スマホの使いすぎで、指が痺れることはありませんか?
1日5時間以上のスマホ使用で、指が痺れる「手根管(しゅこんかん)症候群」罹患のリスクを示唆する報告もみられます。
その指の痺れは何かがあなたの指の神経を、圧迫したり締めつけて、痺れているのかもしれません。
また、一過性の指の痺れに、怖い病気が隠れている場合もあるでしょう。
「痺れ」という訴えの中には、さまざまな症状が含まれています。
正座で足が痺れたときを思い浮かべてみてください。
足がビリビリ・ジンジンして、感覚がなくなり、足が思うように動かなくなりますね。
これらは全て、神経の障害でおきる、よくある痺れの症状です。
それでは、何が原因で痺れはおきるのでしょう。
脳から末梢神経まで、どこでどのような障害が生じているかで、指の痺れの症状も治療も違ってきます。
今回は、手の指の痺れに絞って、その原因疾患をみていきます。
また、手指の痺れの原因で一番多い「手根管(しゅこんかん)症候群」の詳細もお届けします。
指の痺れの原因はさまざま|異常を感じたらまず神経内科へ

中枢神経は「脳と脊髄」が、末梢神経は「橈骨(とうこつ)神経」「正中神経」「尺骨(しゃっこつ)神経」が、手指を支配しています。
末梢神経には、痛みや触覚などを脳に伝える「感覚神経」と筋肉を動かす「運動神経」、内臓や血管などを支配する自律神経があります。
感覚神経に異常があると、ビリビリ・ジンジン・チクチクなどの痺れを感じます。
また、運動神経に異常があると、思うように力が入らず、筋肉が痩せて細かい動作が難しくなることもあります。
指の痺れの原因は、脳から末梢神経、内臓や血管、自律神経やホルモンなど複数の科にわたるため、特定に難渋するケースも多いでしょう。
自覚症状が主で、他覚的所見(検査で診断できるもの)に乏しいなどの症例では、確定診断をより困難にし、患者さんは痺れの症状に長年悩まされることになります。
長びけば症状はより複雑になり、神経が大きなダメージを受け、回復がとても難しくなってしまいます。
指の痺れをおこす神経の障害が進行し、痺れすら感じなくなる麻痺の状態となってからでは遅いのです。
たかが指の痺れと侮らず、異常を感じたらなるべく早めに専門医を受診しましょう。
神経内科での診察は?
指の痺れを感じたら、まず「神経内科」を受診されることをおすすめします。
病院では、痺れの状態について問診され、神経学的診察を受けます。
さらに、神経伝動検査・筋電図・血液検査・X線・CT・MRIなどの検査が、必要に応じて行われ診断されるでしょう。
指の痺れの原因は内科的、あるいは外科的な場合があるので、治療は各内科や脳神経外科、整形外科などの専門医に託されます。
こんな指の痺れは、この病気!?

それでは、指の痺れから疑われる原因疾患をみていきましょう。
- 手指や顔の痺れ、特に半身の痺れや麻痺、吐き気やろれつが回らない……急な痺れは脳梗塞や脳出血、ゆっくりの場合は脳や脊髄の腫瘍(救急か脳神経外科へ)
- 指や腕の痺れや痛み、力が入らない、上を向くなど首の運動で悪化する……頚椎症、頸椎椎間板ヘルニアなど(整形外科へ)
- 指や手の一部が痺れて起床時増悪、手の筋肉が痩せる、細かい動作ができない……手根管症候群、肘部管症候群など(整形外科、神経内科へ)
- 手指や腕に痺れと痛み、だるさや冷たさ、なで肩の若い女性に多い……胸郭出口症候群(整形外科、神経内科へ)
- 両方の足先や指先の痺れや痛み、やがて痛みや感覚が無くなる、のどが渇き体重が減る、疲れやすい……糖尿病(内科、内分泌代謝内科、糖尿病内科へ)
- 左手の痺れと、胸や左肩などの違和感や痛み、息切れや動悸……狭心症、心筋梗塞など(循環器内科、心臓血管内科へ)
- 手足の痺れと、頭痛や吐き気、めまいや倦怠感など……自律神経失調症(心療内科、症状に応じた専門科へ)
- 手足の痺れや冷え、歩くと足が痛くなり休むとまた歩ける、潰瘍や壊死……バージャー病(血管内科、循環器内科へ)
