のどがつかえて、げっぷや吐き気がする、何か詰まった感じがして息苦しい……
一般人の約10~25%が経験すると言われる「のどのつかえ」は、現代社会においてごく日常的な症状の一つですね。
主な原因は、のどや鼻の炎症、胃酸の逆流や加齢などですが、原因のない「のどの異物感」の場合もあります。
のどのつかえや違和感は、わずかでも不快に感じ、とても気になるものです。
今回は、多くの人を悩ます「のどのつかえ」の原因となる病気の詳細をみていきます。
「のどのつかえ」に伴う症状はありますか?
「のどに引っかかる」「のどに何かがある」などと表現されるのどのつかえに、さまざまな症状が合併します。
症状別に、疑われる病気をみていきましょう。
症状 | 疑われる病気 | 何科にかかれば良い? |
せきや発熱、倦怠感がある | のどや鼻の病気 | 耳鼻咽喉科 |
のどの奥が腫れる 声がかすれる 声が出しにくい | のどの病気 | 耳鼻咽喉科 |
飲食物や唾液がつかえる 飲み込めない | のどや食道の病気 | 耳鼻咽喉科 消化器内科 |
のどが腫れて締め付けられる 息がしづらい | のどや気管の病気 | 耳鼻咽喉科 呼吸器内科 |
げっぷや胸やけがする | 食道の病気 | 消化器内科 |
のどの奥に、鼻水や痰(たん) 異物などが溜まったり 詰まる感じがする | 鼻の病気 | 耳鼻咽喉科 |
動悸やむくみがある | 甲状腺の病気 | 内分泌内科 耳鼻咽喉科 |
「のどがつかえる」との訴えで耳鼻咽喉科を訪れる人の約6割はがんを心配しての受診ですが、検査の結果がんと診断されるのは約2.5~4%だそうです。
(藤枝市立総合病院市民講座:耳鼻咽喉科 森田祥医師より)
のどが腫れて痛む、のどのつかえは「のどの炎症」
のどがウイルスや細菌に感染し、炎症をおこして腫れ、のどのつかえが生じます。
口の奥の両側に「口蓋扁桃(こうがいへんとう)」、のどの奥に「咽頭(いんとう)」があり、食道と気管の入り口の「喉頭(こうとう)」につながります。
病原体の感染などで、扁桃炎・咽頭炎・喉頭炎を発症します。
症状は、のどの腫れや痛み、発熱や倦怠感、咳(せき)や痰(たん)、声がれや嚥下痛(えんげつう:飲み込むときの痛み)などです。
治療には、解熱鎮痛剤や漢方薬、抗菌薬などが処方されるでしょう。
※「のどの腫れ」の詳細は、こちらをご覧ください。
「のどが腫れる原因は?のどが腫れる病気の症状や原因について詳しく紹介!」
のどの奥に鼻水が溜まる「副鼻腔炎(ふくびくうえん)」
風邪による粘膜の炎症が、鼻の周りにある空洞(副鼻腔)に広がり、膿が溜まる病気が「副鼻腔炎」です。
短期間で治らず、3ヵ月以上症状が続く状態を慢性副鼻腔炎(蓄膿症:ちくのうしょう」と呼びます。
鼻水と鼻づまり、発熱やせき、顔の痛みや嗅覚障害などの症状がみられます。
また、鼻水がのどの奥に落ちる後鼻漏(こうびろう)があると、のどのつかえる感じが強くなるでしょう。
中耳炎、咽喉頭炎、気管支炎、蜂窩織炎、髄膜炎などを合併したり、鼻のがんの原因になる場合もあるので、注意が必要ですね。
風邪をひいたあと鼻の症状がなかなか治らず、のどに引っかかるような感じがあったら、慢性副鼻腔炎を疑い耳鼻咽喉科を受診しましょう。
※慢性副鼻腔炎の詳細は、こちらをご覧ください。
「鼻がいたい!鼻に痛みをおこす病気と副鼻腔炎の詳細を紹介します」
胸やけやげっぷが出る、のどのつかえは「逆流性食道炎」
胃酸や胃の内容物が逆流すると、食道やのどに炎症をおこし、のどのつかえや胸やけなどの症状がおこります。
近年、増加している「酸関連疾患」
「酸関連疾患」とは、胃酸の分泌過剰や胃酸の逆流による疾患の総称です。
食道の粘膜にただれがある「びらん性胃食道逆流症」を「逆流性食道炎」といい、ただれがなく自覚症状のみのタイプを「非びらん性胃食道逆流症」呼びます。
高齢化や食事の欧米化により増加している病気で、近年は若年者にも多くみられるようになりました。
また、胃酸の逆流が咽頭や喉頭にまで達し、のどに異常が生じた状態の「咽喉頭酸逆流症」も増加傾向にあります。
