キリストはUFOとともに ヴィゾキ・デチャニ僧院の謎のフレスコ画







磔(はりつけ)のキリストを観察する二機のUFO。

14世紀前半の宗教画が語る、エイリアンとキリストの秘められた関係とは?

 

20世紀によみがえったUFO画

 

いまから700年ほど前の、ヨーロッパ中世のキリスト教絵画の中に、もしUFOが描きこまれているとしたら、あなたは一体どう思うだろう?

 

1964年のこと、美術学生アレクサンドラ・パウノヴィッチは、現在のコソボ共和国にあるヴィゾキ・デチャニ僧院(Visoki Decani Monastery)に足を踏み入れた。

そして、祭壇上にかけられたキリストの磔刑図(たっけいず)の中に、2つの奇妙なもの「発見」して思わず吹き出してしまった。

この僧院は、デカニの聖ステファン王によって1327年から1335年の間に建てられたもので、問題の絵は1350年に完成したとされている。

どう見ても、それは飛行物体だった。

磔(はりつけ)にされたイエス・キリストの左右上方を浮遊するマシンらしい何か─。

中には、それを操縦しているひとのようなものの姿がはっきりと見えた。

このトンデモ情報を面白がったのが、フランスの雑誌「スプートニク」だった。

早速、写真入りで紹介したところ、ヴィゾキ・デカニ僧院のUFO画?はたちまち、オカルト好きの間でバズってしまった。

以来、「宇宙船とクルー付き磔画」として、さまざまな本やウェブページを飾るようになる。

 

太陽と月のペア

 

確かに、ごくフツーの人が素直な気持ちでこの絵を見れば「あっ、UFO!!」と、十中八九、そんな声をあげそうだ。

そして、たちまち、この不思議で意味深なイメージに心を奪われてしまうにちがいない。

けれど今ここに、中世キリスト教美術を専門とする美術史家が登場するとどうなるだろうか?

 

おそらくその人は、次のような説明をしてくれるかもしれない。

  • 「これはビザンチン様式で描かれたフレスコ画だね。十字架にかけられたキリストの像をまず、見てごらん。その両側に一見ヘンなものがあるよね。UFO? ハハッ、これは太陽と月のペアだから、よくおぼえておくといい」
  • 「キリストの右にあるのが太陽で、左が月さ。ヨーロッパ中世の磔刑図では、人間の顔や姿であらわした太陽と月をキリストの左右に描くという決まりがあったんだ」
  • 「太陽と月の絵柄には、ほかに平らな円盤や、光背(ハロー: 聖像の頭のまわりやその上方に描かれる光の表現)を持った彗星、それから馬や牛の曳く戦車に乗ったアポロとダイアナなどいろんなヴァリエーションがある」
  • 「そして驚くべきは、このペアの起源が古代─ペルシャとギリシャの太陽神のイメージにまで遡ることさ。その後、この習慣はローマ時代にも引き継がれた。皇帝を刻んだコインの表面にも同じイメージが見られるよ」

 

天使でも聖者でもなく─おきて破りのコソボのUFO画

 

「というわけで、いいかい? 君がUFOだとか言ってる2つの物体は、ビザンチン様式の十字架図にはあたりまえの、太陽と月の擬人化されたシンボルなのさ。まあ、カタチはちょっとばかり変わっているけど、問題は描かれた場所なんだ。お約束のところにちゃんとあるから、ギリギリセーフ。つまりは、そう言うわけなのさ」

 

ところが、そんな美術史家の安穏とした説明に対して、キリスト教会側には別の言い分があって、この絵を異端的でふとどきなものだと考えている。

まず、これは断じて太陽と月のペアではないと言う。

その理由は、先の美術史家のウンチクにあったお約束のヴァリエーションを完全に踏み外しているから。

つまり、ひとの乗ったUFOのように見える太陽と月は、ヨーロッパ中探しても、この僧院でしか見られない、たった一つの例外なのだ。

 

次に、やはり同じ理由で、かれらは天使でも聖者でもないらしい。

まず、二人のパイロットは天使ではない。

というのも、もしそうだとしたら、かれらは当時のキリスト教絵画のしきたりにあわせて、光背と翼を持ってなければならないから。しかし、それがない。また、もし聖者だとしても、あるべき光背が、やはりない。

以上が示すのは、かれらが「太陽と月」でも、「神聖な存在」でないということなのだそうだ。

 

もう一つの謎─キリストとUFOの関係

 

とすれば、真相はどこにあるのだろう?

コソボのUFO画は、美術史家の言うように宗教画としてギリギリセーフの太陽と月なのか、それとも教会側が主張するように飽くまで異端的な画家による自分勝手な創造なのか、それとも正真正銘のUFOの描写なのだろうか?

 

その答えは残念ながら、現在のところ不明だが、このUFO画にはこれとは別にもう一つの謎があり、それが思いのほか意味深だ。

 

宗教画の中に、磔にされたキリストの目撃者としての太陽と月のペアが描かれたのは、初期のルネッサンス時代─紀元後1000-1300年─に限られ、中世が終わる15世紀以降はめったに姿を見せなくなる。

とすれば、このペアが聖画に登場した理由、そして消えた理由が気になるのが人間というものだ。

 

これについては一つの意味深長な意見がある。それはキリスト教の教祖イエス・キリストの一連の宗教活動の影に、ひそかにエイリアンのサポートがあったとする仮説だ。

それによれば、だからこそ、イエスの最後を見届けるために、磔刑図にUFOが現れたことになる。

だが、とすれば、15世紀以後、それが描かれなくなるとはどういうことか…?。

 

時とともに、いつしか人類はイエスとエイリアンの関係を忘れてしまったのだろうか、それとも、この忘却もまた何者かの意図するところなのだろうか? 真実はいまだ、わたしたちの眼から隠されているようだ。










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