『山登り』トレッキングポールは万能ではない 山登り初心者が気を付けることVol.3







リュック、登山靴、レインギアは山登りの三種の神器といわれています。

しかし、近年はこれに第四の神器が加わりそうな勢いです。

それがトレッキングポールです。

この商品が我が国に入ってきたのは1990年代といわれていますが、それ以来徐々に広まり、現在ではこれを使わない人の方が少なくなりつつあります。

 

しかし、一方では、トレッキングポールのメリット・デメリットを知らないまま、単に便利だから、疲れにくいからと聞いてそれを疑わずに使っている初心者も少なくないというのが実情のようです。

トレッキングポールは決して魔法の杖ではありません。過信は禁物です。

どんなメリットがあるのか、使ってはいけないのはどんなときか、どんな使い方をすれば第四の神器になるのか、それを解説してみましょう。

 

お年寄りはなぜ杖を使うのでしょう

 

一般社会では、杖を使うのはお年寄りだと相場は決まっています(体が不自由な人も含めます)。

では、お年寄りはどうして杖に頼るのでしょうか。

一番の目的はバランスを保つためです。

足腰が衰えるとバランスが崩れやすくなり、平地でも転倒する可能性が高くなるからです。

 

平坦ではない山道では成人でもバランスが崩れやすくなります。

それを防ぐのがトレッキングポールの第一の目的です。

右にふらついたら右に、左にふらついたら左に突けばバランスを保つことができ、転倒を防げます。

 

腕力を推進力にかえる

 

二足歩行ができる動物としては哺乳類ではカンガルーや類人猿、それにダチョウなどの鳥類がいますが、直立して二足歩行ができるのは人類だけです。

そのおかげで非常に重たい頭脳を得ることができました。

が、一方では移動については効率が悪くなりました。

四足歩行に比べて二足歩行はバランスが取りづらく、推進力は半分しかありません。

自然界にはチーターを代表としてシカやウマの仲間の高速ランナーがたくさんいて、それらのほとんどは四足歩行です。

わずかにダチョウとカンガルーが二足が頑張っていますが、ベストテンに入ることはできせん。

 

それはともかくとして、二足歩行の人間がトレッキングポールを使うことによって四足歩行となります(トレッキングポールをダブルで使用した場合)

これにより、四足歩行する高速ランナーにわずかながら近づくことが可能になるのです。

つまり、トレッキングポールを握る両手が推進力を産み出し、二足歩行より楽に、または速度アップすることができるわけです。

 

ショックアブソーバーとして役割

山登りを長く続けていると膝を傷める人が少なくありません。

特に、お年寄りはその傾向が強いようです。

そんな膝を傷めている人にとってつらいのが下りです。

ドスンと降りるとショックが膝に加わり、痛みが走ります。

この痛みは経験した人でないとわからないでしょう。

 

この状況をカバーしてくれるのがトレッキングポールです。

先にポールを突いてゆっくり体重をかけ、静かに足を下ろすとショックはほとんどありません。

この使い方は少しばかり注意が必要なので詳しくは後述しますが、この目的だけのためにトレッキングポールを使う人も珍しくありません。

 

もともとは両手用として開発されたもの?

 

ここではトレッキングポールという用語を使っていますが、ストック、ステッキという呼び方もあります。

もともとはスキーで用いるストックから生まれたそうですが、ストックという言葉からはスキーを連想する人もいるため近年はトレッキングポールが主流になりつつあります。

 

スキーのストックを見ればわかるように、この用具は本来両手で使うものです。

ところが、一説によると我が国の登山界は非常に保守的で、

この用具が導入されたときは

「そんなものに頼るぐらいなら山に登るな」

という意見が多かったそうです。

しかし、使ってみれば非常に便利なことが実感でき、けれど他人の目が気になるため細ぼそと片手だけ使う人が増え、その結果両手・片手というふたつの使い方が普及したようです。

 

では、初めてトレッキングポールを使いたいという人たちはどちらを選べばいいのでしょう?

原則としては、自分はどんなところによく登るかを基準にします。

凸凹が激しくバランスを取りづらいとか、急登が多く疲労が激しいとか、そんな山によく登る場合は両手使いが便利です。

平坦な登山道が多く、傾斜もそれほど急ではなければ片手使いで十分でしょう。

初心者の皆さんは当然後者から始めるでしょうから、最初は片手だけで十分と思っていいでしょう。

 

将来的に両手使いに切り替える可能性があり、どちらも揃えるのはもったいないと思えば両手使いからスタートしても構いません。

両手用のトレッキングポールを片手使いしても差しさわりはありません。

 

両手用と片手用の違い

 

トレッキングポールのグリップには二種類あります。

T字グリップとI字グリップがそれです。

名称のようにグリップがT字、またはI字をした形状で、握り方が異なります。

T字は片手用で、上から体重を乗せやすくしています。

I字は両手用で、推進力を得ることを第一の目的としています。

(T字タイプのトレッキングポール)
注意してほしいのはI字グリップのストラップです。

I字は推進力を得るためのものとはいえ、トレッキングポールである以上バランスを保持し、下るときはショックアブソーバーとしての役目も担います。

しかし、T字ほどはガッチリと体重を受け止めてくれません。そこで、ストラップには下から手を差し込み、ストラップとグリップを一緒に握り込みます。

こうするとガッチリとグリップでき、体重を乗せやすくなります。

ストラップを通さず、または上から手を通すとグリップが甘くなり、腕が疲れます。

 

トレッキングポールの長さ調節について

 

トレッキングポールの長さは、いっぱいに伸ばした状態で100~130㎝というのが一般的です。

とはいえ、ここまで伸ばして使うことはありません。

どんな人でも使えるようにトレッキングポールは長さが調節できるようになっており、使う人が自分の体、または状況に合わせて長さを調節するのです。

 

では、なにを基準にして調節すればいいでしょう?