胃食道逆流症(逆流性食道炎)の症状
胃食道逆流症(逆流性食道炎)の症状は以下のようなものがあります。
- 胸やけ(胸からのどにかけて焼けるように熱い、ヒリヒリ・チクチクする痛み)
- 呑酸(どんさん:胃液が口まで込み上げてくる感じ)
- げっぷ、吐き気や嘔吐
- 飲みこむときに、のどがつかえる感じ
- 胃痛、胃もたれ、食欲不振、膨満感
- のどの違和感、声のかすれ
- 咳(せき)、気管支炎
- 耳の痛み
原因は加齢と生活習慣
胃食道逆流症(逆流性食道炎)の原因について見ていきましょう。
主な原因は加齢と生活習慣にあります。
加齢
胃液(胃酸と消化酵素)から食道などを守るため、胃と食道の境目(噴門部:ふんもんぶ)に逆流防止の筋肉(下部食道括約筋)があります。
また、食道のぜん動運動(消化管の筋肉の働きにより食物を送る運動)によって、逆流した食物を胃にもどしています。
加齢により、これらの筋肉が機能低下をおこすと、胃酸が逆流しやすくなります。
また、胃液を薄める唾液の量が加齢により減少することも、食道を傷つける原因となるでしょう。
早食い
早食いは空気を飲みこみやすく、胃から空気をげっぷで出すときに、胃酸も逆流します。
げっぷをすると約20秒間、下部食道括約筋がゆるむとの報告があります。
高脂肪食、食べ過ぎ、高タンパク食
脂っこい食物や食べ過ぎは、下部食道括約筋をゆるめます。
タンパク質の多い食物は消化しにくいため、胃内の停滞時間が長くなり、逆流をおこしやすくなります。
アルコール、カフェイン、食べ過ぎ、喫煙
胃酸の分泌が増加し、逆流しやすくなります。
ストレスや過労、睡眠不足
胃の粘膜の知覚過敏が生じます。
食べてすぐ寝る
食後すぐ横になると、重力が働かないため、胃酸が逆流しやすくなります。
腹圧や胃内圧の上昇
前かがみの姿勢やお腹を締め付ける服装、重い物を持ち上げる作業や運動などは、お腹が圧迫されるので、逆流しやすいです。
肥満の人、腰や背中が曲がっている人、妊婦さんは胃が圧迫されます。
また、若年者では便秘による腹圧上昇も、原因の一つとされています。
薬の副作用
喘息や高血圧、心臓病などの薬の一部は、下部食道括約筋をゆるめる副作用があります。
ピロリ菌
胃がピロリ菌に感染すると、胃酸の分泌が減ると考えられています。
近年、除菌や感染経路(井戸水や食物の口移し)の減少により、ピロリ菌感染者が減ったため、逆流性食道炎が増えたとされています。
食道裂孔(れっこう)ヘルニア
食道は、胸とお腹を区切る横隔膜の穴(食道裂孔)を通って、胃につながります。
食道裂孔がゆるんで胃が横隔膜の上にはみ出すと、食道と胃のつなぎ目を締め付けられず、逆流しやすくなります。
肥満や喘息、慢性気管支炎などにより、お腹の圧が高まることが原因となるでしょう。
胃食道逆流症(逆流性食道炎)の治療は薬物、生活習慣の改善、手術
問診と内視鏡検査などで診断し、対症療法として保存的治療が選択されます。
診察では、胸やけや胸痛をおこす「狭心症」や「食道がん」などとの鑑別診断がおこなわれることもあります。
〈薬物療法〉
薬物により、胃酸の量や酸性度を減少させて、症状を和らげます。
- 胃酸分泌抑制薬:胃酸の分泌を抑制する(プロトンポンプ阻害薬による効果は、約9割とされています)
- 制酸剤:胃酸を中和させる
- 消化管運動機能改善薬:食道や胃の運動を改善する
- 粘膜保護薬:胃酸による粘膜の傷害を防ぐ
※薬物療法により速やかに症状は改善しますが、薬を中止すると再発しやすいので、長期間の服薬が必要になることも多いでしょう。
〈生活習慣の改善〉
- 脂っこい食品、甘いもの(チョコレートや餡など)、柑橘類、香辛料、炭酸飲料、カフェイン、アルコール、タバコなど、胃酸が逆流しやすい飲食物は控えましょう。
- 食後1~2時間は横にならないようにしてください。就寝前の食事は避け、寝るときは左側を下にして横になりましょう。
- 腹圧が高くなるような姿勢や作業は避けてください。肥満対策も大切です。
- 食べ過ぎや早食いはいけません。
