつ悪化する進行性の病気と言えるでしょう。
下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)の症状は?
ふくらはぎが疲れやすく重だるい、むくむ、脚がつる、冷えや火照りなどの症状が、午後から夕方に出やすく、年齢とともに悪化していきます。
さらに進行すると、皮膚のかゆみや湿疹が生じ、皮膚が硬くなったり色がつき、やがて皮膚が破れて潰瘍になることもあります。
長時間の立ち仕事やデスクワークの人に多く、遺伝的な要因も指摘されており、出産経験者の半数にみられるとの報告もあります。
加齢にともない増加する疾患なので高齢者や、血管にダメージを与える高血圧や糖尿病、肥満などの生活習慣病の人も注意が必要ですね。
下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)の症状がつらく、皮膚に異常があれば治療を受けましょう
専門医による診察と超音波検査(エコー検査)、必要があれば静脈造影検査やCT検査で診断されます。
治療方法は、圧迫療法、硬化療法、血管内治療、ストリッピング手術などがあります。
圧迫療法
医療用弾性ストッキングを履くことによる圧迫療法は、症状を和らげ病気の進行を遅らせる保存療法です。
ふくらはぎなどを圧迫することで、血液の流れを助けるので、むくみや静脈瘤は一時的に軽減します。
基本的に就寝時以外は装着し、半年ほどで緩んでしまうので、買い替えが必要です。
健康保険がきかないので、1足5,000~10,000円くらいです。
硬化療法
硬化療法は、静脈瘤に硬化剤を注入して、静脈をふさぐ治療法で、細い静脈が対象となります。
治療時間が10~15分の麻酔を使わない外来治療なので、入院は不要で傷跡も小さいです。
健康保険が適用され、3割負担の人は1回、約5,000円くらい(初診料、検査費用などは別途)です。
血管内治療
血管内治療は、カテーテルを静脈内に挿入して、高周波(ラジオ波)やレーザーで静脈を内側から焼く治療法です。
局所麻酔で、傷跡も小さく、日帰りでの治療が可能になっています。
健康保険が適用され、3割負担の人の治療費は約5万円くらい(初診料、検査費用などは別途)です。
ストリッピング手術
ストリッピング手術は、皮膚を2cmほど切開し、静脈にワイヤーを挿入して静脈を引き抜く手術です。
治療実績が豊富で再発率の低い治療法ですが、まれに神経を傷つけることがあります。
近年は日帰り手術も可能になっており、健康保険適用で3割負担の人の治療費は、約4万円くらい(初診料、検査費用などは別途)です。
静脈瘤は、見た目が気にならず、症状や皮膚炎がなければ治療は不要ともいえます。
ただ、自然に治ることはなく、除々に悪化する疾患なので、出来れば早めに専門医に相談した方がよいでしょう。
※血管の専門医はコチラ
日本血管外科学会認定血管内治療医一覧 http://www.jsvs.org/ja/certified_physician/nintei/
自宅でできる、ふくらはぎの痛みに対するセルフケア
テーピングやツボ治療で、ふくらはぎの痛みを和らげましょう。
ふくらはぎやアキレス腱の損傷にはテーピング
伸縮性のテープ(キネシオテープなど)を患部に貼ることで、筋肉や腱を保護し、血流を改善します。
ふくらはぎの痛みに【腓腹筋テープ】
- 幅5cm、長さ50cmに40cmの切れ込みを入れたY字テープを1枚
- うつ伏せで足首を反らして、切れ込みのないテープの端を、かかとの足裏部に貼る
- そのままアキレス腱まで、テープを引っ張らずに貼っていく
- 次にY字のテープでふくらはぎの内外側を包みこむように貼って完成
アキレス腱の損傷に【アキレス腱テープ】
- 幅5cm、長さ20cmを1枚
- うつ伏せで足首を反らして、テープの端を、かかとの足裏部に貼る
- そのままアキレス腱まで、テープを引っ張らずに貼っていき完成
※腓腹筋テープと併用してください
シンスプリントに【後脛骨筋テープ】
- 幅5cm、長さ50cmを1枚
- うつ伏せで、膝を立てて足首を反らす
- テープの端を足裏の、親指の付け根に貼る
- そのまま、内くるぶしを通って、ふくらはぎに向けて貼っていく
- 次に膝を伸ばして、テープを膝の裏まで貼り完成
肉離れに【肉離れテープ】
- 幅5cm、長さ12cmを3枚
- うつ伏せで、腓腹筋テープの上から、肉離れの患部に横に貼っていくテーピング法
- まず患部の上部に、1枚目のテープの中央を少し引っ張りながら横に貼る
- テープ幅半分ほど下にずらして、2・3枚目のテープを貼って完成
※テープの端は、引っ張らないように貼りましょう
※テープかぶれに注意し、痛みが増したら中止してください。
こむら返りの特効ツボやトリガーポイントは?
足がつったら、痛みが和らぐまで、ツボをやや強めに押し続けましょう。
- 陽陵泉(ようりょうせん)……膝関節の外側にある小さな骨の突起の下端から、指幅1本分下のくぼみ
- 太谿(たいけい)……足の内くるぶし後方で、アキレス腱との間のくぼみ
筋肉のしこり(トリガーポイント)が、ふくらはぎに痛みを起こしている場合があります。
主なトリガーポイントの周辺を探って、患部にひびくような痛みがあれば、そこが治療点です。
ひびきが軽くなるまで、痛きもち良い強さで、30秒ほど押し続けてみてください。
何ヵ所か押した後、足首を反らして、ふくらはぎのストレッチを20~30秒おこなうと、より効果的ですよ。
- 膝裏の横じわから指幅3本下の左右
- 膝裏の横じわから指幅5本下の中央
- ふくらはぎの内側、脛骨の後方で筋肉のキワ
- 股関節の外方にある、太ももの骨の出っ張りの上方
- 太もも後面で、お尻の下の横じわと膝裏の横じわを結ぶ線の中間点の左右
- 膝裏の横じわの中央から少し上
- ふくらはぎ後面で、膝裏中央と足首を結ぶ線の中間点
ふくらはぎの痛みではスポーツ障害や神経痛、血管の病気に気をつけましょう
ふくらはぎの痛みは、日常的によくみられる症状です。
原因は筋肉や腱、神経や血管にある場合が多いようですね。
特に中年以降のスポーツ愛好家は、ふくらはぎのスポーツ障害に注意が必要です。
また中高年で、少し歩くとふくらはぎが痛いときは、神経痛や動脈硬化を疑います。
女性に多い下肢静脈瘤は進行性なので、症状が出たら専門医を受診しましょう。
近年は、下肢静脈瘤専門のクリニックも増えてますので、気軽に相談してみてください。
ストレッチや筋トレは、「ふくらはぎの痛み」の予防になりますし、セルフケアも症状を和らげてくれますので、お試しください。
コメントを残す