理想は身長×0.63といわれていますが、長さを図って計算するのは面倒です。

しかも、状況を無視しています。

ベテランが採用しているのは、Iグリップの場合、トレッキングポールを真下に向けてヒジがほぼ直角になる長さです。

ヒジの角度が90度より小さいのは長すぎます。

大きいのは短い証拠です。

長くても短くても疲れますから調節は大切です。

 

T字グリップの場合は上から握り込み、ヒジが少し曲がった状態でトレッキングポールの先端が地面に届いていればОKです。

 

登りは短め 下りは長め

 

トレッキングポールの長さは状況によっても変える必要があります。

ちょっと想像してみてください。

登りの状態で体の前にポールを突いたとき、その地点は足の位置よりも高いはずです。

平地で長さを合わせているとヒジの角度が直角になりません。

90度よりも小さくなります。

90度を確保しようとすればポールを短くしなければなりません。

逆に、下りの場合は長くしないとポールの先端が届きません。

 

このように、下りは長く、登りは短くというのがトレッキングポールの長さを決めるときの原則になります。

ちょっと待て、登山道の傾斜は均一ではない、それに登ったり下ったりを小さく繰り返すから、そのたびに長さを調節などしていられない……

そう思う人がいるかもしれません。

 

山はコンクリート製の構築物ではありません。

雨や風、隆起・沈降などの自然現象によって形成されたものであり、急登や渡渉、巻き道、尾根とルートにはさまざまな変化があります。

それに合わせてトレッキングポールの長さを調節していては手間がかかるばかりで、なかなか前に進めません。

 

登りは短め、下りは長めというのはあくまでも原則です。

人間の体はフレキシブルであり、少々の長い・短いは容易に解消します。

そこまで気にする必要はありません。

 

それよりもむしろ、長さを調節する際にどちらを伸ばすか、短くするかを考えるべきでしょう。

どちらというのは上段、下段という意味です。

トレッキングポールのジョイント部分は二か所あります。

一般的なのはスクリュー式ですが、簡単に締めたり緩めたりできるレバーロック式もあります(やや高価ですが)

ポールは3ピースに分かれているわけで、内部に収納するためグリップ側は太く、先端側は細くできています。

 

太い方が強度はあるだろうと最初に上段をいっぱいに伸ばし、足りない部分を下のピースで補おうとしている人をよく見かけますが、メーカーに尋ねるとこれではかえって強度が不足するそうです。

お勧めしたいのは上段、下段を同じ比率で伸ばすということでした。

上を10㎝伸ばしたら下も10㎝伸ばすというわけです。

 

トレッキングポールを使ってはいけないとき

 

ここまではトレッキングポールのメリットに目を向け、どのような使い方をすればいいかを説明してきました。

しかし、デメリットもあります。

 

このようなケースでは使ってはいけないというデメリットもあり、それを守らないとかえって危険になる場合もあることを知っておきましょう。

 

その最たるものが岩場の上り下りです。

初心者の皆さんが危険な岩場に挑戦することはないでしょうが、わずかな距離をロープや鎖に頼るのはままあることです。

そんなとき、ビギナーは得てしてトレッキングポールを握ったままで上り下りしようとします。

山では常に握ったままでいないといけないという強迫観念にとらわれているようです。

 

岩場などの危険地帯は三点支持が基本です。

両手両足のうちの三点で常に体を確保し、残りの一点で次の支える場所を探すというものです。

このような状況ではトレッキングポールはジャマな存在でしかありません。

短く畳んでリュックの内側に仕舞いましょう。

方法は写真を参考にしてください。

慣れれば簡単にできるようになります。

 

①トレッキングポールを背中に収納する方法です。まず、リュックのショルダーを緩めます。左右どちらでもいいのですが、右利きの場合は左側を緩めた方がやりやすいでしょう。

 

②ポールの先端をショルダーベルトの内側に通します。

 

③グリップ部分を頭の後ろに回し、リュックと背中の間にポールを挟みます。

 

④ポールのバスケットをリュックのウエストベルトに引っかけ、下にずり落ちないようにします。

 

⑤緩めたショルダーベルトを締めると終了です。こうすれば両手が空きますから三点支持も可能です。

 

トレッキングポールに頼らないスキルを養いましょう

 

繰り返しますが、トレッキングポールにはバランス保持、推進力のアップ、ショックアブソーバーというみっつのメリットがあります。

これを裏返すと、トレッキングポールに頼っている限りそのみっつの能力は養えないことになります。

カーナビが普及した現在、非常に便利にはなったのですが、いつまで経ってもルートを覚えないというデメリットも生まれています。

 

ある程度の年齢に達したお年寄りが補助に用いる分には大いに役立てていいでしょう。

しかし、これからスキルをどんどん身に着けたいという青年~成人がトレッキングポールに頼ると、それなくては山に登れなくなるという困った事態になりかねません。

ポールを谷底に落としたり折れたりと山ではどんなことが起こるか分かりません。

どんな状況にも対処できる能力を養うのも大切です。

 

まとめ

 

トレッキングポールは便利なものであるのは間違いありません。

そのため、たくさんの登山者が愛用しています。

しかし、メリットとデメリットを知ってそれを活用しなければ山登りの能力や技術を高めることはできません。

今はまだ使っていても、いつかは使わずにどんなところへでもいけるようになってください。

次回記事:山登り初心者が気を付けることVol.4 山登りで一番怖いのは道迷い












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