〈手術療法〉
薬物療法などで症状が改善しない場合、胃酸逆流を防止する機能を回復させる手術が検討されます。
食道裂孔ヘルニアがあれば、食道裂孔を縫い縮め、胃の一部を食道に巻きつける「噴門形成術」が選択されるでしょう。
近年は、患者さんの負担が少ない、腹腔鏡を使った手術を採用する病院が増えています。
のどがつかえる「咽喉頭酸逆流症」の症状
胃酸などが食道から咽頭や喉頭に上がってくると、のどの症状も顕著にあらわれます。
- のどのつかえ、違和感や異物感
- のどがイガイガ、ヒリヒリ、チクチクする
- 飲み込みにくい、食物が胃まで下りていかない感じ
- 声がかすれる、声が出しづらい、咳(せき)がでる
- 胸やけ、げっぷ、呑酸
※咽喉頭酸逆流症の原因と治療は、逆流性食道炎と同様です。
病気が見つからない、のどのつかえは「咽喉頭異常感症」
「咽喉頭異常感症(真性)」とは、のどのつかえなどの症状があるのに、のどや鼻などの検査をしても、器質的な病変(体に損傷があり不具合が生じていること)が見つからない病気のことです。
なお、原因となる病気を特定できる場合は、「症候性咽喉頭異常感症」と呼ばれます。
のどの奥に玉のような物が当たるとの訴えから「ヒステリー球」ともいわれました。
30~60歳の女性に多い咽喉頭異常感症の症状
30~60歳の女性に多い咽喉頭異常感症の症状としては
- のどがつかえる、何かが引っ掛かる、違和感や異物感がある
- のどがしめつけられる、つばを飲み込みにくい、腫れや圧迫感がある
- のどがくすぐったい、イガイガ・ヒリヒリ・ザラザラする
- 咳や痰がからむ、吐き気や胸やけがする
- 不安感が強い
などがあります。
食事をする時に症状はなく、呼吸も問題はありません。
日中と夜間で症状に差があり、不安や過労、過緊張の状況で症状が悪化します。
何もしていないときに症状が強く出たり、忙しいと症状を全く感じないときがあります。
咽喉頭異常感症の原因は、自律神経の乱れ?
ストレスにより自律神経のバランスがくずれる(交感神経が優位になる)と、食道が締め付けられて、のどのつかえなどを感じるとされています。
過緊張やストレス、過労やがんへの恐怖心などが原因と考えられます。
なお、症候性咽喉頭異常感症の原因となる病気は、多岐にわたります。
- のど、鼻、食道の炎症
- のど、鼻、口腔のアレルギー
- のど、舌、食道、胃のがん
- 嚥下機能の低下
- 鉄欠乏性貧血
- 自律神経失調症
- 更年期障害
- 糖尿病
- 不安やうつなどの心因性
咽喉頭異常感症の診断と治療
病院では、のどの症状の詳細を質問(問診)した後、患部を目で診て(視診)、首の周辺に触れて(触診)診察していきます。
必要に応じて内視鏡検査や血液検査、各種画像検査や心理テストなどを行い診断されるでしょう。
原因が特定されない咽喉頭異常感症では、東洋医学的な診断のもと、漢方薬による治療が行われることがあります。
患者さんの体質や症状に応じて、「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」や「茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう)」などが処方されるでしょう。
薬物療法として、抗不安薬や抗うつ薬、消炎酵素薬や抗生物質、抗アレルギー薬なども検討されます。
服薬で症状が改善しない場合、認知行動療法などの心理療法が有効な場合もあります。
症候性咽喉頭異常感症の場合は、原因となるのどの病気や全身疾患などを治療します。
のどのつかえなどの症状が長引くときは、耳鼻咽喉科か内科の受診をおすすめします。
診察の結果、原因となる病気がなければ、心療内科などを紹介してくれるでしょう。
日常生活を見直し、ストレスの原因をなるべく減らしましょう。
十分な睡眠と休息、適度な運動や熱中できる趣味などで気分転換をはかり、ストレスを発散させてください。
ご自身に合った方法で、自律神経のバランスを整える事が、症状緩和への近道ですね。