- 病気の治療で薬を飲みはじめてから、手足が痺れる……薬(抗がん剤や抗結核薬など)の副作用(担当医師へ)
※いつも同じ所にしつこい痺れがある、だんだん痺れが強くなったり広がるなどの症状があれば、早めに専門医を受診してください。
まだある、指が痺れる神経の病気
脳や脊髄の病気
- 脊髄空洞症【脊髄に液体がたまり空洞となって発症、手足の痺れや脱力、感覚が鈍くなり筋肉が痩せる】
- 多発性硬化症【神経を覆う組織が炎症をおこして壊れ、手足の痺れや運動麻痺が生じる】
- 中心性頚髄損傷【スポーツなどで頚椎が脱臼や骨折をおこして、手に強い痺れと痛みを発症】
末梢神経の病気
- ギヨン管症候群【手首の小指側で、尺骨神経が圧迫され、小指と薬指が痺れる】
- 橈骨(とうこつ)神経麻痺【二の腕で、橈骨神経が圧迫され、手の甲側が痺れる】
- 前骨間神経症候群【肘関節の内側で、正中神経が圧迫され、親指・人差し指・中指が痺れる】
- 多発性単神経障害【膠原病などの患者さんに多く、血管炎がおきた部分の神経の障害で、手足が痺れる】
- ギランバレー症候群【感染症の1~2週間後、手足が痺れ、力が入らなくなる】
- 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー【免疫の異常がおこり、自ら神経を覆う組織を破壊し、手足の痺れと筋力低下が生じる】
- 異痛症(アロディニア)【偏頭痛などで脳が過敏になり、手足が痺れる】
- アルコールニューロパチー【飲酒量の多い人が、ビタミンの欠乏などにより、手足に痺れや痛み、脱力を発症する】
「たまに指が痺れる」は危険なサイン|一過性脳虚血発作

「たまに指が痺れるが、数分でおさまる」は、要注意です!
小さい血の塊(血栓)が、一時的に脳の血管に詰まっておこる症状の可能性があります。
片側の手足が痺れて感覚が鈍い、力が入らない、口の周辺が痺れる、ろれつが回らない、片方の目が見えにくい、足の力が抜けて転ぶ、半身が動かない、声が出ない……。
一過性脳虚血発作(TIA)では、このような症状が突然あらわれ、数分から長くとも1時間ほどで治まります。
この発作は脳梗塞の前兆であり、一過性脳虚血発作の患者さんの5%は、脳梗塞を患うと言われています。(聖マリアンナ医科大学 長谷川泰弘教授)
すぐに治まるからと放置せず、なるべく早く専門医(神経内科、脳神経外科など)の診察を受けてください。
末梢神経に原因ある指の痺れ
神経が関節や筋肉、靭帯などに圧迫されたり、締め付けられることによって、指の痺れが生じます。
指の痺れは、手指の感覚を伝える神経が、皮膚から脊髄(背骨の中を通り、脳につながる神経の束)までの間で障害を受けます。
頚椎症性神経根症(けいついしょうせいしんけいこんしょう)
脊髄から手指に向かう神経の根元で、首の骨にある通り道が狭くなり、神経根が圧迫を受けて、片側の手指や腕に痺れや痛みがでます。
背骨の間にある椎間板というクッションが、加齢などで傷ついたり潰れ、背骨も変形して神経根を圧迫します。
長時間の悪い姿勢や重労働、首に負担のかかるスポーツなども原因になります。
上肢の痺れは、腕の後外側から中指にかけてが約7割を占めるとされ、ときに人差し指や薬指に及ぶでしょう。
首や肩・背中の痛みやこりを伴い、上を向くと(横に倒す、横を向くでも)症状が悪化する、中高年に多い疾患です。
X線やMRIなどの検査で診断し、姿勢の改善の指示と保存療法が施されます。
消炎鎮痛剤などの薬物療法と温熱や牽引などの物理療法、装具療法(頚椎カラー)などが有効でしょう。
保存療法で改善せず、痛みなどで日常生活に支障がある場合は、神経の圧迫を取り除く手術が検討されます。
頚椎椎間板ヘルニア
頚椎の椎間板の中心にある髄核が、加齢などで飛び出し神経を圧迫して、手指が痺れます。
10代後半から始まるとされる椎間板の加齢変性のほか、スポーツやデスクワーク、重労働なども要因となるでしょう。