のどに異物がつかえたときの対処法
もち、ガム、アメ、肉などがのどにつかえて、苦しいときの対処法をご紹介します。
比較的多い事故なので、覚えておくと役立つかも知れませんよ。
のどに手を当て苦しがる「窒息のサイン」
高齢者や乳幼児に多い事故で、異物が喉頭をふさぐと呼吸ができず、窒息することもあります。
息ができなくなると、声がだせず、顔色が真っ青になります。
のどに両手を当てて苦しがるのが「窒息のサイン」です。
やがて意識を失い、けいれんをおこして、死に至るでしょう。
これらが短時間のうちに進行するので、命を守るためには、応急処置と救急隊への連絡を速やかに行う必要があります。
意識があれば、まず強く咳をさせて、異物を吐き出すよう促しますが、無効の場合は以下の方法を試してください。
のどにモノがつかえた時、いざという時の対処法
異物が指で取りだせる位置にあるとき
片方の親指を下の歯に、人さし指を上の歯に、指を交差させて当てます。
2本の指をひねるように力を加え口を開き、他の指を口の奥に入れて、異物を取り出しましょう。
指にガーゼなどを巻くと、歯による指のケガを防げますよ。
掃除機を使って吸い出す方法は、口内を傷つける可能性があるので避けてください。
指で出せないとき:乳幼児
乳幼児の股間に後側から片腕を差し込み、お腹と胸をしっかりと支えます。
逆さにつるすように乳幼児の頭を下げて、肩甲骨の間を平手で4回ほど強く叩いて、異物を吐き出させましょう。
指で出せないとき:子供や大人
頭を下げさせて、背後から肩甲骨の間を、手のひらの手首寄りで、強く何度か叩く方法が有効です。
または、立位か足を投げ出した座位をとらせ、後からかかえて、片手の握り拳の親指側をへその上方に当てます。
反対の手で握り拳を包み、呼気(息を吐く)と同時に両手を斜め上方に強く引き寄せる方法でもよいでしょう。
※妊婦や乳児に行ってはいけません。
仰向けに寝かせて、お腹の上部に両手のひらを重ねて当てます。
呼気と同時に、斜め上方に強く押して、異物を吐き出させます。
10回ほど繰り返しても吐き出さないときは、胸骨(胸の真ん中の骨)に両手のひらを当てて、強く圧迫し吐き出させます。
※内臓を傷める可能性があるので、施した処置法を救急隊員に必ず伝えてください。
呼吸が苦しいとき
両脚を伸ばして座らせ、後から両脇をかかえ、上体を上下させて尻もちをつかせます。
異物が気管から片側の気管支に落ちて、呼吸が一時的に楽になることがあります。
ただし、放置すると合併症をおこすので、必ず専門医に診てもらいましょう。
呼吸が止まったときは、可能な範囲で心肺蘇生法を行い、救急隊の到着を待ちます。
※心肺蘇生法:胸骨圧迫30回+人工呼吸2回、AED(自動体外式除細動器)
のどに魚の骨が刺さったとき
魚骨がのどに刺さると、つばやご飯などを飲み込むとき、強く痛みます。
特に乳幼児や高齢者は、過って骨を飲まないように、ご家族も気をつけましょう。
細い小骨は、自然に取れやすいですが、のどの痛みが強くなったり長引くときは、耳鼻咽喉科を受診してください。
鯛や平目などの太い骨は要注意、ただちに病院に急ぎましょう。
ごはんなどを一気に飲みこんで、骨を取ろうとしてはいけません。
かえって深く刺さったり、のどの粘膜が裂けてしまう場合があるので、ご注意くださいね。
※高齢者や乳児の食べ物は、なるべく細かくきざんであげましょう。
のどのつかえが続くときは、一度耳鼻咽喉科へ
「のどがつかえる」病気の症状や原因などをお届けしましたが、いかがでしたか。
のどや鼻、食道の病気、ストレスや過労など原因はさまざまなので、治療には専門医の診察が不可欠ですね。
のどのつかえは日常的な症状ですが、のどの痛みが強く長引くときや、発熱・倦怠感などの全身症状があるときは、早めに耳鼻咽喉科で診てもらってください。
また、異物がのどにつかえる事故も少なくないので、対処法を覚えておくと、いざという時に役立ちますよ。
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