頚椎椎間板ヘルニアの初期は、親指と人差し指が痺れて、上を向くと痺れが強くなります。
進行すると前腕(肘と手首の間)や、中指と薬指、小指が痺れることもあります。
首や肩、背中や腕が痛み、やがて手指や腕に力が入らず、筋肉が痩せて、細かい動作ができなくなるでしょう。
脊髄が圧迫されると、足の痺れやこわばり、歩行障害やまれに排尿障害がみられます。
X線やMRIなどの検査で診断、安静の指示と保存療法が施されます。
消炎鎮痛剤やブロック注射などの薬物療法、牽引や運動療法、装具療法(頚椎カラー)などで症状を和らげます。
筋力の低下が著しく、歩行障害や排尿排便障害があらわれたら、手術をすすめられます。
胸郭(きょうかく)出口症候群
胸郭出口症候群は、20~30歳代のなで肩の女性に多い疾患ですが、重労働の男性も発症します。
脊髄から出た手に向かう神経が、首の横の筋肉や鎖骨の下、胸の筋肉の下や脇の下で圧迫や締めつけを受けて、指が痺れます。
痺れは、手指と前腕の小指側に多く、肩や背中の痛みとこりや上肢の痛みを伴うでしょう。
さらに筋力の低下や細かい動作が下手になったり、血管の圧迫により皮膚が白くなり、むくむこともあります。
片方の手首の脈をみながら、肘を曲げて腕を外側に上げて、その指先を見上げます。
大きく吸った息を止めたとき、痺れが強くなったり、脈が弱くなるが消えたら、本症が疑われます。
パソコンやスマホの長時間使用、長時間手を上に上げる作業や家事、重い荷物を運ぶ作業などが原因となるでしょう。
治療は、これらの原因をなるべく取り除くように指導され、消炎鎮痛剤などの薬物療法や運動療法が施されます。
保存療法で改善しない症例には、神経を締めつけている部分を切除、切離する手術が検討されます。
肘部管(ちゅうぶかん)症候群
肘部管症候群は、肘部尺骨(ちゅうぶしゃっこつ)神経障害とも呼ばれ、小指全体や、薬指と手の小指側の痺れで始まります。
肘の内側(肘をぶつけると小指にひびく部位)で、尺骨神経が傷ついて発症する、末梢神経障害の中で2番目に多い疾患です。
靭帯や筋膜、腫瘤や骨の増殖などによる尺骨神経の圧迫や締めつけ、加齢や過去の骨折による肘の変形、野球の投手や柔道などのスポーツが原因となります。
起床時に痺れやすく、肘を曲げると症状が悪化し、やがて感覚が鈍くなったり、細かい動作が上手くできなくなります。
さらに、手の筋肉が痩せたり、小指と薬指が変形し、洗顔時に手から水がもれる、箸が使いづらいなどの症状がみられるでしょう。
物をつまむ時の親指の筋肉が弱くなるので、親指と人差し指で挟んだ紙を引っ張ると抜けてしまいます。
診察では肘の内側を叩いて、小指の痺れを診たり、X線や必要に応じて筋電図検査と神経伝導検査が行われます。
頬杖や長時間肘を曲げる姿勢を制限し、パットや副子(添え木)で安静を保ちます。
消炎鎮痛剤などの薬物療法や、理学療法も有効でしょう。
指の痺れや痛みが強く、日常生活に支障がある場合は、尺骨神経の圧迫を取り除く手術が検討されます。
肘の骨を削ったり、尺骨神経を骨の溝から前方へ移動させる方法が選択されるケースもあります。
女性の手の痺れで最も多い疾患「手根管(しゅこんかん)症候群」

手根管症候群は、正中神経が手首のトンネルで圧迫を受けて、手指が痺れる疾患です。
横手根靭帯と手根骨に囲まれた狭い手根管内を、正中神経と9つの手指屈筋腱が通るため、圧迫障害を受けやすいのです。
40~50歳代の女性に多い「手根管症候群」
手根管症候群は、仕事や家事、スポーツなどで手を酷使した結果、手根管に繰り返し外力が加わって炎症をおこす、中年女性に多い疾患です。
手首の骨折(橈骨遠位端骨折)、手根骨の骨折と脱臼、手根管内のガングリオン(良性腫瘍)、関節リウマチなども原因となりますが、原因不明のケースも珍しくありません。
さらに、更年期以降や妊娠出産期に発症しやすいことから、女性ホルモンのアンバランスにより、手根管内に軽いむくみが生じて神経を圧迫すると考えられています。
また、人工透析を受けている人は、アミロイドというタンパク質が手根管にたまることで痺れると言われています。
小指以外の指に、痺れと痛み
初期は、親指・人差し指・中指の先に痛みや痺れが生じ、夜間増悪して睡眠を妨げることがあります。
手を握って寝ていることが多いため、夜間や明け方に症状が悪化するとされ、手を振ったり指の曲げ伸ばしを繰り返すと症状が軽減するのが特徴です。
薬指は中指側だけが痺れ、小指と薬指(小指側半分)や、手の甲は痺れません。
自転車の運転や編み物などの手芸、吊革を長時間つかむなど、指を長時間曲げる動作で痺れが強くなるでしょう。
進行すると、親指の付け根の筋肉が痩せて扁平になって、親指と人差し指で完全な輪を作れなくなります。
指の感覚が鈍くなるケースもみられ、ボタン掛けやつかむ動作などが上手くできず、日常生活に支障がでます。
手根管症候群のセルフチェックと、病院での治療
手首の内側のシワの中央を叩くと、指先に痺れや痛みがひびきます。
指先を爪楊枝の先端でつついた時、小指以外に異常を感じます。
また、両手首を曲げて、手の甲を合わせた状態を1分間保つと症状が増悪し、元に戻すと軽快すれば、本症を疑ってよいでしょう。
病院では、手首のX線検査や神経伝動検査で診断し、まず保存療法が行われます。
装具や副子固定で手首の安静を保ち、消炎鎮痛剤(内服、湿布、塗り薬)やビタミンB12、神経障害性疼痛の薬などが処方されるでしょう。
痛みが強い症例では、局所麻酔薬とステロイドの注射による正中神経ブロックが施され、症状が軽減したら温熱療法やマッサージなどの理学療法、運動療法が行われます。
保存療法で症状が改善しない場合は、手のひら側の手首の靭帯を切開し、正中神経を圧迫から解放する手術が検討されます。
内視鏡下で手術する病院が増えており、局所麻酔で10~30分程度、日帰り手術も可能になってきています。
手根管症候群のリハビリと予防は?
リハビリや予防では、手首への負担を減らすことが一番重要です。
スマホなどで長時間、手首を曲げたり、反らしたままでいないように心掛け、重い物を片手が持たないようにしてください。
パソコンのキーボードやマウスを使うときは、手首の下に柔らかいクッションを置き、手首をまっすぐに保つとよいでしょう。
手首や指のストレッチと筋トレも有効
- 腕を前に上げて、肘を伸ばし、反対の手で指をつかみます。
- 手首を曲げたり、反らすストレッチを10~20秒行いましょう。
- 手首と指をまっすぐ伸ばします。
- 人差し指から小指の、第1・第2関節だけ曲げる、指の第3関節だけ曲げる、全指を開くなどのストレッチを行う。
柔らかいボールを握ったり離したりする手指の筋トレも、効果が期待できます。
手首と肘の間の前腕の筋肉をマッサージしたり、ツボを3~5秒間押してみてください。
指の痺れの特効ツボです。
- 曲池(きょくち)……肘の内側の横シワで、親指側の先端
- 郄門(げきもん)……肘の内側の横シワ中央と、手首の内側の横シワ中央を結ぶ線の中間点
- 合谷(ごうこく)……手の甲側で、親指と人差し指の付け根が交差するところ
指の痺れは体の異常を知らせるサイン
手や足の痺れは、何かが神経を圧迫・絞扼して生じることが多いですね。
特に指先の痺れは、まず手根管症候群や肘部管症候群を疑ってよいでしょう。
- 親指から薬指の中指側が痺れ、手首を叩くとひびく場合は「手根管症候群」
- 小指と薬指の小指側が痺れ、肘の内側を叩くとひびく場合は「肘部管症候群」
ただし、一過性の痺れには、脳卒中がかくれているかも知れないので注意が必要です。
日常的に感じることが多い指の痺れや痛みですが、体の異常を知らせる大切な警告のときもあります。
たかが指の痺れと侮らず、いつもと違う痺れを感じたり、だんだん悪化するときは、専門医を受診するようにして下さい。
コメントを残す